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2006年10月25日
好かれる方法 戦略的PRの発想
■ 書籍情報
矢島 尚
価格: ¥714 (税込)
新潮社(2006/9/15)
本書は、2005年衆院選の自民党の大勝を陰で支えた他、「キシリトール」や「タマちゃん」ブームを仕掛けたプラップジャパンの創業者であり、創業以来35年以上、一貫して「黒子」の立場をとってきた著者が、「PRという仕事への誤解」や偏見を解き、「対象が本来持っている魅力を最大限にアピールするためのお手伝い」というPR会社の本来の役割を解説しているものです。
第1章「『関係を良くする』という仕事」では、日本では、「宣伝広告活動」という意味で使われている「PR」という言葉が、本来、「Public Relations」の略であり、「大衆や公衆、ひいては社会との関係を向上させて、良好なものにする行為」であることが述べられています。著者はその例として、玉川高島屋ショッピングセンターの依頼でスタートした「ラブリバー運動」を紹介しています。また、フリーのPRマンとして活動していた著者が、道路公団の仕事を受ける際に、個人だと都合が悪い、という理由で1970年にプラップジャパンを設立した経緯が語られています。
第2章「広告とPRはまったく別物」では、アメリカでは企業が政府や官庁に働きかける際にPR会社を使うこと紹介されています。また、マスコミから「なぜ従業員の声がトップに届いていなかったのか」という非難を浴びる例を挙げ、危機管理の上でも、社内コミュニケーションの適正化が重要であることが述べられています。
著者は、広告とパブリシティの違いに関して、パブリシティには、「同じ話を同じメディアに何度も取り上げてもらうこと」が難しい「一期一会」の性質があるとして、
・パブリシティによる記事:信頼度が高いが繰り返しが効かない。
・広告:信頼度が低くても繰り返しができる。
という違いがあると述べています。
そして、広告の本質が「buy me」であるのに対し、PRや広報は「love me」、すなわち「私を愛してください」であり、PRの本質は、「『自分はこういう者です』ということを、まず相手に正確に理解していただくこと」であると述べています。
第3章「戦略的PRの威力」では、パブリシティ活動に必須なキー・メッセージの性質を、「メディアをコントロールしようというのではなく、あくまでも先方のために要点をわかりやすくまとめておく」ことであると解説しています。また、PRや広告、店頭展開、ウェッブなど、コミュニケーションというものが「トータルで消費者に影響を与える」ものであることが述べられています。
具体的な例としては、キシリトールをPRするために、ダニスコ社が設立した「日本フィンランドむし歯予防研究会」の広報事務局を務め、メーカーが直接発信することが法律上禁止されている、虫歯予防効果を伝える活動を行ったことが紹介されています。また、宮崎シーガイアの再生のために、プレス関係者以外に、「インフルエンサー」と呼ばれる、「リゾートやエステなどに関心の高い文化人やエッセイスト」を招待してシーガイアを体験してもらったことが紹介されています。さらに、国土交通省京浜工事事務所から受託した多摩川の「親水事業」に関して、川に迷い込んだアザラシである「タマちゃん」をPRするために、ホームページを開設したことが紹介されています。
著者は、PR戦略の立て方を、
(1)ニーズを特定する:「どんな目的で」「いつ頃までに」「何がしたいか」を明確にする。
(2)調査をする:今までメディアにどう取り上げられたか。
(3)アイディアを出し合う:キー・メッセージを絞る
(4)採用されたアイディアをもとに調査、準備をする:どうしたら実現できるか。
(5)メディアへ働きかける:実際に取材に来てもらう。
(6)臨機応変に対応する:予想外の事態に対応する。
第4章「危機管理のエッセンス」では、「クライシス」という言葉は、単に「危機」ではなく、「重篤な状況が良い方向または悪い方向へと向かう転換点」「重大な局面へと向かっている状況」という意味であり、「ターニング・ポイント」や「転換点」という意味に近いことを示し、「よりよい方向にうまくマネージして行こうじゃないか、という考え方、前向きの考え方が、いわゆるクライシス・マネージメント」であると述べています。そして、「世の中が一番許さないのは、『失敗』ではなく、『嘘』」であると述べ、日本ハムの食肉偽装問題を例に挙げています。
