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2006年10月23日
コーポレート・コミュニケーションの時代
■ 書籍情報
ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳)
価格: ¥2940 (税込)
日本評論社(2004/10)
本書は、「企業が、多方面における情報の受け手であるコンスティチュエンシーズ(企業内外の人びと)が存在する世界に向けて示す企業の意見やイメージの双方向メッセージの総体」である「コーポレート・コミュニケーション」が、「重要な意義を持つにもかかわらず、軽視される傾向にあるという不均衡を明らかにし、コーポレート・コミュニケーションという分野をわかりやすく解説し、企業の収益に与える根源的な影響力の大きさを実証する」ことを目的としたものです。
第1章では、コーポレート・コミュニケーションが、コーポレート・レピュテーション、企業の意見広告、社内コミュニケーション、投資家向けコミュニケーション、対政府コミュニケーション、メディア・リレーションズ、危機発生時の情報伝達などを包含する概念であることが述べられています。そして、企業には、「自らの主張をはっきり打ち出すとともに、それをしっかり聞いてもらえるよう努める必要がある」とし、「効果的な主張とイメージ作りを理解すること」こそが本書の主題であると述べています。
第2章では、「パブリック・リレーションズの父」という称号を巡って争った、アイビー・レッドベター・リーとエドワード・L・バーネイズを取り上げ、彼らパイオニアが取り組んできた、
・企業が自らのイメージを作り上げ、メッセージを発信する際の背景にある社会的、政治的、経済的、文化的な風潮を広く把握する。
・「最適の時期」を捉え、「コーポレート・コミュニケーションに適した状況」を創造する。
・コンスチチュエンシーの心理を理解し、効果的に活用する。
・コミュニケーション手段の最良の組合せを見つけ出す。
・コーポレート・コミュニケーションの倫理的側面について責任を負う。
という5つの問題について論じています。
第3章では、GE社のジャック・ウェルチなどの例を挙げ、「もっとも効果的な広報活動部門を設けている企業が持つ大きな特長は、単に報告系統だけにとどまらず、CEOへの自由なアクセスから生まれる一貫性と信頼性にある」ことを紹介しています。また、CEOが主たる改革の先方を務めるときには、「フェース・トゥ・フェース・コミュニケーション」が、「いかにコストがかかり、非効率であったにせよ、幅広い信用を勝ち得、関係を構築するために、コーポレート・コミュニケーションの中心に位置づけられなければならない」と述べています。
さらに、コーポレート・コミュニケーションの専門家が身につけるべき3つの資質として、
(1)コーポレート・コミュニケーションと主な戦略的構想との歩調を合わせる能力。
(2)会社の戦略と社員同士が協力し合うという企業文化を両立させる能力。
(3)危機時にコミュニケーション・パワーを活用する能力
の3点を挙げています。
また、アメリカの主要企業のほとんどが、コーポレート・コミュニケーションの職務の中に社員コミュニケーションを組み込んでいる傾向を、「今日の企業の中で、高度なコミュニケーション技術が必要という点で、社内のコンスチチュエンシーズと外部のコンスチチュエンシーズにそれほど大差はないという認識が広まりつつあることを示している」と述べています。
第4章では、「組織にとってのプラスとなるレピュテーションをもたらすもの」として、
(1)企業が形成するアイデンティティ
(2)一般大衆が受け取るイメージの首尾一貫性
(3)企業のアイデンティティと、コンスティチュエンシーズが企業に対して抱くイメージとの整合性
の3点を挙げています。そして、企業名やロゴを変えることによって蓄積してきたイメージを一気に失う例として、米国でのダットサンからニッサンへのブランド変更の例を挙げています。
また、アイデンティティが危機的状況を脱する際に大きく貢献する例として、ジョンソン&ジョンソンのタイレノール事件の例を挙げ、コンスチチュエンシーズは、「確固たるイメージに魅力を感じるばかりでなく、会社への信頼、すなわち会社が語るストーリーが信用に足るという感覚を持つこともある」と述べています。
