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2006年10月14日
情報の私有・共有・公有 ユーザーから見た著作権
■ 書籍情報
名和 小太郎
価格: ¥2625 (税込)
NTT出版(2006/5/25)
本書は、「21世紀初頭における著作権制度の状況を、ユーザーの視点で見直したもの」であり、「著作権のうっとうしさについて、あるいは著作権のもたらすリスクについて、これを真っ正面から扱ってみたい」という狙いを持ったものです。著者は本書を、著作権法の逐条解説でも、侵害回避用のベカラズ集でも侵害摘発用のマニュアルでもなく、「ユーザーの眼を通した著作権制度批評」と位置づけています。
著者は、知的財産権に関する原則を、
・原則1:創作者は創作物に対する独占権をもつ。
・原則2:原則1にいう独占権には制限がある。
という2つの原則が重なっているものと指摘しています。この上で、原則1と2の折り合いをつけるため、
・原則3:学問と技芸の進歩を促進する。
があることを述べています。
また、著作権におけるユーザーに対する配慮としては、
・配慮1:著作権それ自体について、それを禁欲的に定義している。
・配慮2:公共的な著作物について、それを保護の対象から外している。
・配慮3:著作物の利用について、それが公共的な利益にかかわる場合には、その保護を例外として制限している。
・配慮4:著作物について複数の利害関係者がかかわる場合、その人々の利害が衝突しないような秩序を設けている。
・配慮5:著作権の保護機関を有限としている。
の5点を挙げています。
本書は、著作権とメディアの発達を、20世紀初頭にトマス・エジソンによって発明された映画とレコードの登場からふり返っています。エジソンが、映像コンテンツの使い回しをもくろんで映写方式ではなくキネトスコープにこだわったこと、映画の基本特許を梃子にして競争者を抱きこみ「ザ・トラスト」と揶揄された映画特許会社を作り、映画館やフィルムレンタル会社から上納金を取り上げたこと等が紹介されています。
著者は、著作権制度を「あいまいな概念の上に組み立てられ」、かつ「明確な枠組みを埋め込んでいる」ものであると述べています。「著作物」の定義が明確ではないこと、一方で、(1)作品のどこを利用するのかという尺度、(2)作品をどのように利用するのかという尺度、の2つの枠組みは明確であることが解説されています。
また、著作権の国際条約であるベルヌ条約に関しては、
・原則1:内国民待遇。
・原則2:無方式主義。
・原則3:最低かつ共通の保護水準の設定。
の3つの原則があること、一方現在の世界標準は米国主導であり、「その米国においては権利強化の動きが激しい」ことに注意する必要があることなどが述べられています。
この他本書では、1993年にイスラエルの地方裁判所が命じた『死海文書』に関する著作権訴訟における史上最高額の罰金、2005年に米国議会図書館がパブリック・コメントを求めた「孤児になった著作物」に関する議論、ファイル交換プログラムをめぐる裁判、DeCSSをめぐる4つの論点(互換性は優越しないのか、公正使用ではないのか、表現の自由ではないのか、どんな条件が、表現の自由に優越するのか)、著作権をめぐる3つの利益集団(伝統指向型、市場指向型、ユーザー主導型)、学術出版をめぐる「シリアル・クライシス(逐次刊行物の危機)」、「科学の公共図書館(PLoS)」、ロバート・マートンの学術情報の4つの特性(累積性、共有性、公開性、先取性)、みなもと太郎の「元ネタを知られるとまずいのが盗作で、元ネタを知ってもらいたいのがパロディだ」、等について解説されています。
本書は、著作権制度について、ユーザーの立場から注目すべき論点を網羅している点で、読み物としてもコンパクトにまとまっている一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書のp.112には、「杉浦民平は1年1万ページ」という記載がありますが、これは、「1月1万ページ」の誤りではないかと思われます。1年1万ページだと、1日約27ページ。これでは、1冊読むのに10日くらいかかってしまいます。これを「豪語」するには相当の勇気が必要です。まあ、月に1万ページだと、1日333ページ、おおむね単行本1冊くらいですので、極端に多いとも思いませんが。
杉浦氏の話は、加藤周一著『読書術』に記述がありました。
■ どんな人にオススメ?
・著作権制度をめぐる論点を押さえておきたい人。
■ 関連しそうな本
福井 健策 『著作権とは何か―文化と創造のゆくえ』 2006年06月10日
豊田 きいち 『著作権と編集者・出版者』 2006年5月4日
ケンブリュー マクロード (著), 田畑 暁生 (翻訳) 『表現の自由vs知的財産権―著作権が自由を殺す?』 2006年04月23日
ローレンス レッシグ 『クリエイティブ・コモンズ―デジタル時代の知的財産権』
ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『コモンズ』
リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』 2006年02月04日
■ 百夜百音
【「いちご白書」をもう一度】 バンバン+ばんばひろふみ オリジナル盤発売: 2001
そもそもユーミンの手によるタイトル曲は知っていても、ネタ元の映画の方を知らない人が多いのではないかと思います。決して小田茜や辺見えみりが出ていたドラマの方ではないことに注意が必要です。
投稿者 tozaki : 2006年10月14日 17:00
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