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2007年01月02日

ある広告人の告白

■ 書籍情報

ある広告人の告白   【ある広告人の告白】

  デイヴィッド・オグルヴィ (著), 山内 あゆ子 (翻訳)
  価格: ¥1890 (税込)
  海と月社(2006/6/15)

 本書は、1960年代の広告人にとって、「『毛沢東語録』にも匹敵する一冊」であった、国際的大手広告会社オグリヴィ&メイザー社の創業者が「売る広告」を作るための技術を語ったものを、著者の没後2004年に新版として改訂したものです。
 「本書の裏話」と題された新版のための前書きには、「私の遺言」として、「成功する広告を作るのは技術である。インスピレーションもまったくいらないとは言わないが、ほとんどは技術と努力にかかっている」ことをも「もっとも重要な教え」として挙げています。
 第1章「広告会社の経営手法」では、著者が、広告業界に入る以前に、パリのホテル・マジェスティックのコックであった経験をひきあいに、「広告会社を経営するということは、研究所や雑誌社、建築事務所、大レストランの厨房など、創造性を求められる他の組織を経営するのによく似ている」と述べ、当時の料理長ムッシュー・ピタールから受けた影響として、「週に77時間も働いたうえ、休みは2週間に一度だけだった」というその勤勉さを挙げています。さらに「優れたクリエイターに温厚で人当たりのよい人間は少ない。たいていは気難しいエゴイスト、今の企業社会では敬遠されるような人間だ」として、チャーチルを例に挙げています。
 第2章「クライアント獲得の秘訣」では、著者が創業時に、「使いたい広告会社」のリスト入りを果たすために、
(1)広告業界紙の記者たちを昼食会に招き、無手勝流で一から大会社を築こうとしているという突拍子もない夢を語った。
(2)スピーチを年に2回以下にした。
(3)大広告主とコンタクトのある人々(経営者や広報コンサルタント、経営工学の専門家、広告スペースのセールスマン)と親しくなるよう心がけた。
(4)ありとあらゆる立場の人々600人に、頻繁に業務進捗レポートを送り続けた。
などの手を尽くしたことが語られています。そして、クライアント獲得のため、「ほぼあらゆるケースに通用する戦略」として、「しゃべりはクライアント候補に任せる」ことを挙げ、「聞き役に回れば回るほど、"敵"にはあなたが賢く見える」と語っています。
 第3章「クライアントとの関係を持続させるには?」では、著者が、「常にクライアントの製品を使っている」として、
・シャツ:ハサウェイ
・ローソク立て:ステューベン
・車:ロールスロイス、そのガソリンタンクにはスーパーシェル
・スーツ:シアーズ・ローバック
・朝食:マックスウェル・ハウス・コーヒーかテトリー・ティー、ペパーリッジ・ファームのトースト
・洗顔:ダブ
・体臭予防:バン
・ライター:ジッポ
・飲み物:プエルトリコ・ラムかシュウェップス
・新聞と雑誌:インターナショナル・ペーパーの工場で生産された紙に印刷されたもの
・休暇:行き先はイギリスかプエルトリコ、アメックスで予約を入れ、KLMオランダ航空かP&Oオリエントライン汽船に乗る
を使っていると語り、「これらはこの地上で最高の製品でありサービスではないか。そう信じればこそ、私はこれらを宣伝しているのだ」と語っています。
 第4章「クライアントに贈る『15のルール』」では、
(3)広告会社に対して、徹底して自社の要点を与えること
(6)あまりに多くの段階を経ることで、広告を痛めつけないこと
等、15の要点を語っています。
 第5章「成功する『広告キャンペーン』とは?」では、
(9)家族に読ませたくないような広告は絶対に書くな
など、「必ず守らなければならない11の掟」を語っています。
 第6章「『強烈なコピー』作成法」では、「ヘッドラインには常に新しい情報を入れることを心がける」、「ボディ・コピーを書くときは、ディナーパーティで隣に座った女性に話しかけるように書くこと」など、効果的なコピーの書き方が語られています。
 第7章「人をひきつけるイラストレート法」では、「広告に女性を惹きつけたい場合、一番良いのは赤ちゃんの写真を使うこと」として、その写真が、「家族」の写真の2倍、女性の目をとらえるというリサーチ結果を紹介しています。
 第8章「視聴者の心を動かすTV・CMの条件」では、「タイテイノCMは、激流のように次から次へと言葉を浴びせかけて、視聴者を混乱に陥れている」として、「真に効果のあるCMは、ひとるか二つに絞り込んだポイントを、シンプルに伝えるものだ」と語っています。