著者は、「私たちはアイデンティティとイメージがもたらす多大なる影響を意識し、この重要な資源の効果的な運用方法を学ばなければならない」と主張しています。
第5章では、企業広告の機能として、
(1)企業の新しいイメージを形成する、または古いイメージを一新する。
(2)企業の反映にとって重要な問題について、企業の立場を前面に打ち出す。
(3)企業に社会的存在意義を与えることで、企業の地位向上を図る。
(4)企業の財務状況を強化する。
という4つの機能があること挙げた上で、そのメリットとして、「会社全体を通じて一貫したストーリーを語ることができるため、規模の大きい組織にとっては地理的な分散や事業の多様性といった制限を越えて、主なコンスチチュエンシーズを念頭に置きながら、イメージを簡素化したり、企業の統合を支える各要素を紹介することができる」と述べています。
また、その課題として、
・広告の適切な展開
・力強いメッセージを伝えることよりも、見る側の想像力を書きたてること
・ニュース発表のための企業広告キャンペーンによってプラスの情報を流しても悪い評判が払拭できないという現状
を挙げています。
第6章では、顧客配慮を十分尊重してきた企業経営者が、「顧客と前線で直接的なやり取りを行う社員のほうが、コンスチチュエンシーズよりも事業の成否との関連性が深いことを実感させられるようになってきた」ことを指摘し、「社員ケア(enployee care)とは、社員との間に永続的で柔軟なパートナー関係を確立すること」であると述べています。
著者は、社員ケアについての実践的教訓として、
(1)適切なリーダーを選ぶ
(2)社員メッセージを伝えるための適切な準備を行う
(3)絶え間なく繰り返す
(4)社員ケアは、効果的な企業ケアに直結している
の4点を挙げています。
第8章では、「対政府広報業務」が、「事実上どのような企業にとっても、地方と国の双方のレベルで議員とのつながりが維持されるという点で利益となる」と述べるとともに、企業フィランソロピーが、「体系的な管理を通じてグローバルとローカルの両レベルのコミュニティに寄与することにより、コーポレート・レピュテーションを高めるという効果がある」として、エイボンとマイクロソフトの例を紹介しています。
第9章では、メディア・リレーション部門が、「日常的に、企業にとってもっとも重要な数多くのコンスティチュエンシーに向けて情報を発信する主な役割を担うと同時に、企業全体のレピュテーションに絶大な影響力を及ぼす」ものであることを述べた上で、メディア・リレーションズのステップを、
(1)企業の戦略に従ったメディア部門を設置し、内外の専門家を上手に組み合わせることからはじめる。
(2)メディア戦略の成功と失敗の双方を記録する。
(3)どのレポーターがあなたの会社を担当しているか調べ、不意打ちを食らう前に対応策を準備する。
(4)過去のインタビューを調べ、想定される質問への回答を用意して、脅迫にも対応できるようにする。
の4つ挙げています。中でも、会社の記事について担当記者の考え方を把握するために、「どんなジャーナリストがどんな記事を書いているのかという調査」が重要であることや、インタビューの準備として、
(1)メディア・リレーション担当者と協力して、これまでの実例を参考にしながら記者やプロデューサーの好みのスタイルを大まかに分析しておく。
(2)インタビューを受ける人が、聞き手の見解を明確に理解しておく。
(3)記者が尋ねそうな質問をあらかじめ想定し、こうした問いに対する回答を用意しておく。
の3点を挙げた上で、
・もっともな重要なポイントはインタビューの冒頭で明確に主張する。
・質問に対する答えは、可能な限り簡潔にまとめて説明する。
という注意事項を挙げています。
第10章「危機発生時のコミュニケーションのポイント」では、企業がおかれた危機的状況の特長として、
・寝耳に水
・事態の急速な展開と悪化
・パニック状態
・激しい感情に伴う不合理で無謀な反応
・危機発生時のコミュニケーション計画を立てていても生じる社内コミュニケーションの混乱
