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2006年11月02日
「小泉改革」とは何だったのか―政策イノベーションへの次なる指針
■ 書籍情報
【「小泉改革」とは何だったのか―政策イノベーションへの次なる指針】
上村 敏之, 田中 宏樹 (編著)
価格: ¥1995 (税込)
日本評論社(2006/6/1)
本書は、「改革」という言葉をもっとも頻繁に使った首相であり、「戦後の政治史上まれにみる『躍動感』に満ちた政策運営がなされた」小泉政権について、
(1)過去の「小泉改革」の評価
(2)「ポスト小泉改革」の指針を示す
という2つの問題意識から執筆されたものです。
第1章「政策過程改革」では、「小泉改革」の検証には、「経済政策だけに限定するのではなく、政治と製作過程を明らかにする必要」があると述べた上で、内閣機能の強化を目指した橋本行革の目玉の一つであった経済財政諮問会議を、竹中大臣が効果的に活用したことを指摘し、その特徴として、情報公開の積極的な実施と民間人ペーパーによって大まかなプロセスが用意されることを挙げています。そして、その役割として、
(1)アジェンダ設定機能
(2)予算編成機能
(3)閣議の代替機能
の3つの役割を果たしていることを指摘しています。
第2章「郵政改革」では、郵政改革の本質を、「郵政三事業の中でも、郵便貯金と簡易保険に集約される金融事業のジリ貧状況を食い止め、持続可能なビジネスモデルとしていかに再生させるかという、すぐれて『経営的な問題』であったと理解すべき」と述べています。そして、郵政改革の意義を全うするために、
・膨大に膨れ上がった公的債務を着実に減らし持続可能な財政運営を目指すこと。
・それによって資金調達における金融二社への過度の依存状況を打破すること。
の2点を挙げています。
第3章「特殊法人改革」では、「政府のリストラ」をたんなる「看板の掛替え」に終わらせてはならないと述べた上で、道路公団の「民営化」が不十分なものにとどまった理由として、
(1)「民営化」が経営の自立性を確保する形で行われなかった。
(2)高速道路整備事業全体の中で道路公団が果たす役割という視点からの考察が不足しがちであった。
(3)「民営化」検討の行われた委員会の運営が、国土交通省からの出向者を中心とする事務局に依存していた。
の3点を挙げています。
第4章「不良債権処理と金融システム」では、不良債権処理が進んだ背景として、「直接、間接に投入された公的資金のほか、ゼロ金利政策、量的緩和政策という、従来の常識では考えられなかった超緩和的、非伝統的な金融政策により、無コストの経営原資を金融機関に提供した」ことを指摘しています。また、りそな銀行が救済されて足利銀行が見捨てられた問題に関して、「厳正な監督、金融再生、いずれの面においても、金融庁の過度の裁量は許されない」と述べています。
第5章「公的年金改革」では、年金不信の本当の原因が、「日本の公的年金制度の構造と、これまでの公的年金改革の歴史にある」とした上で、年金給付の主な抑制手段として、
(1)給付乗率のカット
(2)支給開始年齢の引上げ
(3)スライド率の引き下げ
の3点を解説しています。そして、「2004年改正は、危機的状況にあった公的年金財政を健全にしたという点で、国内外から高い評価を得ている。いわば、財政面における一定のルールを提示したことが、2004年改正の貢献である」と評価しています。
第6章「財政再建と税制改革」では、小泉政権下の経済・財政構造改革において浮き彫りとなった点として、「経済活性化のための税制構築と財政再建の二兎を追うことの難しさ」を挙げています。そして、1000兆円規模の政府債務に関して、
・わが国の経常収支は大幅な黒字である
・国債・地方債は国内の金融機関によって安定的に消化されている
として楽観視する向きもあるとした上で、「長期金利の上昇が国や地方の予算に計上する利払い費に与えるインパクトがどれほどのものか少し見込みが甘くないだろうか」と疑義を呈しています。
第7章「地方財政改革」では、財政危機の原因を、「90年代以降の不況によって生じた税収不足という循環的な問題」にあるのではなく、「国から地方への補助金制度にほかならない」と指摘し、「地方交付税と国庫支出金がいかにして地方の自立を阻んでいるか」を解説しています。まず、地方交付税に関しては、
・財政調整機能:地域間の税収機会の不平等を調整する。
・財源保障機能:国が決めた国民生活水準の必要な費用を補償する。
の2つの機能を解説した上で、その問題の一つとして、「親が子に必要な生活のレベルをバブルと不況に乗じて大きく引上げてしまった」ことを指摘しています。また、「補助金制度を通じて地方に多くの無駄が生まれる仕組みを正そうとする改革」であったはずの「三位一体改革」の方向性は評価できるものの、国庫支出金改革が、中央省庁の権限の温存が最優先される形で決着したことを指摘し、2004年度に約1兆円削減できた地方交付税も、2005年度には地方の猛反発にあって削減すらできなかったとして、「小泉『三位一体改革』は、規模、質ともにまったく改革の名に値しない」と批判しています。
第8章「地域経済改革」では、1975年には47都道府県のすべてで増加していた人口が、2004年には47都道府県中33道県が人口減少の現象に陥っていることを指摘するとともに、民間活力を使った行財政改革への取組みの意義を、「単純な価格競争による費用削減だけではなく、多様な民間事業者が参入することによって、サービス水準が向上することにある」と述べています。
第9章「知的財産改革」では、「失われた10年」において、「もの造り文化が没落したのではなく、むしろ、それらを有効活用する構造に欠陥があった」とした上で、小泉改革が「ソフトパワー構造改革」を目指していたことに言及しています。
第2部「人口減少国家 日本の将来」では、小泉政権がこれまでの政権と異なっていた点として、「株価がこれだけ落ち込んでも、積極的な財政政策を採用しなかったこと」にあるとして、小泉政権の「構造改革」へのこだわりを指摘しています。そして、これまでの「分配」型システムでは、「人口減少によってもたらされるさまざまな問題を解決することが困難である」として、「分配よりも効率性を重視したしくみ」である「効率」型システムへの移行こそが小泉改革の本質であるとし、それが「官から民へ」「小さな政府」という言葉に表され、「『機会の平等』が重視され、平等な所得ではなく、所得を得るチャンスが平等に与えられることが望ましくなる」と述べられています。
本書は、6年近い小泉政権が終了し、新しい方向を模索する今の時期にこそ重要な一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書で象徴的だったのは、小泉改革のエンジンとして積極的に改革を進めてきた経済財政諮問会議のトップが、竹中→与謝野と拘置することによって、その意味合いが大きく変わったということです。
このことは、政権自体のトップが変わったことによって、それがいい方向であれ悪い方向であれ、「小泉改革」自体が上書きされてしまう可能性があることを示唆しているのではないかという気がします。
■ どんな人にオススメ?
・新政権になって、これまでの5年間を総括したい人。
■ 関連しそうな本
高瀬 淳一 『武器としての「言葉政治」―不利益分配時代の政治手法』 2006年08月10日
読売新聞政治部 『自民党を壊した男小泉政権1500日の真実』 『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』 2005年07月13日
世耕 弘成 『プロフェッショナル広報戦略』 2006年09月22日
星 浩 『自民党と戦後―政権党の50年』 2006年06月01日
赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光 『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』 2005年01月27日
■ 百夜百マンガ
とんちんかんのイメージの強い人ですが、その印象の強さゆえに、ちょっと大人向けに書こうとすると苦労するみたいです。この辺のバランスは難しいですね。
投稿者 tozaki : 2006年11月02日 08:00
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