 第9章「『食品』『観光地』『医薬品』キャンペーンのポイント」では、著者が、イギリス旅行休暇協会やプエルトリコ及び米国観光局の広告を請負った経験に基づき、(1)観光地の広告は、必ずその国のイメージに影響するので「良い」イメージを与えることが政治的に重要である。
(2)「その国にしかないもの」を宣伝すること。観光客は家の近所で見られるものを見にわざわざ何千キロも旅行したりはしない。
(3)受け手が決して「忘れないような」イメージを築き上げること。
(4)掲載するメディアは、遠いところまで旅行する余裕のある層が手にとるものにすること。
(5)文化の匂いやステータスを刺激して、受け手が旅行コストを正当化しやすくすること。
(6)広告する国を、「誰もが行く国」の地図に加えるような広告を作ること。
(7)人に遠くの場所を夢見させるには、具体的に「何をどうすれば良いか」という情報を与えるのが一番。
(8)顧客が外国に出かけるのは、お決まりのものを見るためだ。
の8点を挙げています。
 著者は、「イギリスへいらっしゃい」の広告で、「古臭いイメージを撒き散らして、イギリスの威信を傷つけた」とイギリスのマスコミ界から集中砲火を浴び、「活気があり福祉にも手厚い先進国というイギリスの『真実の姿』を伝えようとしないのか」と糾弾されたた経験を挙げ、「こうしたものは『政治的には』価値があるかも知れないが、キャンペーンの唯一の目的は観光客を惹きつけること」であり、「わざわざ海を渡って発電所を見に行こうなどというアメリカ人はいない。ウェストミンスター寺院が見たくて行くのだ」と語っています。
 また、外国旅行をする際に、「アメリカ人観光客はその国の人々の態度に影響されることが多い」ため、「イギリス人がどんなに『親切か』を述べ、できるだけ固定観念のマイナスイメージを正すよう努めた」ことを語っています。
 第11章「広告への批判に対する私の回答」では、広告は政治に用いられるべきではない、という自説を述べ、その理由として、
(1)政治家の売込みに広告を使うとは下品極まる。
(2)民主党員を宣伝するとすれば、我が社にいる共和党員には不公平だし、逆の場合も同じことだ。
の2点を挙げています。ただし、社員が個人としてボランティアで政治的義務を果たすことについては奨励していると語っています。
 本書は、出版以来40年余りを過ぎていますが、今なお色あせない、そして今だからこそ光る多くの教訓を与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 今、さまざまな業界で、PRや広告が引っ張りだこです。政党は、選挙の勝敗を大きく左右する要因としていかに優秀なPR会社を起用するかにしのぎを削っていますし、全国の自治体が、自治体間競争時代、地域ブランドの名の下に宣伝合戦を繰り広げています。
 しかし、本書の著者が語っている、クライアント獲得の条件は、こうした宣伝合戦が、いかに中身のないものに堕しやすいかを教えてくれます。
・広告する製品は、我々が広告に携わることを誇りに思えるようなものでなければならない。心の中では軽蔑している製品を広告するという数少ない例もあるが、そういうときは必ず失敗している。
・長期間売上が落ち込んでいる商品には近づかないことにしている。そういう場合は必ずと言っていいほど、商品自体に本質的な欠点があるか、もしくは経営陣が無能なのだ。


■ どんな人にオススメ?

・誇りを持った広告をしたいと思っている人。


■ 関連しそうな本

 クロード・ホプキンス (著), 臼井 茂之, 小片 啓輔 (監修), 伊東 奈美子 (翻訳) 『広告でいちばん大切なこと』
 ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』 2006年02月16日
 榊 博文 『説得と影響―交渉のための社会心理学』 2006年02月23日
 矢島 尚 『好かれる方法 戦略的PRの発想』 2006年10月25日
 高木 徹 『ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争』 2006年11月27日
 井之上パブリックリレーションズ (著), 井之上 喬 (編集) 『入門 パブリックリレーションズ―双方向コミュニケーションを可能にする新広報戦略』 2006年12月13日


■ 百夜百マンガ

奈緒子【奈緒子 】

 今年も駅伝の季節になりました。今日は関東地方は崩れるらしいので箱根は雪になるのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2007年01月02日 10:00

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