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2006年11月13日

PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル

■ 書籍情報

PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル   【PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル】

  矢島 尚
  価格: ¥1575 (税込)
  東洋経済新報社(2006/07)

 本書は、40年前から日本のPR会社の草分けとして活動を続けてきた著者が、「PR=宣伝」と誤って定着してしまった「PRとPR会社についての正しい認識が広がること」を目的に書かれたものです。
 序章「脚光を浴びるPR会社」では、近年の企業不祥事の例を列挙し、「クライシスが発生したときにPR会社に相談するのはいまや常識になりつつある」と述べ、クライシス時のPR会社の活動として、
・状況の把握
・拡散の防止
・記者会見のセッティング
などを行うほか、「立ち居振る舞いや言葉遣いについて、模擬記者会見などのトレーニングを短時間で行う」事まで含めたメディア対応のアドバイスを行うことが述べられています。
 また、2005年総選挙での自民党大勝の原動力として報じられた政党のPRに関しては、まず民主党が2003年総選挙で米国系のフライシュマンヒラードジャパンと契約して躍進につながり、遅れて2005年総選挙では自民党が著者の会社であるプラップジャパンと契約し(本書では、「守秘義務の関係から、私はそれを肯定も否定もできない」としていますが)、記者会見時の壁のロゴを「改革を止めるな。」に変更し、本格的なプレスリリースを出すなどによって、圧勝に終わったことが述べられています。著者は、「細分化する大衆、多様化するメディアという状況は今後ますます進行し」、その中での選挙戦には、「大衆の動向をつかむための世論調査に優れ、あらゆるメディアを知り尽くしている専門家の存在が不可欠」であると主張しています。
 さらに、日本では、「PR」という言葉が、「宣伝・広告、プロモーション、アピール」という意味で捉えられていることに異議を唱え、「パブリック・リレーションズは、『行動』と『コミュニケーション』という2つの要素から構成される」というハロルド・バーソン氏(米国のバーソン・マーステラ社創始者)の定義を紹介しています。
 第1章「戦略的PRの時代」では、プラップジャパンの活動の紹介として、「ぺディグリー」や「カルカン」で知られるマスターフーズが、集合住宅でペットを飼うことの社会的認知を広めるため、「コンパニオンアニマルリサーチ」という非営利団体を設立し、ペット飼育可能な分譲マンションを増やしていったこと、日本ではほとんど知られていなかったキシリトールを薬事法に触れずにPRするために、マスコミ各社にキシリトールの情報を流してメディアに取り上げてもらったことなどの事例が紹介されています。また、医療分野での広告の規制緩和の流れを受け、医療法人がPR会社を利用するケースが増えていることなどが紹介されています。
 第2章「メディア対応の重要性に気づき始めた経営者」では、不祥事のすぐ後に、「メディア対応のまずさから、二次クライシスに発展するパターン」を紹介し、そのポイントとして、
(1)何を話すかを準備する:現時点の情報をはっきり述べる。記者は、現時点での情報を開示しようとしない時に厳しく追及してくる。
(2)情報を小出しにするのはタブー:公表すべき情報は最初からきちんと話す。
(3)仮定の質問には要注意:原因が確定していない段階では、可能性はすべて平等に扱うべき。
(4)適切なスポークパーソンを選ぶ:企業のトップが謝罪することは大切だが、事実関係を把握していないと逆効果になる。
の4点を挙げ、「企業にできることは少しでも二次クライシスを回避するために、メディアや大衆のことを熟知し、想定外の問題が発生しないように体制を整える」ことであると述べています。
 また、記者会見でトップが身につけている高価な腕時計やカフスなどに気を使うことに関して、「社長にものがいえない企業風土が邪魔をして、思ったことがいえない」ケースが多く、「外部の人間だからこそできること」が多いと述べています。
 そして、凝り固まった企業風土を改善するために、「第三者の存在と専門のプログラムがどうしても必要」として、「社内コミュニケーションの問題に対してもPR会社は重要な役割を果たしている」と述べています。具体的な社内コミュニケーション改善プログラムとしては、「ワークプレイスコミュニケーション」というプログラムの概要を、
(1)若手社員を十数名集めて、タスクフォースをつくり、他のシャインにインタビューをして、一般社員の声を拾い上げ、組織の抱える問題点を顕在化させる。
(2)1ヵ月後に、問題点の抽出と優先順位をつける作業を行う。
(3)経営トップに対するプレゼンテーションとディスカッションを行う。
の3段階で紹介しています。
 第3章「アメリカで生まれたPRの歴史」では、第一次世界大戦時に米国政府が「何百人ものジャーナリストやPRマンを徴用し」、「敵対するドイツ、オーストリアなどのイメージダウンにつながる情報を盛んに流した」ことを取り上げ、「PRの手法というのは、よくも悪くも政治と寄り添う形で成長してきたものであり、第一次世界大戦はPRがいかに効果的で、情報に対して大衆がいかに従順であるかを証明する出来事」だったと述べています。また、このことは、ヒトラーにも大きな影響を与え、「宣伝を的確に利用することで、大きな成果が得られることを証明したのは、戦争である」と著した彼は、宣伝活動に娯楽性を持たせること、単純なスローガンによって大衆への浸透度を高めることなど、「実に巧妙」なプロパガンダを行ったことが述べられています。
 さらに、第二次世界大戦後のテレビ時代を象徴する出来事として、1960年の米国大統領選挙での初のテレビ討論の印象が勝負の分かれ目になったことを取り上げ、ニクソンがスーツの色やヒゲのそり忘れなどのために、弱々しく不健康な印象を与えたことで、ケネディに逆転されたと解説しています。
 この他、1990年のイラクのクウェート侵攻時に、「クウェート市内の病院に乱入してきたイラク兵が保育器に入っていた乳児を次々に取り出し、床にたたきつけた殺害した」という15歳のクウェート少女が上院で行った証言が、PR会社ヒルアンドノウルトンによる捏造であったことが明らかになった事件や、1992年のボスニア紛争時に、ボスニア側がPR会社を雇い、「セルビアがいかに残虐かを世界にPRすることによって、悪いのはセルビアで、ボスニアは被害者であるという構図を作り上げ」た例を取り上げています。
 第4章「独自の道を歩んだ日本のPR業界」では、日本における草分けである著者ならではの実体験にもとづいた「日本PR業界史」が語られています。著者がこの業界に入った40年前は、「PRという言葉自体がまったく認知されておらず」、メディアに情報提供を行っても、パブリシティという行為そのものを一から説明しなければならなかったこと、雑誌のプレゼントコーナーに「広告のおまけ」として商品をのせてもらうことからPRが認知されたため、「PR=プレゼントコーナー」という図式が出来上がってしまい、「PRが無料のものだと誤解」されたことなどが述べられています。そして、「企業と社会との間にさまざまな問題」が起こった1990年代中頃から、PR会社が認知され始めたことが解説されています。
 また、日本でPR業界が発展しなかったもう一つの理由として、企業の「自前主義」を挙げ、企業での広報の位置づけは、新聞記者の接待や社内報の作成くらいにしか考えられておらず、「社内において、広報が担う役割が不明確だったり、真の重要性が認められていないのだから、PRという経営機能が育つはずも」なかったと解説しています。そして1990年代に入り、企業と社会の関係が変化し、広報部門が重要性を増し、人気の「3K部署(国際、企画、広報)」と見られるようになった反面、企業のトップシークレットを扱うからこそアウトソーシングできないという理由で自前主義が強固になったことが述べられています。
 第5章「多岐にわたるPR業務の内容」では、PRが、
・マーケティングPR:商品そのもののPR
・コーポレートPR:企業自体のPR
の2種に大別できることや、M&A後の社内コミュニケーションの問題もPR会社の重要な業務であること、メディアに対する訂正要求においては、絶対的な事実の相違を突いていくやり方をとることなどが述べられています。
 第6章「PR会社の上手な活用法」では、PR会社には、総合PR会社と専門PR会社があり、特にアメリカではこの二極化が進んでいること、PR会社との契約時には、「企業がPR会社に何を求めているのかをはっきりさせて、社内で意思統一を図っておくこと」が何よりも大切であることなどが解説されています。
 本書は、「PR会社」という聞きなれない業態を理解する上での入門書として、PR会社を活用したい企業・官庁や、この業界に就職したいと思っている人には最適のガイドブックです。


