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2007年01月27日
広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス
■ 書籍情報
【広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス】
スティーヴン ウェッブ (著), 松浦 俊輔 (翻訳)
価格: ¥2940 (税込)
青土社(2004/06)
本書は、「エイリアンがいる証拠が見つかってもよさそうなものなのに、いるようには見えないという矛盾」である「フェルミ・パラドックス」に対する多くの科学者から提起された50の答えを解説したものです。
第1章「みんなどこにいる?」では、著者とこのパラドックスとの出会いが述べられ、著者にとってこのパラドックスが、「生命がいる可能性のある場所の数の多さと、宇宙の年齢の途方もない長さ」との「2つの大きな数のあいだの競争のように見えた」と述べています。そして、「フェルミ・パラドックスが面白いと思ったのは」著者だけではなかったため、「長年の間に多くの人々が、パラドックスに対する答えを出していて」、それを集めることが趣味になったと述べられています。そして、これらが、
(1)地球外生命はすでに何らかの形でこちらへ来ている。
(2)ETC(地球外文明)は存在するものの、何らかの理由でその存在を示す証拠が見つかっていない。
(3)宇宙にいるのは、あるいは少なくとも天の川銀河にいるのは我々だけで、そういえる理由も説明できる。
の3つの部類のいずれかにおさまるものであると述べられています。
第2章「フェルミとそのパラドックス」では、「二十世紀物理学者の中でも一番完成された物理学者――最高レベルの実験的研究を行い、かつ世界レベルの理論家」であったエンリコ・フェルミその人について解説しています。また、「フェルミ推定」という、一見すると答えようのない問題の答えの大きさを推定する方法、について、その典型として、「シカゴにはピアノの調律師が何人いるか」という問題を、
(1)シカゴの人口を300万人とする。
(2)ピアノを所有するのは世帯であり、学校はオーケストラなどの団体のものは無視する。
(3)1世帯には5人いるとして、60万世帯があると推定できる。
(4)20世帯に1世帯がピアノを所有しているとするとシカゴには3万台のピアノがあることになる。
(5)ピアノは1年に1度調律が必要とする。
(6)調律師は1日に2台の調律ができ、年間200日働くとすると、75人のピアノ調律師が必要になるが、知りたいのは概数であるため、100人に丸める。
という6つの仮定から導く方法を解説しています。
そして、フェルミが問いかけた「通信する文明はいくつ存在するか」という問題に対する推定として、ドレイクによって示された「銀河系で何らかの通信をしている文明の数を推定する手段」である「ドレイクの公式」を紹介しています。
また、パラドックスへの関心が爆発したきっかけである、『クォータリー・ジャーナル・オブ・ロイヤル・アストロノミカル・ソサエティ』誌に1975年に掲載された、マイケル・ハートによる論文を紹介し、この論文が、活発な議論を巻き起こし、1979年にはフェルミ・マラドック酢を論じる学会が開催されたことが述べられています。
第3章「実は来ている」では、「最も単純な解決方法」として、「『彼ら』はもう来ている、あるいは少なくとも、過去には『彼ら』は来たことがあるとする」方法を紹介し、3種類のうち、「一般の人々にずば抜けて人気がある」ものであると述べています。
著者のとぼけているのは、この解の筆頭に、
・解1:彼らはもう来ていて、ハンガリー人だと名乗っている
というジョークを持ってきていることです。これは、フォン・ノイマンに代表されるロスアラモスで働くハンガリー人が、「火星人」とあだ名され、彼らの先祖の火星人は、人間に成りすましたが、放浪癖、言語、知能の3つの点でその違いを隠し切れなかった、とするものです。また、
・解2:彼らは来ていて人間のすることに干渉している
では、「私が今朝出勤するときに見た奇妙なドラゴンのような形の雲の説明をわざわざつけることはないのと同様、科学者には、空に生じた特定の光を生んだ状況を詳細に説明する必要があるわけではない」と述べ、説明を求められたとしても、「異様な光景を説明する新しい仮説は必要ない」と述べています。
