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2006年10月21日

5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン

■ 書籍情報

5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン   【5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン】

  リチャード・G. クライン, ブレイク エドガー (著), 鈴木 淑美 (翻訳)
  価格: ¥2100 (税込)
  新書館(2004/06)

 本書は、150年以上の間積み重ねられてきた、人類の進化を科学的に示す証拠に基づき、「道具、社会組織、概念を発明する高度な能力」、すなわり、「文化を築く、完全な現代人たる能力」が、遺伝子の変異により、「5万年前あたりにアフリカで完全な現生人の脳が促進された」ことによって得られたものであり、このことが、現生人の世界への拡大をもたらしたことを解説しているものです。
 第1章では、5万年前以前までに、比較的ゆっくりと人の解剖学的構造が変化していたのに対し、行動面の進化は5万年前以降、劇的に加速し、「本格的に文化を築くことができる」ようになり、「文化を通じて、彼らは環境に適応する独自の能力を進化」させていったと述べられています。著者は、「この革命を誘発したものは何か?」という問いに対し、ヒトが二足歩行を始めて以降、「少なくとも3つ、ことによると4つの深遠な意味を持つ事件が、何も起こらない長い年月をはさみながら次々と突発的に起こった」として、
(1)250万年前、剥片石器が初めて現れた。
(2)170万年前、完全に人間らしい身体プロポーションを備えた。
(3)60万年前頃、脳の大きさが急速に拡大し、石器の質も大きく変化した。
(4)約5万年前、文化を発明し操作する、完全に現代的能力がもたらされた。
の4つの事件を挙げています。
 中でも、(4)に関しては、「文化は、環境の変化に適応するため特に役立つ手段を提供する。文化的革新が蓄積するスピードは、遺伝子突然変異よりもはるかに早い」と述べ、ヒトが「地球を支配する生物へと変身することができたのは、他でもない、こうした文化的適応戦略があってこそだ」と解説しています。
 第2章では、350万~250万年前に、二足歩行する種が複数現れ、250万年前には、少なくとも2種、「頑丈型アウストラロピテクス」になる系統と、ヒト族につながる系統が存在していたことを述べています。
 第4章では、1984年にケニアのトゥルカナ湖近くで発見された「トゥルカナ・ボーイ」と呼ばれる少年の化石について、亡くなったときは1.62メートルの身長があり、成年になれば1.8メートル以上はあったであろうこと、そして、現生人の胴の上に「ハビリス」並みの小さな頭が乗る、という姿をしていたという特徴を挙げ、「もしその姿を我われがみたとしても他の星から来た宇宙人か、珍妙な遺伝子実験の産物だと思うのではないか」と述べています。そして、「別の星」とは、太古の昔の地球であり、「実験」とは自然そのものであると語っています。このトゥルカナ・ボーイは、「今日の人間と比べると背が高く、力もあり、頭が悪い」ものであり、11歳で死んだボーイは、現生人で言えば、15歳の体格に、1歳の頭脳であったと述べられています。
 第4章では、東アジアの化石から、100万年前までにはヒトがアフリカから拡散していったことを示しているとした上で、どのように広がっていったか、という疑問を解説しています。
 第5章では、ヒトが進化した500万~700万年の間に、脳のサイズがおよそ3倍に増加し、急速に大脳化が進んだことを解説しています。そして、5万年前頃に起こった「人間の文化の曙」の特徴は、「完全に現生人らしい言語の発展」にあり、この一因は神経学的変化にあるとした上で、この脳構造内部の変化は、頭蓋骨化石からはわからず、それを示唆する行動学的(考古学的)証拠がなければ検証できないと述べています。
 また、約5万年前までは似通った行動パターンを続けていた、別の進化の系統に属するアフリカ人とヨーロッパ人のうち、約5万年前にアフリカいjンが、行動面で現生人らしさを見せ始め、瞬く間にまったく違う行動をとるようになり、競争で有利に立ったアフリカ人がたちまちユーラシア各地に広がったと述べています。
 第6章では、ネアンデルタール人に関して、「原始人」というよりも、「私たちとは違うヒト」であるとして、「解剖学的構造の多くの点で、現生人よりも特殊化が進み、共有した最後の祖先からさらに変化してきた」と解説しています。そして、「ムスティエ文化」や「中期旧石器文化」と呼ばれるネアンデルタール人の文化の特徴として、それ以前のアシュール文化と比較して、「機能は同じでも造りやすく持ち運びもしやすい」道具を特徴としていると述べています。また、ネアンデルタール人が姿を消した時期に関して、
・6万年前以前、ヨーロッパではネアンデルタール人だけが生活していたこと。
・3万年前以降消えたこと。
の2点を除いてはさまざまな意見があることが述べられています。
 第7章では、アフリカにはネアンデルタール人が入り込んでいなかったことを述べた上で、スフール洞窟とカフゼー洞窟で発見された初期現生アフリカ人が、「ほぼ現生人」という特徴を持ちながら、どちらも5万年前以降の人の祖先ではなかったこと、そして、重要なのは、「現生人の解剖学的構造がアフリカで進化したことを確実に示すことにある」と述べています。
 第8章では、「ヒト文化の曙」である、上部旧石器文化が、約4万5000年前にアフリカで起こった行動の変化によるものであり、約4万年前に始まったヨーロッパ上部旧石器文化は、それによってもたらされたものであることが述べられています。
 著者は、この「曙」をもたらしたものは、「完全な現生人の脳への発展を促すような偶然の変異」であるとして、
(1)より効率のいい脳への自然淘汰が、ヒト進化を初期段階で大きく前進させた。
(2)脳の増大と脳組織の変化は、それよりずっと以前に起こった行動上・生態上の変化に伴う。
(3)解剖学的構造と行動面での変化、この両者の関係が、約5万年前に一変した。
という3つの状況証拠を示しています。そして、神経系の変化が原因だという立場にとっては、直接化石では確認できない、という反論がもっとも手強いと述べています。
 本書は、人間のルーツ、中でも人間らしい行動のルーツを知る上で、コンパクトにまとまった一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書では、現生人並の狩猟採集能力を持つアフリカ人の末裔によって、約4万6000年前にオーストラリアの大型勇退動物と爬虫類の多くが突然姿を消したこと、1万2000~1万年前の両アメリカ大陸でも同様に大型動物が絶滅に追いやられたこと、同じ時期にはユーラシアとアフリカでも2、3の大型哺乳動物が絶滅したと見られることが示されています。このことは、『人間はどこまでチンパンジーか?』や『飛び道具の人類史』にも書かれていましたが、産業革命以後にスピードが増したとは言え、現生人の出現そのものが地球上の生物にとって脅威であったことを示しています。