・マスコミによる集中砲火
・レピュテーションと売上げの低下
を挙げています。そして、「早い時期に効果的な危機緩和策を講じておけば、もっとも悲惨な危機に瀕しても事態を好転させることができる」例として、ジョンソン&ジョンソンのタイレノール事件を取り上げています。
著者は、危機管理の準備として、
・準備:危機発生に備えて、危機対策の組織をどのように編成するか。
・文書化:公式の危機管理マニュアルに対応するように組織構成をどのように作り上げるか。
・実行:実際に危機に遭遇したときに、プランをどのように実行し、いかに効果的なコミュニケーションを維持するか。
の3点を挙げています。
また、危機管理対策を講じる債のステップとして、
・ステップ1:問題の定義
・ステップ2:関連情報の収集
・ステップ3:コミュニケーションの集中管理
・ステップ4:早期かつ頻繁なコミュニケーション
・ステップ5:メディアの立場で考える
・ステップ6:影響を受けるコンスティチュエンシーに直接働きかける
・ステップ7:業務を継続する
・ステップ8:二次的な危機の発生を避けるために即座に計画を立てる
の8つのステップを示しています。
本書は、企業の広報部門にとってはもちろん、経営者、特に危機発生時には記者会見に望まなくてはならないような経営幹部にとっては一読しておくべき一冊です。
■ 個人的な視点から
コンピュータマニアには嫌われることが多い、マイクロソフトのビル・ゲイツですが、本書では、世界最大の寄付企業としてのマイクロソフト社と、2001年に世界最大の寄付団体となったビル&メリンダ・ゲイツ財団が取り上げられています。
「町田洋次の社会起業家・エッセンス」では、社会起業家に投資する戦略のうまさを評して、「ビルゲーツもノーベル平和賞を受賞する時が来るんだと思った」と述べられています。
「ムハマド・ユヌス:ノーベル平和賞」
「ビル・ゲイツ引退の意味」
■ どんな人にオススメ?
・広報を単なる宣伝と混同している人。
■ 関連しそうな本
世耕 弘成 『プロフェッショナル広報戦略』 2006年09月22日
石川 慶子 『マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル』
矢島 尚 『好かれる方法 戦略的PRの発想』
矢島 尚 『PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル』
Shel Holtz (著), 林 正, 佐桑 徹, 浦中 大我 (翻訳) 『実践戦略的社内コミュニケーション―社員に情報をいかに伝えるか』 2005年10月06日
■ 百夜百マンガ
デビュー作が9年間の長期連載となったためか、2作目は編集者がほとんど作ったような設定で、その安易さがB級感を醸し出していました。『まかり通る』の例のように、最初の作品が長期連載しちゃうと、連載を続けることはできても、新しいヒット作を作るための試行錯誤の経験がないので、こういうときの編集者は辛いと思います。
投稿者 tozaki : 2006年10月23日 22:00
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コメント
戸崎将宏様
初めまして。監訳者の矢野充彦です。
今般、行政経営百夜百冊を拝見させて戴きました。
非常に分かりやすくサマリーされていて読者は参考になると思います。
小職は今、麻布大学でコーポレート・コミュニケーション論を学生に教えながら、このルーツであるパブリック・リレーションズをベースに活動をしている会社で顧問をしています。
最近は各企業においてコーポレート・コミュニケーションのセクションを設置するケースが多くなり、CSR部門、コンプライアンス部門、との統合を求め情報の一元化を図る動きが出てきていることは先生もご承知の通りでございます。
このコーポレート・コミュニケーションの思考は非常に重要で、特に倫理がベースになりこの思考の展開がある点ご理解を賜りたいと思います。
今般、取り上げて戴きまして厚く御礼を申し上げます。
今後とも宜しくお願いいたします。
矢野充彦拝
投稿者 矢野充彦 : 2007年04月23日 16:02

【ポリ公マン 】