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2006年08月06日

日本奥地紀行

■ 書籍情報

日本奥地紀行   【日本奥地紀行】

  イザベラ バード (著), 高梨 健吉 (翻訳)
  価格: ¥1575 (税込)
  平凡社(2000/02)

 本書は、1878年(明治11年)に日本を訪れ、日本人通訳1人を伴って東北を抜け、北海道に渡った英国人女性の目から見た、文明開化が及ぶ以前の日本の姿が収められた旅行記です。
 本書は、彼女が妹に宛てた手紙を再編集したという体裁をとっていますが、その筆致はとても生き生きとしていて、読む人を引き込みます。
 当時の日本は、明治になったと言っても文明開化はまだ地方には到達しておらず、人々の生活は江戸時代と変わらないものであると考えられますが、それでも「英国夫人が一人旅をしても絶対に大丈夫だろう」と英国代理領事からお墨付きが出るほど治安は良かったようです。しかし、本書のあちこちで述べられているように、蚤の大群にはずいぶん悩まされたようで、旅行には折りたたみのベッドが不可欠であると語られています。
 本書には大きく2つの気づきを与えてくれるものがあります。一つは、外国人の紀行モノに多い、日本人には当たり前のものでも外国人にとっては驚かれるものです。
・ぞっとするほどいやなもののスープ・・・味噌汁
・障子の穴という穴から覗いている目・・・プライバシーの欠如
などは、現代でも変わらないでしょう。
 もう一つは、現代の日本には失われた当時の習俗、特に貧しい農民たちの暮らしぶりです。著者が、持ってきた西洋の薬を病人に与えたところ、村中から病人を抱えた人が集まってきてしまったことや、取り出した望遠鏡を鉄砲と間違えて、外国人珍しさに集まってきた群集が雲の子を散らすように逃げ出したこと、盲人が按摩や金貸しや音楽などの職業に従事することで自立して裕福に暮らす尊敬される階級をなしていたこと、既婚女性と未婚女性の服装が厳格に区別されていたこと、などは、同じ国、同じ地名が使われる同じ場所に暮らす現代の我々にとっても大きなカルチャーショックを与えます。
 著者の旅は東北を抜け、ついには北海道にたどり着きます。本書が良く引用されるのは、当時まだ文化的な独立を保っていたアイヌの暮らしを、詳細に描いていることです。また、当時の日本人のアイヌに対する差別意識を記述しているものとしては、通訳の青年の「アイヌ人を丁寧に扱うなんて! 彼らはただの犬です。人間ではありません」という言葉があります。「犬」というのは、彼らの先祖が犬であったという伝説も反映しているようです。しかし、当時の日本人が持っていた先入観を持たない著者は、アイヌの文化や習俗、人間関係などを実に詳細に描いています。そして、日本人の姿をみて受ける堕落した印象とは好対照に、アイヌ人を、「未開人の中で最も獰猛そうに見える」が話を交わすと「明るい微笑みに輝き、女のように優しい微笑となる」と好意的に述べ、「全体として受ける印象は、アジア的というよりはむしろヨーロッパ的である」としています。
 今では世界中探しても見つけることができない、異国の体験をしてみたいという方には強くお奨めできる一冊です。


■ 個人的な視点から

 今から1年以上も昔の話であるにもかかわらず、「日本の役所はどこでも、非常に大量に余計な書類を書く」と書かれています。当時の状況を考えると、その理由の一つには、ヨーロッパを含めて19世紀の他の国と比べて識字率が高かったことがあるのではないかと思います。
 ところで、識字率といえば、現代に住む我々も「知ってるつもり」になっているだけで、きちんと字を読めていないことが多々あります。私も以前、研修の講師で「文盲」を「ぶんもう」と読んでしまってから気づいてあわてて直したり、「疾病」をワープロで打とうとして「しつびょう」が変換されないことに悩んだり、「荒唐無稽」を「こうけいむとう」と入力して途方にくれたりしたことがあります。


■ どんな人にオススメ?

・まだ「江戸時代」を引きずっていた頃の日本、特に東北を旅してみたい人。


■ 関連しそうな本

 ハーバート・G. ポンティング 『英国人写真家の見た明治日本―この世の楽園・日本』
 宮本 常一 『イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む』
 宮本 常一 『忘れられた日本人』 2006年06月25日
 イザベラ・L. バード 『朝鮮紀行―英国婦人の見た李朝末期』


■ 百夜百音

心の旅【心の旅】 チューリップ オリジナル盤発売: 1973

 テレビCMで同窓会的な雰囲気でビールを飲んでる皆さんですが、30年前は押しも押されぬ人気者だったです。
 いつかはケラやクボブリュ達も歳をとっていっしょにCMに出たりする日が来るのでしょうか。


『有頂天 ナゴムコレクション』有頂天 ナゴムコレクション

投稿者 tozaki : 2006年08月06日 20:00

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