・解3:彼らは来ていてここにいる証拠を残している
では、「火星は長い間、生命がいると思われてきた」理由の一つとして、イタリア語の「カナリ」という言葉に、英語圏の天文学者が「運河(カナル)」という「二つの水路を結ぶ人工的な構造物を表す語に訳した」ことがきっかけであると述べています。
・解4:彼らは来ていてここにいる――われわれはみんなエイリアンだ
では、「生命が別のところで生まれ、何らかの方法で地球に運ばれてきたのではないか」という説である「パンスペルミア説」を解説しています。
・解5:動物園シナリオ
では、「地球もETCがわれわれ用に残しておいた自然公園にあるのだ」とするもので、「あちらとこちらの相互作用が内容に見える理由は、あちらが見つかりたくないと思っていて、こちらからは向こうが見えないようにする技術的能力もあるのだろう」とするものです。しかしこの説は、「そう考えたところでどうなるのか」ということ、すなわち、「検証可能な仮説ではない」という理由で攻撃されていることが解説されています。同様に、
・解7:プラネタリウム仮説
も、動物園シナリオのバリエーションであり、この仮設を局単位まで進めると、「自分が経験すること――人、出来事、物――は、すべて自分の意識のないようだと思っていて、われわれが共有する外側の実在だとは考えていない」とする「独我論」に似てくる」と述べています。
第4章「存在するがまだ連絡がない」では、「多くの科学者が地球外生命という問題についてとっている立場」として、「銀河には、生命がいる惑星が数万程度あり、その惑星の一部には、われわれよりも技術的にずっと進んだETCが存在する」というものを紹介し、この立場は、「ETCが存在するなら、なぜ彼らが見当たらないのか。少なくとも、何の消息もないのはなぜか」というフェルミの疑問に答える必要があると述べています。
・解9:星はあまりに遠い
は、「星と星の間の距離が大きすぎて、恒星間旅行ができない」ためとするもので、そのための宇宙船の建造のアイデアとして、「タキオン」、「ワームホールとワープ駆動」、「零点エネルギー」など、SFでお馴染みのアイデアを紹介しています。
・解11:浸透理論による取り組み
に関して、「特定の計について、その系の一方の端から反対側の端までの連続した経路がある確率を計算」する「浸透(パーコレーション)」の問題を解説しています。
・解14:家から出ない
では、「無関心と経済事情の不幸な結びつきによって、ETCは故郷にとどまるということかもしれない」という説を紹介しています。
・解16:向こうは信号を送っているが、その聞き方がわからない
では、「妥当な範囲で遅れる信号の量や種類は限られてくる」として、
・電磁波
・重力波
・粒子ビーム
・仮説上のタキオンビーム
の4つの通信手段についてその特質を検討しています。
・解18:こちらの探査方針が間違っている
では、探査方針として、
(1)目標探査:近くにある個々の星を狙い、意図的にこちらに向けられている信号や、漏れ出た放射がたまたま通りがかるのを探知するのを期待して、高感度の装置を用いる。
(2)全天探査:天球の広い範囲を操作し、無数の星を対象にし、感度は大幅に落ちる。
の2つの方法を挙げて検討しています。
・解22:バーサーカー(皆殺し集団)
では、1950年代の冷戦時代の戦略家が、「すさまじい威力があり、制御不能で、地球上の人類をすべて――当の平気の所有者を含めて――死滅させられる」という「最終兵器」のアイデアを考えていたことに関連して、「感覚を備えた、自己増殖する機械で、有機的生命にとっては野蛮にも危険である」バーサーカーのせいで、ETCは成長できないか、バーサーカーによって滅ぼされるか、バーサーカーの関心を惹かないように息を殺しているかである、というものであることを述べています。
・解25:向こうは呼びかけているが、こちらが信号を察知していない
では、「メッセージを探知したとして、その内容を解読できるだろうか」として、「ヴォイニッチ手稿」を引き合いに出して解説しています。
・解27:破滅のいろいろ
では、未来のナノロボットが自己増殖を繰り返し、地球表面の生物を構成する素材を分解し、それを使って自分たちの複製を増やすことで、「貪欲なナノロボットとその廃棄物の海に変わってしまう」という「灰色のねばねば(グレー・グー)問題」について解説しています。
