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2006年09月27日

利益が上がる!NPOの経済学

■ 書籍情報

利益が上がる!NPOの経済学   【利益が上がる!NPOの経済学】

  跡田 直澄
  価格: ¥1680 (税込)
  集英社インターナショナル(2005/09)

 本書は、「NPO=ボランティア」という思い込みが、「もはや夢物語に過ぎない」として、「今後のNPOのためにも『ボランティア幻想を捨てよう』と声を大にして」訴えているものです。著者は、アメリカのNPOが、「これまで公共部門にあった分野や政府が手を染めなかった分野」である医療や教育、福祉などの分野の中に「ニッチ」を見出し、そうした分野で活動を続けていくために、NPOが民間からマネジメントや「ファンドレイジング(fund-raising=資金集め)」の手法を学び、そうした人材を引き入れながら民間企業的な色彩を濃くしていったことを紹介しています。
 第1章「NPOのビジネスモデルを考える」では、NPOの維持と拡充という目的のために、
・自前の稼ぎ(営業収入)
・補助金・助成金
・寄付
の3つの要素が欠かせず、「この三つがいわば三位一体となってこそ、NPOは長く存続できる」という「3分の1ルール」を紹介しています。
 また、米国では、「NPOをやるかベンチャー企業をやるか」の二者択一が深刻な問題ではなく、「立ち上げた組織をどちらで登記するか」を必要に応じて選択する問題に過ぎないことを紹介し、「NPOも一種のベンチャーであるという気概が今の日本のNPO業界には求められている」と述べています。
 そして、NPO法人が高齢者介護用のグループホームの建設に当たり、銀行から融資を受けるというケースを紹介し、「金余り現象」が起きている銀行がやっと一般企業のプロジェクトファイナンスに重い腰を上げ始めたこと、一部の企業や機関投資家が「社会的に意義のある事業や企業家への投資」である「社会的責任投資(Socially Responsible Investment)」の具体化に着手し始めたことを紹介しています。
 第2章「この『ニッチ(スキマ)』を狙う」では、タイで国際的なNGO活動が盛んになった理由として、「NGOが活動する「隙間(ニッチ)」がアジアでは他国に先んじて拡大していた」ことを挙げ、この経緯として、1970年代以降、欧米の留学から帰国してきたエリート層が政財界に進出し始めた結果、政府も開放政策に動き始め、ここを狙って外資が大量に流入し、1990年前後の驚異的な経済成長を下支えしたこと、1980年代後半に始まったエイズの蔓延に、海外NGOが活動し、これらの活動を若いエリート層が支援して民法が改正され、NPOの設立が容易になったことなどが述べられています。
 そして、今後NPOビジネスにとって可能性のある産業分野として、医療や環境問題、そして、イギリスの「グラウンドワーク・ファウンデーション」の事例としてテムズ川河口のダートワースの土壌改善事業を紹介しています。
 第3章「『寄付市場』を造り出す」では、大阪の淀屋橋を作った豪商である淀屋辰五郎を紹介し、自費で橋を作り丸々「寄付」したことのリターンとして、大阪に物流の太いパイプが出来上がり、新しい繁華街が形成されたことが紹介されています。
 また、1914年に米国で設立された「クリーブランド財団」に範を取った大阪コミュニティ財団を紹介し、「多数の篤志家から寄付された多数の基金により、それぞれの意向にしたがって助成事業を行う」というその設立趣旨を紹介しています。
 この他、エコマネーでインフレーションを起こすという思考実験や、情報の非対称性を打開し、「寄付をする側と受ける側との双方を仲立ちするコンサルビジネス」として、「NPO法人寄付市場創造協会」(JaDoMaC)を紹介しています。
 第4章「NPO業界の足元を見つめる」では、日本社会に寄付文化が定着しない理由の一つとして、「寄付に関する制度がまだ整備されていないこと」を挙げ、NPOの収益事業に関して、「ほとんどの事業を収益活動と位置づけ、本来事業を限定的に捉えるという『線引き』をしているのが現状」であること、NPOに対する寄付金を、政策的に優遇していくことの議論の裏には、「寄付市場が拡大することで、国庫から支出しなくてはならない補助金が軽減できる」という政府の本音が透けて見えること、日本では寄付金に対する優遇を受けられる「認定NPO」が2005年7月現在で34しかない理由として、認定条件が厳しいこと、等が述べられています。
 著者は、「官主導の国家を民主導の国家に変えていくために」、非営利活動が重要な役割を担うとして、本書の意義を述べています。
 本書は、「NPO=ボランティア」と思い込んでいた人たちにとって、視界が開けるような一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書の著者は、今年のはじめくらいに「竹中塾」のプレゼン大会の時にコメントをしていたのを見かけたことがあります。
 あちこちの委員などを歴任しているので名前を見たり、新聞でコメントしているのは見たことがあったのですが、単著を読んだのは本書が初めてだったのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・「NPO=ボランティア」と思い込んでいる人。


■ 関連しそうな本

 渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
 谷本 寛治, 田尾 雅夫 (編著) 『NPOと事業』 2005年01月28日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 金子 郁容 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』 2005年08月29日


■ 百夜百マンガ

自虐の詩【自虐の詩 】

 この作品はジャンル的には「DV四コマ」とかになるんでしょうか。とにかくちゃぶ台がひっくり返ります。『ゴーダ君』の貧乏4コマ路線の作者が化けた作品。説教臭くなったともいえますが。

投稿者 tozaki : 2006年09月27日 07:00

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