■ 個人的な視点から

 本書の全般的な印象としては、「中身が薄い」という印象を受けました。よく、刑事事件で出てくる「犯人しか知りえない事実」ではないですが、「著者でしか語れないこと」が少ないように思われます。PR会社の全般的な説明やメディア対応、PRの歴史などは、社員に書かせたんじゃないかと思うほどの平板な感じで、主語のないシンクタンクの報告書のようです。
 しかし、第4章「独自の道を歩んだ日本のPR業界」の部分には、業界の草分けとして語ることができる歴史が語られていて、この章こそが本書の一番の価値ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・日本のPR業界の歴史を知りたい人。


■ 関連しそうな本

 矢島 尚 『好かれる方法 戦略的PRの発想』 2006年10月25日
 ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳) 『コーポレート・コミュニケーションの時代』 2006年10月23日
 石川 慶子 『マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル』 2006年10月26日
 五十嵐 寛 『実践マニュアル 広報担当の仕事 すぐ役立つ100のテクニック』
 世耕 弘成 『プロフェッショナル広報戦略』 2006年09月22日
 世耕 弘成 『自民党改造プロジェクト650日』


■ 百夜百マンガ

てやんでいBaby【てやんでいBaby 】

 「生まれ変わり」や「魂が入れ替わる」っていうのは、マンガの定番ネタなのですが、「ヤクザ+赤ちゃん」にしたところがポイントです。設定一発作品なのですが、面白かったです。

投稿者 tozaki : 2006年11月13日 07:00

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