« キャリアデザイン入門〈2〉専門力編 | メイン | 地方債 »
2006年12月13日
入門 パブリックリレーションズ―双方向コミュニケーションを可能にする新広報戦略
■ 書籍情報
【入門 パブリックリレーションズ―双方向コミュニケーションを可能にする新広報戦略】
井之上パブリックリレーションズ (著), 井之上 喬 (編集)
価格: ¥1,680 (税込)
PHP研究所(2001/04)
本書は、日本企業共通する、「醸成分析力の低さ、消極的な情報開示の姿勢、後ろ向きの対応、不祥事や事故に対しその責任を明確にして問題解決に向き合うという自己修正能力の弱さ」の根本には、「ツーウェイ(双方向性)コミュニケーションの欠如」があるとして、「パブリックリレーションズが登場・発展したアメリカにおける概念や技術を紹介するとともに、組織の責任者にはその必要性と重要性を、そして現場の一線を担う人たちを念頭にパブリックリレーションズの実践方法や分析手法を明示し、実践例」を掲げているものです。
序章「今、なぜパブリックリレーションズなのか?」では、日本へのパブリックリレーションズの導入を、
(1)GHQ(連合国軍総司令部)の流れ:1947年にGHQが各都道府県にパブリックリレーションズ・オフィス(PRO)を設置するサゼスチョンを行い、行政機関に広報部門が設置された。
(2)電通の流れ:戦後いち早くパブリックリレーションズに着目し、「広告、宣伝の構想、企画を拡大するパブリックリレーションズ(PR)の導入とその普及」が活動方針に盛り込まれている。
(3)証券民主化の流れ:証券業界が「証券民主化」をスローガンに掲げ、証券市場建て直しをGHQが積極的にバックアップした。
(4)経済団体の流れ:1951年に日経連が「経営視察団」をアメリカに派遣し、53年にはパブリックリレーションズ研究会が発足している。
の4つの流れに分けて解説しています。
第1章「パブリックリレーションズの概要」では、「有効な情報発信を行うには、対象となる特定グループである需要者(ターゲット)が属するパブリック全体(Publics:パブリックス)を理解する必要がある」として、日本では「公共」「公衆」と訳されていたパブリック(ス)は、「一般社会」「一般大衆」と表現する方が適切であると解説しています。そして、自らが、「パブリックの中心にあることと、パブリックの中の1因子にすぎないという両方の意識をもつこと」が、「情報の発信者であり需要者であるという意識」を持つことになり、「ツーウェイコミュニケーションに対する理解を深める上で役立つ」と述べています。
また、アメリカにおけるパブリックリレーションズの進化について、
(1)プレスエージェント・パブリシティの時代(1850年頃から):いかなる可能性をも持って組織や製品・サービスをパブリサイズ(広告・宣伝)する。
(2)パブリックインフォメーションの時代(1900年頃から):組織とパブリックの双方の利益代表者たるべく努め、可能な限り真実と正確性を持った情報をパブリックに発信。
(3)非対称性ツーウェイコミュニケーション時代(1920年頃から):企業や組織の立場と視点からパブリックを説得、同意させるための手法。
(4)対称性ツーウェイコミュニケーション時代(1960年代から):組織の試みがすべての対象にとって需要可能な状態となるための手法。
とするグルーニングのモデルを紹介しています。
さらにハーロウの定義として、「パブリックリレーションズは、一企業体とパブリックス(一般社会)との間の相互のコミュニケーション、理解、合意、協力関係の樹立、維持を助け、課題に対する論争に経営者を巻き込み、経営者に世論の動向を知らせ、その対処を助け、公共の利益に奉仕するための経営者の責任をはっきりと認識させ、社会の趨勢を予知するための警報システムとして経営者と一体となって変化を有効に利用し、さらにその最も重要なツールとして調査と健全かつ倫理に沿ったコミュニケーションに利用する、管理機能の役割を果たすものである」を紹介し、倫理を取り入れていることに着目しています。
著者は、「パブリックリレーションズの概念が成長の過程で吸収してきたこと」は、
(1)双方向性コミュニケーション
(2)企業経営における重要性の増大
(3)倫理観の必要性
の3点に要約できると述べています。
第2章「様々なリレーションズ」では、メディアを通じた情報発信には、
(1)情報発信者側が広告料などを支払う→広告・宣伝
(2)情報発信者側が広告料などを支払わない。→メディアリレーションズ
