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2006年10月22日
稀書自慢 紙の極楽
■ 書籍情報
荒俣 宏
価格: ¥1173 (税込)
中央公論社(1997/02)
本書は、「古今の名医がすべて見逃してきた病気」である「ビブリオマニア」なる病に冒された著者が語る、病に至るまでの著者の生涯と現在の症状自慢です。
著者は、愛書家がいかに「一般人に歓迎されない隣人である」かを、
(1)「あれは好きでやっていることだから!」と世間の同情を引かない。
(2)貴重所や稀書を目にすると野獣の本性をむき出しにする。
という理由を挙げて解説しています。
第1章「パルプ・マガジンにはじまる」では、著者が就職した時に、「趣味の本業」を隠すために考えたペンネームとして、
(1)志村みどり→父方の本家があった板橋区志村と実家のタバコ屋の「みどり屋」
(2)団精二→アイルランドの幻想作家ロード・ダンセイニ
(3)孝標(たかすえ)めのこ→『更級日記』の著者、菅原孝標女
の3つを考案するも、1は少女漫画家の妹(ドラえもんの「ロボ子が愛してる」のロボ子をデザインした人)のペンネームに取られてしまい、3は使う間もないままに会社を退社し、本名を使うようになってしまったことが語られています。また、貸本屋から借りた『少年ケニア』を返しそびれて親が弁償することになってしまい、証拠隠滅のためにドブ川に捨てた思い出を紹介し、「あんなに悲しかった思い出はない。同時に、本を持つことの悲しみの、ずしりとした重さにおそれおののいたことはない」と語っています。さらに、大学時代に海外の古書店から『ウィアード・テールズ』というパルプ・マガジンを150号以上も蒐集し、日本随一のコレクターになったはずが、実家の母親に処分されてしまった思い出が語られています。
第2章「趣味はどこから、版元から」では、中学時代に幻想文学翻訳家で、後に師と仰ぐことになる平井呈一氏に手紙を送り、「いやしくも英米文学を読もうという男が、翻訳をあてにするとは何ごとか。原書(ふきかえなし)でいけ、原書(ふきかえなし)で!」と活を入れられ、洋書集めをスタートしたこと、ダンセイニの『時と神々』を挿絵まで書き写し、自身で装丁したことなどが語られています。
第3章「倉庫に埋もれた夢」では、「志木の倉庫に貸本屋まんがの山がある」と聞きつけた著者と四方田犬彦氏が、倉庫中をひっくり返して水木、手塚、梅図などの貴重な貸本まんがを一気に手に入れたことが語られています。
第5章「ぼくのお師匠さんのこと」では、渋谷の喫茶店に現れた、「細身を浴衣に包み、銀色の総髪を揺らし」、「片手を袂に入れ、片手を前合わせに差し入れた、いなせな姿で、下駄をカラコロ鳴らし」、腰に手拭をぶらさげた「江戸時代の生き残り」に初めて会った思い出や、かつて師匠が佐藤春夫と永井荷風の門人であったこと、そして、師匠荷風が門人平井呈一を『断腸亭日乗』の中で悪し様に罵り、小説『来訪者』では、「家庭崩壊の源となった愛人になおも執念深く追われる、みじめな男」として描かれていることが語られています。
第6章「本を入籍しませんか?」では、「人に履歴書があって、その人の基本的データが一通り書かれているように、書物には書誌がある」として、「書誌学」という「本の目録をつくる問題にだけ心を集中した学問すら存在する」ことが述べられています。そして、著者が、洋古書の通信販売を通じて、目録愛読者になったことが語られています。
第7章「書誌に生きた諸氏」では、リファレンスブックを作る人を、「あつめて、つくって、しかも売れない、という<辛さ>の三重奏みたいな人生を歩むのが常だ」と述べています。そして、欧米でのリファレンスの充実を、アメリカで出版された『日本江戸期本草学書目録』の例を挙げて述べ、著者の次の仕事を、「欧米に負けない和書のリファレンス・ブックづくり」であると語っています。
第8章「四百年前の書物を見る」では、西洋の本づくりの4つの「紀元(エポック)、あるいは黄金時代」として、
(1)初期印刷本時代(インクナブラ):グーテンベルクが活字本を製作した15世紀半ばから百年間。
(2)ドイツ木版本黄金時代:アルブレヒト・デューラーが木版彫刻の技術を一気にレベル・アップさせた16世紀後半から百年間。
(3)バロック本黄金時代:ピラネージなど銅版彫刻とその印刷技術の大発展。
(4)フランス出版物の絶頂期:18世紀後半から19世紀中盤。
を挙げています。
この他、著者の元にイギリスのオランダの古本屋から、「見はからい」と称して、「この本、お前ならきっと欲しがるにちがいない、だから送る。どうだ、いいだろ?」と請求書とともに勝手に送りつけられることや、ヨーロッパでのオークションが、
(1)蝋燭法:1インチの蝋燭を点しておき、火が消える直前に買値を叫んだものが落札する。
(2)競り上げ方式:次々に高値をつけていく。
(3)オランダ方式:あらかじめ売り手がつけた値を少しずつ下げ、買い手から「買った!」の声がかかるまでつづける。
の3つの方式があったこと、などが語られています。
本書は、本好き、ことに古書好きの人ならば思わずうなずいてしまう一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
著者が紹介している『利根川図志』という江戸本の中で、犬吠埼の「あしか島」にほんとうにアシカがいる絵が掲載されていて、犬吠という地名も「アシカが吠えている」意味であるということが書かれていることが語られています。
「銚子観光協会」
当時いたニホンアシカはすでに絶滅し、今では海鹿島でアシカを見ることはできませんが、今でも銚子では犬吠埼マリンパークでアシカのショーを見ることができます。
■ どんな人にオススメ?
・本に生活スペースを脅かされている人。
■ 関連しそうな本
荒俣 宏 『本の愛し方人生の癒し方 ブックライフ自由自在』 2006年08月12日
荒俣 宏 『広告図像の伝説』
荒俣 宏 『帝都物語』
モーティマー・J. アドラー, C.V. ドーレン (著), 外山 滋比古, 槇 未知子 (翻訳) 『本を読む本』 2006年07月02日
加藤 周一 『読書術』 2006年07月23日
立花 隆 『ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論』 2006年07月29日
■ 百夜百音
【Ain't We Funkin' Now】 The Brothers Johnson オリジナル盤発売: 1996
実家のレコードを整理していたら出てきたのがコテコテのファンク者!
当時、江川ほーじんが影響を受けたベーシストということで聴きましたが、親指の皮が何度も分厚く剥けてしまうのが痛かったです。
投稿者 tozaki : 2006年10月22日 22:00
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