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2006年10月20日

大阪破産 Osaka Bankrupts

■ 書籍情報

大阪破産 Osaka Bankrupts   【大阪破産 Osaka Bankrupts】

  吉富 有治
  価格: ¥1,000 (税込)
  光文社(2005/10/21)

 本書は、第3セクターや厚遇問題など、「これまで大阪市が抱えてきた一連の諸問題を幅広く解説したもの」です。著者は、大阪市役所の職員の市内居住率が約4割しかないことを指摘し、「大阪がさほど好きではないと見える」としながらも、「何でもありのごった煮」文化だけは、自分たちの精神的支柱にして、「何でもあり」の税金の使い方をしていると述べています。
 第1章では、破綻後の大阪のシミュレーションとして、「中之島モンロー主義」を貫く大阪市が、「地方財政再建促進特別措置法」の準用を受けずに自主再建を選択したとして、
・地下鉄料金の大幅値上げで御堂筋が自転車通勤のサラリーマンで一杯に。
・ゴミ収集有料化によって不法投棄されたゴミが山積みに。
・廃墟と化した人工島には夜盗の集団が(『暴虐外道無法地帯ガガガガ』みたいです)
・金持ちが大挙して郊外に脱出し、大阪市中心部は貧困層の巣窟に。
・市役所には、サラ金苦や家庭不和などが相談できる「職員相談室」が。
などが描かれています。大げさではありますが、大筋には絵空事ではない展開だと思います。
 第2章では、「大阪破産」シミュレーションの引き金を引いた第3セクター問題が取り上げられています。内容的には、
「大阪民国ダメポツアー」
と相当かぶりますが、とにかく、その物量に圧倒されます。
 通天閣から200メートルに立地する遊園地「フェスティバルゲート」を訪れた著者は、日曜日にもかかわらず閑散としているドーストタウンに圧倒されています。1階の土産物売り場からはすべてのテナントが撤退、「他の客のプライバシー」を問題に撮影をさせてもらえなかった4階の食堂には、他の客など一人もいない、など、目を被うばかりの惨状です。この遊園地は、大阪市交通局のバス車庫だった土地の有効利用のために土地信託制度によって設立されました。企画当時の資料には、「綿密な計画に支えられた基本戦略の立て方、企画力については~広域からの集客により地域の活性化の起爆剤となることを意図し~ユニークな実現性の高い提案であり高く評価される」と手放しで賞賛されていることが指摘されています。
 「金をドブに捨てる」と喩えられる湾岸開発の象徴である「テクノポート大阪」は、「大阪港に造成した3つの人工島を橋や地下鉄で結び、そこにハコモノをバカスカ建てて人を集め、ハイテク企業や貿易会社を呼び込もうという計画」と解説され、その結果は、「人が集まる代わりに、閑古鳥が鳴き、豪華な建築物だけがむなしくそびえ立っている」という無残なものであったと述べられています。そして、その象徴として、大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)とアジア太平洋トレードセンター(ATC)が挙げられています。WTCに関しては、「世界各国から人やカネ、モノ」が集まる代わりに、約8割は大阪市の部局が入居し、「大阪市第2庁舎」と化している実態が指摘されています。そして、3回にはパチスロ店さえ入居していると驚いています。このビルは、1989年の当初計画では、高さ150m、地上33階のビルだったものが、1995年のオープン時には、高さが256m、地上55階へ大幅に変更され、西日本一高い超高層ビルとなったことを挙げ、その背景には、大阪府が建設した「りんくうゲートタワー」との高さ競争があり、「大阪市側の意地」のために、総事業費は当初計画の520億円が1193億円まで膨らんだことを指摘しています。さらに、この「第2庁舎」に対しては、付近の相場の約1.5倍の家賃を払っていることを、「タコが自分の足を喰うのと変わらない」と述べています。また、「国際交易機能を担う中核的な」存在であったATCには、「海外の貿易機関や企業が入居」する代わりに今では携帯電話ショップや100円ショップが入居していることが指摘されています。
 また、大阪の中心地には、港町開発の目玉として建設された「大阪シティエアターミナル」(OCAT)を取り上げ、関空への始発駅として搭乗手続きが直接できることを売りにしていたものの、計画では1万人が利用するはずが、もっとも利用者の多かった1997年度ですら1日198人しか利用者がなかったことが指摘されています。
 著者は、この3つの施設を運営していた3つの三セクの社長たちが、元大阪市経済局長、元大阪市助役、元大阪市衛生局長と市のOBであることを指摘し、彼らが「何百億円もの公金を焦げ付かせながら、その後は何食わぬ顔で退職」し、関連企業に再就職さえしていることを告発しています。
 この他大阪市関係では、地盤が軟弱でロックコンサートが開催できない「大阪ドーム」(大阪近鉄バファローズのホームグラウンドだった)や、事業費の7割を借入金でまかない、首が回らなくなって破綻したクリスタ長堀を取り上げ、これらの5社の出資母体が、建設局、計画調整局、経済局、港湾局と、すべて頭文字が「K」であることから、地元マスコミが3セク5社の破綻を「5K問題」と書き表していることを紹介しています。
 また、関西国際空港に関して、関空に赤字をもたらした原因となった複合商業施設である「エアロプラザ」や、予想以上の地盤沈下によって、「開港からわずか5年で約12mも沈んでいることが確認」され、「すでに旅客ターミナルビルの地下室の床が海面と同じ高さに」あることが紹介されています。さらに、空港対岸に建設された「りんくうタウン」がバブル崩壊で頓挫し、その象徴として、「バブルの塔」や「りんくうの廃墟」と呼ばれる「りんくうゲートタワー」を取り上げ、テナントが入らず、大阪府の部局や3セク企業が入居していることを指摘しています。このりんくうゲートタワーは、多額の税金を注ぎ込んだ結果、総事業費659億円で建てられた豪華ビルが、開業から9年でわずか7%以下の45億円で新生銀行グループに売却されたことが紹介されています。