の2つのケースがあり、メディアリレーションの目的は、「企業など情報発信者が不特定多数の情報受容者に対して、意図する内容を性格に、公平に、できれば好意的にメディアに報道してもらうことにある」としています。その手法としては、
(1)記者会見
(2)プレスリリース
(3)ブリーフィング
(4)ワン・オン・ワンインタビュー
(5)記者懇談会
等の手法について解説しています。
また、「投資家に有効な判断基準を提供していく活動」であるインベスターリレーションズについては、ターゲットとなるパブリックとして、
・既存の株主と潜在株主
・機関投資家
・一般投資家
・証券アナリスト
・ファンドマネジャー・投資顧問
・財務省・証券取引委員会・証券取引所
等を挙げています。
さらに、「企業・組織体が事業や組織の活動目的を達成するために、政府や行政との関係を通じて情報収集、ロビイング(ロビー活動)やセミナ討論会などの集会を行い、メディアリレーションズをも含めて幅広く行う活動」であるガバメントリレーションズについては、「政府、立法に関する手続、政策、世論形成の過程などに精通した知識」が必要であると述べています。
組織・団体内でのコミュニケーションズとしては、「組織・団体と構成員との相互信頼を構築すること」を究極の目的とするエンプロイーリレーションズについて、「構成員がその組織・団体に属していることで『何ができるのか』、『何を得られるのか』といった観点からモチベーションを高めること」であるとともに、「快適な職場環境が実現されることで構成員と組織・団体とのコミュニケーションがさらに促進される」と述べています。そして、そのポイントとしては、
(1)システマティックなコミュニケーション:あらゆるツール・テクノロジーを駆使する。
(2)左右対称なコミュニケーション:指示・命令や情報収集のような上下方向とは異なり、お互いに話をして聞く、文書を出して返事を読むという水平方向で対になったコミュニケーション活動が特徴である。
を挙げた上で、写真が不満を持つことの一つとして、「自分の会社に関する情報を社内ルートではなく、新聞などのメディアで知ることが多い」ことを挙げています。また、留意すべき点として、「いかなる形態であれ、社内情報は外部に行きわたる可能性」が高いとして、「予防策のためにコミュニケーション用の社内文書やファイルなどが、外部に出てもいいように細かく慎重に文章を作っておくこと」であると述べています。
第3章「パブリックリレーションズと企業」では、コーポレートコミュニケーションが企業の根幹を成すものであり、
(1)環境の変化、特に市場に関わらない社会の情報を性格に読み取ってトップに伝え、その戦略立案を誤らせないこと。
(2)設定したターゲットに向け、そのターゲットにあった情報を発信していくことによって、企業行動が社会に受け入れられる条件づくりをすること。
の2点を指摘しています。
そして、「企業イメージや製品イメージだけでなく、企業収益、株主への配当額や企業の将来性など様々なファクターが関係しあって構築される」ものである「企業品格(コーポレート・レピュテーション)」について、「これらのファクターを総攬的に把握・管理する」ことがレピュテーション・マネジメントであると述べています。
また、パブリックリレーション専門家に求められる基本的な要素として、
(1)倫理観:制度による保証や規制にかかわりなく倫理観が必要である。
(2)ポジティブ(積極的、肯定的)思考:ポジティブ思考の環境は、柔軟性のあるフレキシブルな行動を容易にし、自己修正を伴った戦略的でクリエイティブなパブリックリレーションズ・プログラムを可能にする。
(3)シナリオ作成能力:先を見通す能力が必要不可欠。
(4)IT(情報技術)能力:他の能力に長けていたとしても、パソコンを前に首を傾げるばかりでは信頼は得られないし、仕事が進まない。
(5)英語力:国際間のビジネスだけでなく、インターネット利用においても英語力の必要性が高い。
の5つを挙げています。
第4章「企業・組織における危機管理」では、危機管理には、
(1)イッシュー・マネジメント:予想される新しい課題や問題を抽出し、それらに対する企業の対応策を考え実施することで、「問題管理」などとも言われる。
(2)リスク・マネジメント:保険加入などの通常業務の範囲内で対応可能となるリスクを抽出し、対応策を考え実施すること。
(3)クライシス・マネジメント:事故や災害、地域紛争や国家間の戦争などの危機(クライシス)を想定し、対応策を準備し発生したら即座に対応すること。
