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2006年08月24日
秘密のファイル(上) CIAの対日工作
■ 書籍情報
春名 幹男
価格: ¥1890 (税込)
株式会社共同通信社(2000/03)
本書は、「太平洋戦争では互いに敵同士として殺し合い、戦後緊密な同盟国となった、異質な二つの国」である「日本とアメリカが絡んだ情報工作、というまったく新しい視点」をテーマとしたものです。著者は、日本人の意識の中にある「サクセス」と「陰謀」の間の「漂流」というもつれた糸を解きほぐす作業として、「『インテリジェンス(情報)』の側面から日米関係の深層を抉り出し、漂流の原因と理由を突きとめて、初めて可能になった」と述べています。本書は、1997~98年にかけて、全国42の共同通信加盟紙や英字紙に掲載された50回の連載『秘密のファイル――日米関係の裏面史』を基にしています。著者は、この執筆に当たり、米国公立文書館で十万ページを超える秘密文書に目を通し、数万ページをコピーしています。この連載は、在日米大使館で毎回翻訳され、米政府内に配布されていたことが述べられています。
本書は、日米開戦前夜に奔走した在米日本大使館員の姿から描き始められています。一等書記官だった寺崎英成は、大使館内に情報組織を設立し、アメリカ国内の情勢を調査し、外国系アメリカ市民や日系人を利用するという任務を帯びてワシントンに送り込まれますが、着任前からアメリカ側の防諜の網に引っかかっていたことが述べられています。また、開戦前には、「日本人は能力ない」との固定観念が米側を支配していて、マッカーサーは、「日本軍機のパイロットは白人の雇い兵に違いない」と信じ込んでいたこと等が紹介されています。
また、米陸軍内に対日情報工作のために日系二世が集められ、暗号の解読、入手した日本軍の文書の分析、約1万4千人の日本人捕虜の尋問など、情報戦において日本を圧倒したことが述べられています。フィリピンで米軍の通訳をしているところを「救出」された日系二世の榊田元宗が、米国陸軍情報部の残地諜者として残されたスパイであったエピソードでは、日本軍降伏後に、サカキダを尋問した日本軍将兵の前に、米軍服を着て現れ驚かせた話が紹介されています。この他、「山本長官前線視察」の暗号電報を解読したハロルド・フデンナ(普傳名)、敗戦を決定的にした日本海軍の重要機密書類である「Z作戦要領」を翻訳したヨシカズ・ヤマダとジョージ・ヤマシロ、米戦略情報局(OSS)で活躍したジョー・コイデなど日系二世の活躍が紹介されています。
本書には、戦前の日本軍の情報将校たちが、GHQ参謀第二部(G2)にリクルートされ、GHQの情報工作に加担したことが述べられています。河辺虎四郎中将を中心とした旧日本軍人によるG2直轄の極秘情報機関は、後に、「河辺機関」と呼ばれる組織であることや、児玉誉士夫の資料の中から、「KATO機関」(鎌田、有末、田中、辰巳、小野寺の頭文字)というG2の下請け情報組織に関する記述が見つかったこと、「GHQ歴史課」の中に置かれていた「服部機関」等が紹介されています。この理由については、CIAの資料の中から、「米占領軍の参謀第二部(G2、情報)は冷戦で、日本軍が最近まで占領していた地域(中国・朝鮮半島)に関する内部情報を入手する必要に迫られ、多くの日本の専門家に仕事に復帰するように求めた」という記述を発見しています。
また、巣鴨プリズンに収監された19人のA級戦犯容疑者(岸信介、笹川良一、児玉誉士夫ら)がなぜ戦犯として訴追せず釈放されたのか、という問題に関して、「戦争責任は東条英機らに負わせた。その裏で、児玉、笹川らを釈放し、情報活動に利用する」というアメリカ情報当局の裏工作の痕跡を拾い集めています。児玉の釈放後、米情報当局と日本の右翼の"蜜月"が始まったこと、児玉を見出したのは「児玉担当の主任検事」であったフランク大佐であったこと等の他、佐川良一や辻政信などの怪人物に関するCIAのファイルを次々と紹介しています。
この他本書では、戦後日本の共産主義者リーダーであったプロレタリア作家の鹿地亘が1年間に亘ってキャノン機関に監禁されたことや、CIAのオフィスが一時、大蔵省ビルに置かれていたこと、日本国民の思想改造のため、アメリカ大使館ラジオ部が作成した「完パケ」のラジオ番組が各ラジオ局に配られ、放送されたこと、『私はシベリアの捕虜だった』など米政府の心理戦略に基づいた映画制作のために資金提供が行われたことなどが述べられています。
■ 個人的な視点から
本書には、初代CIA東京支局長であったポール・チャールズ・ブルームと、彼に執事として雇われた成松孝安の奇妙な出会いについて紹介されています。横須賀の走水海岸で、ユダヤ系作家の原書を読んでいた成松に話しかけたブルームは、「私と一緒に東京で仕事をしないか」と持ちかけられます。成松は5年にわたりブルームの執事を務めますが、「ブルームさんは外交官だと思っていた」と後に語っています。当時、CIAの活動を認めていなかったマッカーサーの目を欺き、ブルームは外交官を装ってCIAの初代東京支局長として着任していたことが確認できたと述べられています。
ブルームは、自宅で毎月著名人を集めた夕食会「火曜会」を開催していますが、中でも、
・笠新太郎(朝日新聞論説主幹)
・松本重治(国際文化会館理事長)
・松方三郎(共同通信社専務理事)
・浦松佐美太郎(評論家)
・東畑精一(農業経済学)
・蝋山政道(政治学)
・前田多門(元文相)
・佐島敬愛(信越化学取締役)
の8人の常連については、「8人のサムライ」と呼んでいたことが紹介されています。
1953年に、火曜会は解散され、成松はブルーム邸を"円満退社"することになりますが、退職金を現金で与える代わりに、スパゲティ屋の資本金を集めてもらいます。店の名前もブルーム自身が考え、後にこのスパゲティ屋は全国展開し、日本のスパゲティ料理店の草分けとして有名になりますが、この支援には、ブルームの"口止め"の意味もあったようです。
このスパゲティ屋の名前は、"壁の穴"。現在も全国チェーンとして知られています。
■ どんな人にオススメ?
・日々CIAの陰謀に怯えて暮らしている人。
■ 関連しそうな本
春名 幹男 『秘密のファイル(下) CIAの対日工作』
星 浩 『自民党と戦後―政権党の50年』 2006年06月01日
ジョン・G. ロバーツ 『軍隊なき占領―戦後日本を操った謎の男』
産経新聞特別取材班 『エシュロン―アメリカの世界支配と情報戦略』
中田 安彦 『ジャパン・ハンドラーズ―日本を操るアメリカの政治家・官僚・知識人たち』
柴田 哲孝 『下山事件―最後の証言』
■ 百夜百マンガ
山本スーザン久美子の元ネタ、かどうかは定かではないですが、17歳144ヶ月になった『ラブやん』の主人公の幼なじみの崇山庵子の元ネタであることは疑いのないところですが、元ネタの元ネタはカメリア・ダイアモンドの人ですね。
読めます?→「枢斬暗屯子」(極道界のキャリアウーマン)
投稿者 tozaki : 2006年08月24日 06:00
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