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2006年11月17日

私はどうして販売外交に成功したか

■ 書籍情報

私はどうして販売外交に成功したか   【私はどうして販売外交に成功したか】

  フランク・ベトガー (著), 土屋 健
  価格: ¥1223 (税込)
  ダイヤモンド社(1982/08)

 本書は、デール・カーネギーが、「今日までに読んだ販売術に関する著書のうちで、もっとも有益で、最も示唆に富んだ労作である」と賞賛している生命保険の外交員フランク・ベトガーの自叙伝です。
 第1章では、著者が、プロ野球選手だった青年時代に、「お前はのろまだからクビにする」と解雇されてしまいますが、地方のプロ野球リーグに移ってからは、「誰からもノロマだなどと非難されないよう」に、「つとめてピチピチした動作、生き生きした言葉」で張り切り、「あたかも100万ボルトの電池を背負っている者のようにキビキビと活躍」します。著者はそのことで、
(1)熱中したために恐怖心をまったく克服してしまった。
(2)超人的な熱心さが同じチームの選手に影響を与え、彼らまでプレイに熱中させた。
(3)かえって体の調子がよくなった。
という3つの事実に出会ったと述べています。
 その2年後には、セントルイス・カージナルスの三塁を守り、月給も30倍以上になりますが、守備中に腕を折ってしまうという事故に見舞われます。著者は、「筆舌にも尽くせぬ悲惨なこと」と述べる一方、「むしろこれは、私の生涯にとって最大の幸福をもたらす出来事」だったと、その2年後にデール・カーネギーの話し方教室に入会し、「火の玉のようになって野球というものに打ち込んだあの情熱をそのまま、今度は販売の仕事に打ち込もうと決心」したことを語っています。著者は、「これこそ自分としてできうる唯一のことだ」と自分に言い聞かせるために、「情熱の人となるには、情熱を込めた行動をせよ」というモットーで、30日間続けることを提案しています。
 第2章では、著者に、「過去31年間の私の生涯に、非常に深い感銘と、永久に忘れがたい影響を与えた」保険会社のタルボット社長の言葉として、販売という仕事は、「できるだけたくさんの人に面会する」ことに尽きる、という極めて当たり前な言葉を紹介しています。そして、著者が自分自身の行動を記録することで、「私の時間の50パーセントまでは、契約高の7パーセントに相当する取引を得るために費やされていた」ことに気づき、1訪問当り2ドル30セントだった収入を、4ドル27セントまで増加させることに成功したことが語られています。
 第3章では、「多数の聴衆の前で平気でスピーチができるだけの度胸がつくと、個々の人たちと面接して対談する場合にも、人おじをしなくなるものだ」という発見が紹介されています。
 第4章では、自分の行動を記録することを述べ、これに対し、「私はこのようなスケジュールに生活を縛られる仕事など真っ平だ」という人がいるが、「あなたは好むと好まざるとにかかわらず、すでにスケジュールに縛られた生活の中に」あり、「ただそれが計画性があるかないかの相違だけだ」と述べています。
 第7章では、どんな製品を販売する場合でも利用できる技術として、
(1)面会の約束をすること
(2)準備をすること
(3)主なる論点は何か
(4)主な論点を書き留めておくこと
(5)質問を発すること
(6)ダイナマイトを爆発させること
(7)恐怖心を起こさせること
(8)信用を得ること
(9)相手の能力について正直な評価をすること
(10)必ず商談が成立すると信ずること
(11)対談中にはあなたという言葉を使うこと
の11点をを挙げています。
 第8章では、「独断的なもののいい方をできるだけ少なく」するため、「……と思いますが、あなたはどうお考えになりますか」という習慣をつけることが語られています。
 第15章では、セールスマンに必須のテクニックである、相手の名前の覚え方として、グループの名前を覚えるときには、「その人たちの名前を上手く組み合わせて、ひとつの文章をつくる」というテクニックが紹介されています。さらに、人と名前と顔を覚える原理として、
(1)印象:相手方の名前と顔について明瞭に印象を心に刻み付けること。
(2)反復:短い間隔をおいて、相手方の名前を何度も口の中で繰り返していってみること。
(3)連想:生き生きとして印象と名前とを結び付けて覚えること。
の3点を挙げています。