の3つのタイプがあることが解説されています。そして、危機管理の失敗の代表例として、ペリエ社のベンゼン混入事件を、成功例として、ジョンソン&ジョンソンのタイノール事件を紹介し、「緊急事態発生時において一時的な企業イメージののマイナスや損失は免れないが、対応のいかんによってその後の展開が180度違ってくることを、企業トップやPR担当の関係者はしっかりと認識すべきである」と述べています。そして、「プラスイメージの蓄積が危機発生時においてマイナスを小さくする力として作用」する、「イメージストック作用」について解説しています。
第6章「成功に導くPR戦略の構築と実践」では、「何(PR目標)を、パブリック(一般社会)の誰(ターゲット)に対して、コミュニケートしていくか」という図式を完成させるためのターゲットとして、
(1)ビジネスターゲット:発信する情報を確実に伝える必要のあるパブリックの中の最終ターゲット。――顧客・将来顧客、ディストリビューター、投資家など。
(2)コミュニケーションチャンネル:企業の経営目標や事業活動、製品・サービスなどに関して、その情報を拡大、あるいは拡散させて伝達する機能を持っている対象。――メディア、アナリスト、オピニオンリーダー、従業員など。
の2種類に区別していることが述べられています。そして、PRプログラム作成における留意点として、
(1)具体的で実現性のあるプログラムであるか?
(2)プログラムの実施スケジュールは確実なものか?
(3)予算計画に無理はないか、また、コストパフォーマンスはどうか?
(4)クライアント企業とPR会社との役割分担は明確か?
(5)クライアント企業とPR会社とのコミュニケーションシステムは確立されているか?
の5点を挙げています。
さらに、「適正なメディアリレーションズをおこなう上で、取材対応という現場の最前線でのスキルアップを目指すプログラム」である「メディアトレーニング」に関して、取材対応を、
(1)企業側から積極的に情報発信する記者会見、記者懇談会、ワン・オン・ワンインタビューなど。
(2)メディア側の関心に基づいて取材申し入れに答えたもの。
(3)企業と関係のある事件・自己や、ニュース報道などにより取材が集中する緊急時の電話対応や対面対応。
の3つのカテゴリーに大別して解説した上で、ワン・オン・ワンインタビューを想定したメディアトレーニングを解説しています。
この他、パブリックリレーションズ活動の評価手法のひとつであるCARMA(Computer Aided Research & Media Analysis)の解説や、ケーススタディとして、著者の会社が97年の国際PR協会ゴールデン・ワールド・アワードにおいて最優秀賞を受賞した、「日本における自動車部品のアフターマーケットの規制緩和プログラム」などの事例を解説しています。
本書は、実践的なパブリックリレーションズの解説を読みたい人にはうってつけの一冊です。
■ 個人的な視点から
本書を読んで印象に残ったのは、著者の会社は、コンピュータ(マッキントッシュ)や自動車部品などの米国企業をクライアントに持ち、日本のマーケットや政府に対してパブリックリレーションズ活動を行っている、ということです。米国企業ならばいくらでも優秀なPR会社が米国内で見つかりそうなものですが、やはり現地の市場や政府に精通し、人脈を持つ現地企業のアドバンテージがあるようです。
■ どんな人にオススメ?
・日本のPRの実際を知りたい人。
■ 関連しそうな本
矢島 尚 『好かれる方法 戦略的PRの発想』 2006年10月25日
ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳) 『コーポレート・コミュニケーションの時代』 2006年10月23日
石川 慶子 『マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル』 2006年10月26日
世耕 弘成 『プロフェッショナル広報戦略』 2006年09月22日
矢島 尚 『PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル』 2006年11月13日
春名 幹男 『秘密のファイル(上) CIAの対日工作』 2006年08月24日
■ 百夜百マンガ
藤子F不二雄先生の「SF(少し不思議)」テイストと現代風のマニアックなオマージュとパクリをちりばめた小ネタの数々は、実は幅広い年齢層に受け入れられるのかもしれません。お父さんがはまっちゃうマンガです。
投稿者 tozaki : 2006年12月13日 22:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1209
【ケロロ軍曹 】