著者は、クライシス発生時のメディアへの対応のポイントとして、
(1)記者から逃げない
(2)クイックレスポンスを心がける
(3)情報開示の姿勢と誠意を示す
(4)答えは簡潔に
(5)「企業の論理」を主張しない
の5点を示しています。さらに、耳障りなフレーズとして、
・「ご承知のように……」
・「先ほども申しましたように……」
・「言うまでもなく……」
の3つをワースト3に挙げた他、態度に関しても、
・冗談を言わない
・名刺の扱い方など、ビジネス・マナーにも気をつける
・タバコを吸いながら取材を受けない
・開き直った態度、高圧的な態度を取らない
・身内への横柄な態度を人前で見せない
等を挙げています。
この他、手強い質問(タフ・クエスチョン)への対応として、
・仮定を含んだ質問
・意味ありげな質問
・複数の複合的質問
・意味ありげな沈黙
・ネガティブな質問
・第三者機関を使った質問
・憶測を聞く質問
・個人的見解を聞く質問
などに対しては、
「大変興味深いご質問ですが、それで思い出したのが……」
「大変重要なご指摘ですが、同じように重要なこととして……」
「忘れる前に申し上げたいことは……」
など、自分のフィールドに引き込むための決まり文句や、
「ここで一つだけ申し上げたいことは……」
「問題の本質がどこにあるかといいますと……」
「ここまでの話を整理しますと……」
等のフレーズで話の流れを転換させる方法を示しています。著者は、私たちが幼い頃から教わってきた「聞かれたことにきちんと答えるのがいい子だ」という教えが「対メディアに関しては必ずしもそれは正解ではありません」と強調しています。
さらには、会見場のセッティングに関して、カメラが会見者の後ろから回り込むことを防ぐために、「会見場のテーブルを壁ギリギリに置いて、カメラの位置を決めてしまう」という「仕切り」の重要性を述べています。また、雪印乳業の食中毒事件の際に、エレベーター前で社長に記者がぶら下がり、「私は寝てないんだ」という名シーンが生まれてしまった例を挙げ、「会見後に社長が揉みくちゃになるような設定をしてはいけなかった」と述べています。
本書は、自民党のPRの裏話を聞きたい、という目的には向いていませんが(そういう人は世耕議員の本を読んでください)、今まであまり知られていなかったPR会社の仕事について知りたい方、そして、記者会見に立つ可能性のある企業幹部の方にはぜひ読んでほしい一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の第5章「政党、国家の発信力」では、民主党の岡田元代表が、広報・PR関係者対象の講演会で「コミュニケーションというのは手段であって、目標ではない」と話していたのを聞き、「民主党の敗因を明確に知った気がしました」と語っています。
まさか、この部分までは自民党との契約に入っていないと思いますが、広報関係者に向かって、わざわざ反発を買うようなことを言ってしまうことは敗因の一つに違いないかもしれません。
■ どんな人にオススメ?
・自民党大勝の理由を知りたい人、ではありません。
■ 関連しそうな本
世耕 弘成 『プロフェッショナル広報戦略』 2006年09月22日
世耕 弘成 『自民党改造プロジェクト650日』
矢島 尚 『PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル』
石川 慶子 『マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル』
ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳) 『コーポレート・コミュニケーションの時代』 2006年10月23日
菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年09月07日
■ 百夜百マンガ
そういえば井上陽水の「最後のニュース」をエンディングに使っていたニュース番組がありましたが、スキャンダルで降板するアナウンサーにはそっけないようです。
投稿者 tozaki : 2006年10月25日 07:00
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