第5章「存在しない」では、「われわれが連絡を取れるほど進んだ地球外文明は存在しない」という区分を紹介し、我割れば、「われわれに観測できる対象は、観測者であるわれわれの存在にとって必要な条件の範囲内のものとならざるを得ない」という「弱い人間原理(ウィーク・アンスロビック・プリンシプル、WAP)」に拘束されていると述べ、これはほとんど「同語反復(トートロジー)」であることを認めています。
・解34:われわれが一番乗り
では、「重い元素が生命ができるほどの恒星間の空間にたまったのは、最近になってからのこと」だとする仮説を紹介しています。
・解36:継続的に居住可能な領域は狭い
では、地球型の惑星である以外に、「われわれが知っているような生命が、技術文明が発達するのに必要な何億年も生き続けるには、別の条件も満たさなければならない」として、「惑星系の居住可能領域(HZ)になければならない」という説を紹介し、その鍵が水であることを解説しています。
・解42:こんな月は滅多にない
では、月の存在がフェルミ・パラドックスを解決できるとする理由として、
(1)月のどこが変わっているのか。
(2)他の惑星系に、地球の衛星に似た衛生が存在する確立はどのくらいあるか。
(3)月の存在が知的生命の発達のために必要かもしれないというのはどういうことか。
の3つの疑問に答えています。
・解43:生命の誕生がめったにない
では、「生命の鍵を握る成分は水らしい」として、現在の太陽系では、「地球以外に少なくとも3つの天体に海があるかもしれない」として、木星の衛星のエウロパとカリスト、土星の衛星タイタンに海のある可能性に言及しています。
第6章「結論」では、「これほどデータに乏しく、根拠のない、偏った推測に左右された――人類の究極の運命の巻き添えになった――重要問題もあまりない」というデーヴィド・ブリンの20年前の言葉を紹介した上で、
・解50:フェルミ・パラドックスは解決した
として、「ETCの来訪を受けたことがなく、そこからの連絡もない」という「どんな論争があっても、その中で確固とした事実」を指摘しています。
著者は、「フェルミ・パラドックスが教えてくれるのは、この銀河系の中で知性のある、もののわかる種族は人類だけということだ」と述べています。
本書は、異星人の存在を考えることを通じて、われわれ自身のことを考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
私たちは、小さな頃からこの広い宇宙の中で地球という星に縛り付けられている、というイメージを共有していて、江戸時代の大多数の日本人のように、外の世界をまったく知らないまま一生を終えていく、という想像をしていましたが、それほど簡単に「宇宙人」というのはいるわけではなさそうです。
こうなるとほとんど、「あの世」のイメージの共有に近いものがあるような気がします。
■ どんな人にオススメ?
・「宇宙人」の可能性に思いをはせて見たい人。
■ 関連しそうな本
ウィリアム・パウンドストーン (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『パラドックス大全』 2007年01月13日
ニール・F. カミンズ (著), 増田 まもる (翻訳), 竹内 均 『もしも月がなかったら―ありえたかもしれない地球への10の旅』
サイモン シン (著), 青木 薫 (翻訳) 『暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで』 2006年05月03日
ロビン・ウィルソン 『四色問題』 2006年07月18日
チャールズ サイフェ (著), 林 大 (翻訳) 『異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』 2005年11月20日
サイモン シン 『フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』 2006年09月02日
■ 百夜百音
【I Wanna Be Adored】 Stone Roses オリジナル盤発売: 1991
美しい&懐かしい曲です。今でもベースのリフをポツリと弾いてしまうことがあります。
投稿者 tozaki : 2007年01月27日 05:00
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