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2006年08月18日

現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策


■ 書籍情報

現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策   【現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策】

  橘木 俊詔
  価格: ¥3675 (税込)
  ミネルヴァ書房(2005/10)

 本書は、労働力不足の時代を目前に控え、「女性がこれまで以上に労働力として活躍することが望ましいとする」スタンスから、「女性が現在以上に労働参加し、かつその潜在能力を今以上に活用するにはどうすればよいか」という課題を中心にすえたものです。
 序章では、女性が職場でうまく活用されていない事実を、
(1)男性と比較して労働参加率が低い。
(2)管理職についている女性の比率が非常に低い。
(3)勤労意欲にややかける面があるといわれることがある。
の3点で示し、その理由として、
(1)女性の処遇に差別があり、働いている女性の勤労意欲を阻害している。
(2)女性の側に働きたい希望がないか、企業でがんばって働こうとする意欲に欠ける。
(3)女性にとって、職業生活で成功したいという希望がない。
(4)企業側は女性の労働生産性は低いとみなしているかもしれない。
という4つの理由が考えられるとし、特に(1)の処遇の差別に注目して分析を行うと述べています。
 中でも男女間賃金格差に関しては、
(1)労働市場に入る前の要因:教育水準の差など。
(2)労働市場における要因:企業における昇進や仕事配分の不利、コース別人事、パートタイマーの賃金格差など。
(3)ライフサイクルや家族との関わり:育児、家事の負担など。
の3種類の要因について解説しています。
 第1章では、「労働力としての女性に焦点を当て、学校教育システムと労働市場との接合をめぐる構造的問題を明らかにする」として、教育投資において、「女子は男子以上に経済的要因から影響を受けやすい、ヴァルナラブル(vulnerable)立場にあること、社会全体として、現在のパート活用が可能であるのは、「戦後50年かけて蓄積してきた高校教育と新規学卒雇用のシステムの下支えがあってのことだといった、長期的視点を持つべき」であることなどが述べられています。
 第2章では、「子どもの地位達成に関するリスクの増大と、その過程における母親の役割の増大が、日本社会における女性の活躍を促進するという課題、および少子化の進行を食い止めるという課題の双方にとって大きな障害となっている」という仮説を立て、「結婚後に子どもを持つか否か、そして子どもを持った後に働くか否かに関する女性の選択に対しては、『子どもの地位達成リスク意識』が固有の影響を持っていること」を明らかにするとともに、「女性活用と少子化対策を両立させるためには、子どもの地位達成を、母親が自身の人生を犠牲にしないでも確保できるようにするという面での対策が不可欠となる」ことを述べています。
 第3章では、「女性活用のあり方を母親就労に着目して検討」し、「性別役割分業観や幼い子をもつ母親就労に対する意識で重要な要因として、本人の母親が幼い頃実際に働いていたか否かがどの国にも共通して認め」られること、女性がもっと働きやすい社会を目指すためには、男性も含む社会構成員のすべてを視野に入れた環境整備が必要となることなどが述べられています。
 第4章では、男性の家事・育児参加に関して、
(1)我が国の男性の家事・育児参加が増えることが育児期の女性の就業を促進する効果があるか否か。
(2)どのような対策を行えば男性の家事・育児を増やすことができるか。
という2つの問題を取り上げ、「夫の家事・育児時間が長くなるほど、女性の労働力率が高まる」ことが明らかになったことや、逆に、「我が国の夫の家事・育児時間が今後も現在のままの低水準であるならば、育児期の女性に対する各種の就業促進策を講じて女性の労働力率を上昇させることにも限界があること」がうかがえることなどが述べられています。また、夫の家事参加の規定要因として、
・家事・育児の量(末子年齢、母親同居)
・時間的余裕(夫の労働時間、妻の労働時間)
・相対的資源(妻の年収割合)
が支持され、育児参加の規定要因としては、
・家事・育児の量(末子年齢、7歳以上の子ども)
・時間的余裕(夫の労働時間、妻の労働時間)
が支持されたことが明らかにされています。本章のまとめとしては、社会全体における人的資源の活用という面では、「わが国は労働市場ではもっぱら男性を(長時間労働として過剰に)活用して、女性を重文に活用せず、家事・育児労働では男性をほとんど活用せずに、もっぱら女性を活用するという状態になっている」ことを述べ、夫の家事・育児参加を進めることで、「育児期の男性の労働市場における過度な労働時間を短縮して、彼らが家事・育児に振り向けられる時間をつくり、その分女性が市場労働に投入できる時間を増やす」ことであることが述べられています。
 この他、第5章では、女性の婚姻状態と転職・再就職行動について、婚姻状態によって就業行動は非常に異なり、雇用就業におけるパート・常勤比率にも大きな差があることが述べられています。また第6章では、大卒女性のキャリアに関して、勤続年数とともにキャリア・昇格格差が増加していく理由や、男女差を感じさせない職場は、「男女同じように配属されている仕事で、上司の人事考課の公平性に満足しており、仕事分野としては研究・技術職の職場である」ことが述べられています。さらに第7章では、大卒女性が再就職せず、「M字カーブ」すら描かない理由として、「年齢制限や離職帰還が、大卒女性の再就職に与える影響」に着目して分析を行っています。
 本書は、女性の能力活用について、さまざまな分野から多角的な分析をまとめた一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書の中でも、特に注目されるべきは、第4章の「男性の家事・育児参加と女性の就業促進」ではないかと思います。これまで、男性の家事・育児参加に関しては、男女の間の不公平感や、「父親ももっと子育てを」というスローガン的なものが多かった印象があります。
 しかし、本章では、社会全体から見た場合の、労働力の不均衡かつ非効率な使われ方に着目している点が特徴です。著者は、問題の帰結を「社会における男女の労働時間と家事・育児時間の分配の問題」であるとして、「社会全体の経済力、活力を高めるために、今一度時間の効果的な分配を検討する時期に来ている」と述べていて、大変うなづけるものではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・効率的な労働時間の分配に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 佐藤 博樹, 武石 恵美子 『男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット』 2005年04月07日
 佐藤 博樹, 佐藤 厚 (編集) 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
 佐藤 博樹 『変わる働き方とキャリア・デザイン』 2006年05月22日
 佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』 2005年12月06日
 熊沢 誠 『女性労働と企業社会』 2006年07月25日
 大沢 真知子 『ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方』 2006年07月24日


■ 百夜百マンガ

胸キュン刑事【胸キュン刑事 】

 ドラマにもなった(しかも深夜ではなく土曜日の夜7時半)人気作品。のはずなのに記憶の奥底に忘れ去られていった作品。「胸キュン」と言えば『君に、胸キュン』は1983年ですから当時は一般的に使われる言葉だったのかもしれません。

投稿者 tozaki : 2006年08月18日 07:00

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