 著者は、3セクをめぐる無責任体質を、「大阪では、責任という言葉が、綿毛の何兆倍も軽いのである」と批判した上で、「そのツケは私と私の子どもと孫が泣く泣く背負わなければならないのだから、やっていられない」と嘆いています。
 第3章「お気楽極楽『大阪市役所』生活」では、大阪市役所の"厚遇"を、大阪市本体から受ける給与や手当と、互助会と呼ばれる職員同士の親睦組織から受け取る福利厚生とに分けて紹介しています。中でも互助会に関しては、法的な位置づけも曖昧な任意組織である「大阪市職員互助組合連合会」略して「互助連」に対する13年間で9億円以上の人件費支出や事務局スペースの提供などを、「厚遇以上の、きわめて不正な利益供与ではないだろうか」と指摘しています。また、給食のおばさんの年収が900万円を超える例を筆頭に、衆院予算委員会で当時の麻生総務大臣から「給与が破格に高い」と指摘された現業職の給与の高さや、「列車を低位置に止めるのは難しい」という理由で支払われる等の多種多彩な特別手当等を取り上げています。特に、1ヶ月間の張り込み取材によって明らかになった阿倍野区役所税務課のカラ残業問題では、「手当は市が労働組合の言いなりに配分したのに、処分は労使の悪弊を職員個人の責任にすり替えており、不当」として、訴訟を起こした事件を取り上げ、労使の密約という問題の深さを指摘しています。この他、「ながら条例」を大幅に拡大解釈したヤミ専従の実態や、「こんなものをつくること自体、恥ずかしい」と担当者が語る教職員の不祥事マニュアル、「いまでこそ少なくなりましたが」と前置きしながら(と言うことは未だにいると言うことですね)議員や有力幹部の口利きで入庁する職員が多数いたこと等が述べられています。さらに、『ナニワ金融道』のネタになった、元大阪市財政局主税部指導課長代理の自殺未遂事件を巡っては、公金を使って、市の局部長クラスの幹部や市会議員を高級クラブで接待していたテクニックを紹介しています。さらには、保険料を1円も納めていないのに、「人道的対応」として、慣例で認められていた市健康保険組合の診療所での市議会議員の無料診療なども紹介されています。
 第4章「いまそこにある大阪破綻」では、大阪市の財政赤字の原因として、1.4倍という極端な昼夜人口の差と、第2章で取り上げた無謀な巨大開発を挙げています。そして、大阪市のみならず、「総務省の胸先三寸」でどうにでもなる地方交付税の配分の問題を指摘しています。
 第5章「本当に起きた『自治体破産』に学べ」では、1992年2月14日に準用財政再建団体の承認を受けた福岡県赤池町の例を紹介しています。50億円の一般会計に対し、土地開発公社の利息だけで年間1億円に達し、小学校のトイレはドアが壊れてもそのまま、窓ガラスが割れても修理されず放置されていた例を紹介しています。これによって「町民の意識は大きく変わりました」と述べられていますが、これだけ徹底的に役所が何もしなければ、見捨てられたようなものでしょうか。著者は、今の地方自治体の置かれた状況を、「銀行の護送船団方式に重なるものがある」として、「自治体は潰さない」という国家政策も、あくまで「いまのところは」という但し書き付きであるものであることを指摘しています。
 著者は、取材に協力してくれた大阪市の職員たちが、「本では大阪市のことはボロクソに書く」という著者に対し、「本当のことなのだから仕方がない」「大阪市が立ち直るには膿を出し切るしかない」と、好意的に応じてくれたことを挙げ、本書を、「まだ良心を捨てていない大阪市職員へのエールでもある」とまとめています。
 本書は、公務員の良心なんかあてにならない、と言う人にもぜひ一度読んでいただきたい一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書で一番ずっこけたのは、大阪市ではなく、10年間「爪に火を点すような倹約」を重ねてきた赤池町の事件でした。それは、10年間の財政再建を終え、やっと再開された公共投資である、総合福祉保健施設の新築工事を巡って、町長が収賄容疑で逮捕されてしまった事件です。元助役は、「再建を完了した01年度以降は国や県の監視もなくなり、たがが外れたようになっていた」と述べていますが、著者は、「監視がなくなれば、あとは好き勝手できる」というのは、「役人の性」なのかもしれないとさじを投げかけています。


■ どんな人にオススメ?

・大阪はどうなっちゃうのか心配な人、またはおもしろがって見ている人。


■ 関連しそうな本

 マーサ スタウト (著), 木村 博江 (翻訳)
 『良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖』
 青木 雄二 『ナニワ金融道 (2)』
 鎌田 慧 『自律と協働、はたらきがいをもとめて―大阪市現業労働者の60年』 2006年01月18日
 中野 雅至 『はめられた公務員』 2005年05月26日
 斐昭 『不滅の「役人天国」』 2006年05月08日
 白川 一郎 『自治体破産―再生の鍵は何か』 


■ 百夜百マンガ

浪速グラディエーター【浪速グラディエーター 】

 「市役所も警察も民営化」というと思い出すのはロボコップですが、そうなるとデトロイトシティーを牛耳るオムニ社に当たる企業は大阪では何になるでしょうか?
 関西ということでは京都のオム*ン社? 街中に自動改札が作られそうです。案外市役所の民営化に向いているかも?


投稿者 tozaki : 2006年10月20日 07:00

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