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2006年09月15日

会社法入門

■ 書籍情報

会社法入門   【会社法入門】

  神田 秀樹
  価格: ¥777 (税込)
  岩波書店(2006/04)

 本書は、2006年5月に施行された「会社法」制定の背景と内容のポイントを、日本の会社法研究者の第一人者である著者が解説したものです。
 第1章「世界に広がる『株式会社』」では、世界的に普及しつつある「株式会社形態の核となる部分は世界的に共通」であり、その特質は、
(1)出資者による所有:株式会社では「株主」と呼ぶ。
(2)法人格の具備:団体自身の名において権利を有し義務を負うことが認められる。
(3)出資者の有限責任:株主は、出資額を超えて会社の債務について責任を負わない。
(4)出資者と業務執行者との分離:株主が選任した業務執行者が事業経営の意思決定と執行をする。
(5)出資持分の譲渡性:出資持分が株式という細分化された割合的単位とされ、株券という有価証券に表章される。
の5つであることが述べられています。
 また、新しい会社法が2005年に制定された目的として、
(1)従来の片仮名文語体である商法(会社の部分)を「現代語(平仮名口語体)」化する。
(2)1997年ごろから相次いで行われた商法改正により、損なわれた法制上の整合性の調整を図る。
(3)内外の実務界などからの改正要望や、過去の改正の際の付帯決議項目について改正する。
の3点を挙げています。著者は、戦後の商法改正の特徴を、「ファイナンス」「ガバナンス」「リオーガニゼーション」の3つの分野に分けて理解することを勧めていて、ガバナンスに関しては、1990年代後半から、「コーポレート・ガバナンスのあり方が実は企業のパフォーマンスに影響を与える、したがって、国の経済にも影響を与える」という議論が世界的に勢力を持ち、このことが会社法の改正を進める原動力となったことを述べています。
 第2章「株式会社の機関」では、上場会社などの大規模会社に関する、最近の機関についての法の考え方の潮流として、
(1)所有と経営の制度的分離を進め経営権を代表取締役等に集中し、株主はその選任と解任だけを決める。取締役等は、広い裁量権を与えられ、事業経営に際しては原則として過失責任である。
(2)そうした経営を監査・監督する仕組みとして、取締役会の他、監査役や会計監査人を置く。
の2点を挙げています。
 また、2002年改正で新たに導入された「委員会設置会社」制度について、
(1)取締役会で選ばれた委員をメンバーとする指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会が監査・ガバナンスの重要な位置を占める。
(2)監督と執行が制度的に分離され、業務執行は執行役が担当し、代表執行役が置かれ、業務の意思決定も大幅に執行役に委ねられる。
の2つの特徴を述べています。
 第3章「株式会社の資金調達」では、会社法の中心である私法的ルールについて、なぜ、「会社に関わる人々の利害の調整をする基本ルール」を定めるのかを、
(1)株主間の利害調整の場面
(2)株主と会社債権者との利害調整の場面
(3)株主と経営者との利害調整の場面
の3つについて例示しています。
 著者は、「株式」という仕組みについて、「株式会社における出資者である株主の地位を細分化して割合的地位の形にしたものであり、それは多数の者が株式会社に参加できるようにするための法的技術」と定義した上で、この「伸縮自在」な株式という不思議な仕組みについて、会社法が、様々なルールを設ける必要性として、
(1)多数の者からの資金調達を可能にするために、株式や社債を有価証券化すること。
(2)資金提供者間の利害を合理的に調整するルールを定めること。
の2点を挙げています。
 第4章「設立、組織再編、事業再生」では、株式会社設立のプロセスを、
(1)団体の根本規則である定款を作成する。
(2)株式発行事項を決め、株式の引受けを確定する。
(3)機関を決める。
(4)株式の引受人が出資の履行をして会社財産を形成し、その結果として設立時の株主を確定する。
(5)以上の会社法のルールに従って株式会社としての実体が形成されると、設立の登記をする。この登記によって株式会社は法人格を取得し、成立する。
の5段階で解説しています。
 また、会社法で認められている組織再編行為として、(1)組織変更、(2)吸収合併、(3)新設合併、(4)吸収分割、(5)新設分割、(6)株式交換、(7)株式移転、の7種類があることが述べられています。
 さらに、日本において、今後、私的整理に利用されることが期待されている「デット・エクイティ・スワップ」(債務の株式化)について、「債権者と債務者の合意に基づき債務を株式に変更すること」と述べ、そのポイントを、「金融機関などの債権者に対して単純な債権放棄を行う場合に比べて魅力を与えながら、債務者の事業の再生を図ろうという仕組み」であることとしています。
 第5章「会社法はどこへ行くのか」では、2005年に話題になったライブドアとフジテレビの間でニッポン放送をめぐって展開された争奪戦と、その後の買収防衛策をめぐる議論が解説されています。
 また、世界的な規模で「コーポレート・ガバナンス」が議論される背景として、
(1)大企業の不祥事の再発を防止するため。
(2)企業の競争力、国際競争力を高め、企業のパフォーマンスを高めるため。
(3)EU加盟国間での会社法制度の調整。
の3つの背景があることが述べられています。そして、「コーポレート・ガバナンス」を世界的な視点で考える時のポイントとして、
(1)望ましいコーポレート・ガバナンス・システムは、世界で一つではなく、それぞれの国において望ましいシステムがあると考えられる。
(2)企業の中での「オーバーサイト」機能(企業のパフォーマンス向上のための監視メカニズム)をどのように確保するか。
(3)ディスクロージャー(情報開示)の重要性。
の3点を挙げています。
 本書は、古くからの経緯を持ちながら、最も新しい法律分野でもある会社法を理解する上で、学生時代以降、それほど法律を勉強してこなかった元法学部生等にはお勧めできるものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 私の学生時代には、「会社法」は、法律の学問分野や講義の名前としては存在していても、法律として単独では存在せず、講義などでは、商法などいくつかの法律をまとめて教えていました。
 この会社法に限った話ではありませんが、大学で勉強してきた知識というのが、ものすごいスピードで陳腐化していくのを感じます。


■ どんな人にオススメ?

・大学で教わった内容なんかはすっかり忘れてしまった元法学部生。


■ 関連しそうな本

 三輪 芳朗, 柳川 範之, 神田 秀樹 (編集) 『会社法の経済学』
 神田 秀樹 『会社法』
 柳川 範之 『契約と組織の経済学』 2005年02月22日
 ロナルド・H. コース (著), 宮沢 健一, 藤垣 芳文, 後藤 晃 (翻訳) 『企業・市場・法』 2005年04月29日
 林田 清明 『法と経済学―新しい知的テリトリー』 2005年06月07日
 伊藤 秀史, 小佐野 広 『インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析』 2005年02月26日


■ 百夜百マンガ

博士の愛した数式【博士の愛した数式 】

 映画にもなりました、コミックにもなりました、テレビドラマ化もされました、という展開は『電車男』なんかと同じですね。ということは、『県庁の星』のTVドラマ化もあるのかしら。

投稿者 tozaki : 2006年09月15日 07:00

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