 第17章では、人怖じを克服するためには、「それを率直にその人の前で認める」という原理を紹介し、世界一の名優や多くの成功者が同じような人怖じに悩まされていることを語っています。
 第19章では、著者が「長い間かかって体得した原理」として、「まず面会したくなるように仕向け、面会の日時を約束することに努力し、しかる後に商品を売る努力をすべきである」ことを述べています。
 第27章では、フランクリンの13項目として、
(1)節約
(2)沈黙
(3)秩序
(4)決意
(5)倹約
(6)勤勉
(7)誠実
(8)正義
(9)中庸
(10)清潔
(11)平静
(12)純潔
(13)謙遜
を紹介しています。
 最後に著者は、読者に対し、40歳を過ぎると、瞬く間に年をとってしまうので、「あまりのんびりと構えていると、とんでもないことになるよ」と忠告しています。
 本書は、著者と同じ販売外交員にとってはもちろん、人と面会して何かを買ってもらおうという仕事をしている人にとっては得るところの大きい一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書の「解説」は、元冬季オリンピック銀メダリストで、アメリカン・ホーム保険会社代表取締役の猪谷千春氏が改訂ますが、その中で、ある会社の威圧的な態度の社長と面談しているときに、「このオヤジにスキーをはかせて、急斜面に立たせてみたらどうだろう?」と、「オヤジのへっぴり腰で滑る姿を想像したら、急に気持ちがラクになった」と語っています。このことは、自社の外交員に強気の営業をけしかける(昔、新聞拡張団と見まがうような保険外交員も見たことがあります)には痛快なエピソードでしょうが、広く世間一般にこのことを書くということは、猪谷氏及び氏の会社の外交員は、顔では笑っていても、心の中では、へっぴり腰で急斜面を滑る惨めな姿を想像していると思われても仕方ありません。少なくとも、ベトガーが、人怖じを克服するにはそのことを率直にその人の前で認めること、と書いている内容とはまったく正反対のように思われます。
 その意味で、本書の著者と解説者は、同じ保険外交の世界で生きる人間という共通点はありますが、その語っている内容は整合せず、解説として載せるのは不適切ではないかとさえ思います。
 また、著者は、ある青年に対し、「朝寝坊で長生きする人は割合に少ないし、またそれで成功した者はほとんどいない」というベンジャミン・フランクリンの言葉を引用し、「『六時クラブ』に入ったらどうだね?」と目覚し時計の針を1時間半ほど早くセットすることを勧めたエピソードを紹介しています。
 朝7時半に起きている人が、6時に起きれば、1時間半の自分の時間を作ることができます。夜寝る前に多少夜更かししても、一日の疲れでクタクタになった頭に生産性は期待できません。ましてや、ビール片手にスポーツニュースをボンヤリ眺めているなどは、浪費以外の何物でもありません。夜10時からのニュース番組を見ないで、すぐ床に着けば、「四時クラブ」に入会することも可能です。ちなみに今日は、2時に目が覚めてしまったのですが、さすがに「なんでもできる!」というわけには行かないようで眠いです。

■ どんな人にオススメ?

・他人に何かしらを買ってもらう仕事をしている人。


■ 関連しそうな本

 ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』 2006年02月16日
 マックス H・ベイザーマン (著), マーガレット A・ニール (著), 奥村 哲史 『マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋』 2005年07月04日
 榊 博文 『説得と影響―交渉のための社会心理学』 2006年02月23日
 デール カーネギー (著), 山口 博 『人を動かす』 2005年07月11日
 鈴木 有香 (著), 八代 京子(監修) 『交渉とミディエーション―協調的問題解決のためのコミュニケーション』 2005年09月30日
 中島 孝志 『仕事の道具箱』


■ 百夜百マンガ

天水【天水 】

 刑務所にはいった漫画家として有名になってしまった人ですが、元々は一部マニアから絶大な支持を受けていました。誰にも似てない独自の世界を持ち、商業誌の中で異彩を放っていました。

投稿者 tozaki : 2006年11月17日 07:00

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