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2006年08月20日
地図で歩く路面電車の街
■ 書籍情報
今尾 恵介
価格: ¥1,575 (税込)
けやき出版(1998/06)
本書は、30年ほど前までは、ある程度の都市の目抜き通りには必ず走っていて、市民の便利な足として愛用されていた路面電車のうち、「現在まで生き残った路面電車の走る街の中からいくつかを選び、地図を片手に電車に乗りながら考えた」というものです。著者は、「路面電車」の定義を、「あるようで明確ではない」とし、その理由を、「市街地の路上を走るなら問題ないが、田舎道の、それも道端を走るのは路面電車なのか。本の数百メートルしか路面を走らなくても路面電車なのか、など迷う路線も多い」ことを挙げています
都電で唯一生き残っている都営荒川線は、「路線のほとんどが道路上ではない専用軌道であること」から例外的に廃止を免れたことが紹介されています。最盛期の昭和50年ころの都電は、38の系統が都内を縦横無尽に走り回り、路線延長は213.5kmに及び、「世界的に見ても大きな路線網を持つ『路面電車王国』だった」ことが述べられています。本書には著者の手書きによる都電の路線図が掲載されていますが、都心を縦横無尽に結んでいる様子がよく分かります。これらの路線網は、「電車事業の赤字と交通渋滞の安易な解決方法としてはっきりと都電の撤去が打ち出され、『東京都交通事業財政再建計画』に従って1年間に7系統ずつという恐ろしいまでのスピードで撤去が進んだ」ことが述べられています。
湘南を走る名物となっている江ノ電に関しては、厳密には路面電車ではないとしながらも、「昔は全国的に見られた『電気軌道』の標準スタイルといえる」として紹介されています。昔あった「浜須賀」という停留所に関連して、「スカという地名は砂地に付けられることが」多いことが述べられています。
著者は、「人が旅行に魅力を感じるのは『非日常』を体験できるからだ」という言葉を紹介し、鉄道の非日常風景として、「田舎の旧街道の道端を電車がのんびり走る美濃町線」を上げています。また、今では見られなくなってしまった光景ですが、名鉄犬山線という大手私鉄の大型車両が自動車と一緒に走る犬山橋の写真を掲載しています。この橋は、大正時代に木曽川を超える橋を作るにあたり、川の両岸である愛知・岐阜の両県から費用負担を受けることになり、鉄道専用橋の建設費を出す理由を立てるために地元住民も望む併用橋となったことが紹介されています。
日本最大の輸送人員を誇る路面電車はとしては、広島旧市街18.8kmを走り、1日12万5千人を運ぶ広島の路面電車が紹介されています。高度成長期に、アメリカの大都市交通を見学しただけの人たちによる、「欧米ではもう路面電車など走っていない、地下鉄と高速道路の時代である」という、無知なのか意図的なものなのか不明な事実誤認に基づく報告を受け、全国で路面電車が廃止されている中、広島県警は、ドイツなどのヨーロッパに調査に赴き、ヨーロッパでは路面電車のない都市の方が例外であることを見聞きし、この調査に基づき、「広島の市街地の都市交通の担い手には路面電車が最適」という結論に至ったことが紹介されています。さらに、全国都市の路面電車の息の根を止めたのは、1963年に国家公安委員会が、「対処療法的かつ安易な渋滞対策」として自動車の機動への乗り入れを許可したことでした。これにより全国に生き残っていた路面電車は自動車の渋滞に巻き込まれ、お客はどんどん離れ、経営的に成り立たなくなり廃止へと向かいました。しかし、広島では、「路面電車の代替交通機関に決め手がないまま廃止したら、市中心部の交通が麻痺状態になることが予想されたため」、1971年に際と軌道への自動車乗り入れを禁止しました。この後、減少を続けてきた市内線の輸送量が増加し、経営的にも黒字になったことが紹介されています。
本書はこの他、全国でも松山にしかないという旅客を扱う鉄道と路面電車が平面交差する伊予鉄道や、ドイツで開発された超低床車両が導入された熊本の市電、市の南部の山麓で採れた石材を運ぶための札幌石材馬車鉄道をルーツに持つ札幌市電、高知にあるのに「とでん」と呼ばれる土佐電鉄(全国で唯一、路面電車の終点が「郡部」にある)、日本の「電車発祥の地」である京都伝記鉄道、1914年に開通したものの昭和に入ってからバスに客を取られ、1933年に廃止された沖縄電気軌道などが紹介されています。
本書は、鉄道マニアはもちろん、古くからの都市の街並みの変遷に関心がある人にはお奨めの一冊です。
■ 個人的な視点から
静岡市にも昔は路面電車がありましたが、現在は静岡と清水を結ぶ静岡鉄道の電車線しか残っていません。静岡駅前のバスロータリーから静電の新静岡駅までは、元々路面電車が通っていた道を通りますが、こんな短いところにも名残は読み取れます。
■ どんな人にオススメ?
・路面電車に郷愁を感じる人。
■ 関連しそうな本
今尾 恵介 『地図を楽しむなるほど事典』
今尾 恵介 『日本地図のたのしみ』
今尾 恵介 『消えた駅名―駅名改称の裏に隠された謎と秘密』
今尾 恵介 『住所と地名の大研究』 2006年07月06日
今尾 恵介 『地形図でたどる鉄道史 東日本編』
今尾 恵介 『地図で歩く廃線跡―失われた鉄道の痕跡を辿る』
■ 百夜百音
【DREAM PRICE 1000 南佳孝 モンロー・ウォーク】 南佳孝 オリジナル盤発売: 2001
ヒロミ郷の「セクシー・ユー」と一緒にヒットした「モンロー・ウォーク」の方が今となっては有名ですが、浅野温子がまだかわいかった頃の映画の主題歌もヒットしました。
投稿者 tozaki : 2006年08月20日 06:00
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