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2006年09月09日

かなり気がかりな日本語

■ 書籍情報

かなり気がかりな日本語   【かなり気がかりな日本語】

  野口 恵子
  価格: ¥693 (税込)
  集英社(2004/01)

 本書は、「最近の日本語とコミュニケーションについて考える材料を提供する」ことを目的としたものですが、単に若者言葉をジャーナリスティックに取り上げて嘆く「オヤジ説教本」ではありません。著者は、「若者たちの日本語力を憂える大人たちは、先輩として、後輩が豊かな日本語の世界を構築するよう導いてきたのだろうか。そもそも大人たち自身が、広くかつ深い日本語の世界を持っているのだろうか。さらに、その日本語の世界の中から選び取った磨き抜かれた日本語を駆使して、円滑なコミュニケーション活動を行っていると言えるのだろうか」と自問しています。著者は、大学で非常勤講師として、外国人学生に日本語・日本事情を、文学部の学生に日本語教育概論などを教えている語学教師ですが、本書には、日本語を学び、日本で暮らし始めた外国人学生たちが当惑する様々な「気がかりな日本語」やコミュニケーションが多数収められています。
 著者が、日本の大学生に敬語が使われる場面を想定した会話文を書かせたところ、ファーストフードやファミレス、居酒屋、コンビニのレジなどでの接客場面でのやり取りであったことを挙げ、「学生たちが最も親しんでいる、そしてほぼ唯一の敬語使用の場」が、家庭でも地域でも学校でも書物の中でもなく、ファーストフード店や居酒屋などのサービス業の現場であることを指摘しています。
 そして、日本語の乱れとして非難されることが多い「いまどきの大学生」を取り巻く日本語の環境を作り出してきたのは、ほかならぬ「いまどきの大人」たちであり、「大学生は、大人たちの育てたように育ち、するようにしてきた」ことを指摘しています。
 その「いまどきの大人」の日本語については、「まあ」や「やはり(やぱり)」等の言葉が、「あのー」「エーと」「エー」「このー」「そのー」「んー」のような、つなぎの言葉(フィラー)の仲間入りをしていることを指摘しています。また、「要するにとりあえず逆にある意味基本的に、日本語力だ」等の言葉が、特に深い意味もなく頻繁に用いられ、無自覚に使用されていることについて、
・「ある意味」には「別の意味」があるのか。
・「基本的に」の基本的な意味。
・反対のことを表さない「逆に」。―――「言い換えれば」や「その代わりに」の意味で使われ、「正反対」の意味では「真逆(まぎゃく)」が使われる。
・出過ぎ感のある「で」。
等の例を挙げて解説しています。
 大人の中でも年長の部類に属する人の日本語に関しては、かつての高齢者が「パーティー」が発音できず、「パーテー」や「パーチー」と言っていたのに対し、21世紀の高齢者は「ティーショット」や「デュエット」などもお手の物になり、ついには「ホームスティー」「ディスクトップ」などにまで発揮してしまう例を紹介しています。これは「規則の過剰般化」と呼ばれるもので、「意識的に、あるいは無意識のうちに、自分の獲得したルールを他のケースにも当てはめようと」してしまう、外国語学習者や幼児期の母語発話者が言語習得の過程で経験する誤りであることが述べられています。
 また、若者の日本語の乱れを指摘する大人自身の問題を指摘するものとして、
「おかしな上昇イントネーションが蔓延してますよね。半疑問? 実に耳障りですね」
という文章を紹介し、「自分では無意識に使用していながら、ほかの人が言うのを聞くと不快感を抱くのだろう」と述べています。同じような例としては、「腑に落ちる」などを挙げています。著者は、語彙の習得に関して、「理解語彙を増やす努力を続けながら、使用語彙を自らの責任で管理する」という点では、外国人学習者も母語発話者も根本は同じであると主張しています。
 この他本書では、「ことばの丁寧さの度合が、使われているうちに以前より下がり、乱暴に感じられる傾向」を差す「敬意低減の法則」の例として、身内に対しての尊敬語、身内に向けた謙譲語等の例を紹介しているほか、「高齢者のかた」「障害者のかた」のように、「『弱い立場の者への同情』を示そうと敬語の『かた』を用いるのは、差別意識を隠蔽するための姑息な手段のようにも見える」こと等を取り上げています。
 本書は、ちょっと前の日本語ブームに釣られて買ってしまった「練習帳」の類を買ったままほったらかしている人にも読みやすく、ドキリとさせてくれる一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 「要するにとりあえず逆にある意味基本的に」という言葉を聞いて、「とにかくひとまず何よりすなわちタイムボカ~ン」を思い出してしまう世代の人は少なくないはずです。
 タツノコ作品はGyaOで放送しているので、そちらで見ることができますね。
http://www.gyao.jp/


■ どんな人にオススメ?

・「いまどきの大人」の言葉の乱れが気がかりな人。


■ 関連しそうな本

 松井 栄一 『「のっぺら坊」と「てるてる坊主」―現代日本語の意外な事実』
 日本エディタースクール (編集) 『日本語表記ルールブック』
 神辺 四郎 『その日本語は間違いです―正しい言葉の使い方』
 北原 保雄 『問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?』
 現代言語セミナー 『人前には出せない怪しい日本語164』
 北原 保雄 『達人の日本語』


■ 百夜百音

くまのプーさん 日本語歌ベスト【くまのプーさん 日本語歌ベスト】 ディズニー オリジナル盤発売: 2002

 『くまのプーさん』の劇中歌が収められていて、ストーリーを簡単に追うことができます。
 何気にプーさんが、自分が太っていることを気にしていることがショックです。まあ、食べすぎで穴に引っかかるくらいなので、重要なんですが。


『くまのプーさん 完全保存版』くまのプーさん 完全保存版

投稿者 tozaki : 2006年09月09日 09:00

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