■ どんな人にオススメ?

・歴史の教科書にあるように、人間が猿人から現在に至るまで直線状に進化してきたと思っている人。


■ 関連しそうな本

 ジャレド ダイアモンド 『人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り』 2006年09月29日
 ジュリアン ジェインズ (著), 柴田 裕之 (翻訳) 『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』 2006年06月04日
 ニコラス ハンフリー (著), 垂水 雄二 (翻訳) 『喪失と獲得―進化心理学から見た心と体』 2006年4月15日
 スティーヴ・グランド 『アンドロイドの脳 人工知能ロボット"ルーシー"を誕生させるまでの簡単な20のステップ』 2006年1月28日
 トール ノーレットランダーシュ (著), 柴田 裕之 (翻訳) 『ユーザーイリュージョン―意識という幻想』 2006年06月18日
 海部 陽介 『人類がたどってきた道―"文化の多様化"の起源を探る』


■ 百夜百音

LIFE【LIFE】 BLACK BISCUITS オリジナル盤発売: 1999

 バラエティ番組の企画とは言え、台湾出身のアイドルが日本でヒット曲を出していたのは、台湾好きにはうれしいところです。
 ところで台湾と言えば、キョンシーですが、子役だったテンテンも今は日本で活躍しているそうです。


『幽幻道士』幽幻道士

投稿者 tozaki : 2006年10月21日 11:00

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