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2007年02月04日
氷河期の「発見」―地球の歴史を解明した詩人・教師・政治家
■ 書籍情報
【氷河期の「発見」―地球の歴史を解明した詩人・教師・政治家】
エドマンド・ブレア ボウルズ (著), 中村 正明 (翻訳)
価格: ¥1995 (税込)
扶桑社(2006/04)
本書は、「氷河期の存在が一般に認められるようになった」19世紀に、「いっしょに、地球の歴史、気候、地球上での氷の役割についての私たちの見方を変えた」キー・パーソンである、イライシャ・ケーン、ルイ・アガシ、チャールズ・ライエルの3人のキーパーソンを追ったものです。
第1部「無知で野心ある三人の男」では、著者は、大体において人間が、「空っぽの帽子からうさぎを取り出す手品師よろしく、どこからか知識を得て、思いもよらない事柄を学び取る」と述べ、氷河期は「まさしくそのような新知識の一つである」と語っています。1820年代には、「j北極や赤道に向かって進んでいくと、氷河が小さくなり、ついにはまったく消えてしまうのが観察される」として、「世界で最も大きな氷の固まりは温和な気候のところにある」との説が流布したことが紹介されています。
そして、本書の主人公の一人であるケーンを、北極探検に駆り立てた動機のひとつが、「単に無知のためだけ」ではなく、大学生の頃にリューマチ熱で心臓に障害が生じ、常に死の影に付きまとわれていたケーンが、「有名になろう、死ぬまでに目覚しいことをしよう」と決意していたことが紹介されています。アメリカ海軍の船医の補佐役として中国に向かうと、エジプトに渡ってはナイル川上流で「波乱に飛んだ戦闘」に参加し、陸路イタリアに向かい、スイスのアルプスを越えてフランスに入り、世界を一周してアメリカに戻ッ武ーんは、「栄光でも評判でもない、それのまがい物を手に入れ」、「栄光も評判もなくてもマスコミの力で名声をかち得ることができるということを発見した最初の一人」であると述べられています。1853年5月30日に、北極の周りの氷結していない海を目指して出発したケーンは、アメリカ国民から英雄とみなされ、成功を祈って心からの拍手を贈られたが、ケーンが見いだしたものは「マンモスをも凍らせるほどの荒れ狂う天候」であり、「夢から悪夢が生じる」のだと述べています。
もう一人の主人公であるライエルは、パリ付近の古い地質形成とスコットランド湖の最近の堆積物を比較する手法を進めるなど、「真に科学的な地質学」を生み出す努力を始め、同じ頃に「自然科学において天変地異が重要な意味をもつ」とキュヴィエが書いたことを「完全に『非哲学的』である」とみなし、「変わった現象を全てノアの洪水のせいにする宗教学者と、天変地異を頼りにするキュヴィエのような科学者は、みな同じ迷信深い集団の一員である」といっていることを紹介しています。
第2部「無知にとどまらず行動する」では、「氷河や極寒の時代を否定」する当時の態度を、「単なる『誤ったデータ(ガービッジ)』」ではなく、「ぎゅうぎゅう詰めにされ、固くなったゴミ(ガービッジ)」であり、「疑いようのない偏見だったので、1830年代の屈指の学者たちですら、氷河と言う考えに対して、私たちが『犬はにゃーにゃー説』に対するような反応」をしたと述べています。
また、1836年の夏にスイスのシャンパンティエの自宅を訪れた本書のもう一人の主人公であるアガシが、5ヶ月かけてスイス奥地を探検し、「氷河説対洪水説」論争についての諸事実を完全に頭に入れ、調査が進むにつれ、アガシはライバルたちの氷河説に分があることを知り、「目的をもった大旋風さながら、急ピッチで調査を進めた」と述べられています。アガシは、氷河の後を見て、「途方もない大きさの花崗岩を引きずり、氷河が通った後の地面はひどくこすられていた」というまだ知られていない事柄が彷彿としてきたと述べられています。
1837年にアガシは、後に「ヌーシャテル講演」として記憶されることになる講演をし、聴衆のほとんどは、「氷河論者に与することにしたというアガシの宣言」に驚き、「ちょうど、カトリックの集会で司教が歓迎の言葉の冒頭でプロテスタントの説を擁護し始めたときに、それを聞いていた著名な司祭たちが起こすであろうような反応をした」と述べられています。アガシは、「さまざまな事実を系統的に集め、目に見える証拠の上にあらゆる主張を組み立てた」が、ヌーシャテルに集まった自然科学者たちは、「巨大な氷を想像できない」という、「私たちにはもはや体験できない状況」にあったため、アガシの講演は敵意を持って迎えられたと述べられています。そして、「聴衆は恐怖にとらわれ、論争は収拾がつかなくなたtので、気の弱い人たちはだんまりを決め込んだ」と伝えられています。アガシは、わずか3日前まで「同時代の自然科学者の中では最も秀でていると見られていた」が、スキャンダルを起こし、「まともだとは思われなくなっている」と述べられています。
第3部「変心」では、1840年に、ヌーシャテルではアガシが、初めて「氷河の全体像を描いた本」である『氷河研究』を書き上げ、ロンドンではライエルが10年前に出版し、「英語で読むことのできる最も優れた地質学の教科書という評判」をとっていた『地質学原理』の改訂第6版を出そうとしていたことが述べられています。前に出した本を加筆修正するというライエルの姿勢は、「最新の情報に常に気を配っていることが証明され、ライエルの地質学に対する研究態度は時間と新しい発見の試練を経ているという印象を強く与え」、「一方では、新しい事実が現れ必要に迫られると考えを変える現代の科学者の典型そのもの」のようであったが、「他方では、こうした変更改訂された点の全てがその本全体の主張をひきつづき支持していたので、昔の完璧な預言者のようにも見えた」と述べられています。著者は、「地質学上の事実の中で、氷河ほどライエルの成功のきっかけとなったものはないだろう」と述べています。
1840年9月にグラスゴーで開催された英国科学振興協会の年次総会に出席したアガシは、氷河が動くにつれ、
(a)堆石を押して行き、
(b)漂石を載せて運び、
(c)下にある岩を引っかきみがく
が、この総会で提起された問題は、「アガシが引き合いに出している影響は、氷河によって惹き起こされたのだろうか、それとも何か他の原因によるのだろうか」であったことが述べられています。
第4部「最悪の状態」では、一時は、スコットランドが氷河に覆われていたという説を支持し、アガシの側に転向したように見えたライエルが、「今は変節し、またナイアガラの特色の全てを、洪水、漂流する氷山、地盤の高さの変化という、以前の考えによって説明するようになった」ことが解説されています。
第5部「確信をもって結末へ」では、「もし最初から氷河の仕組みが分かっていたら、氷河期を否定する説はあれほどまでに多くはならなかっただろう」とする一方で、「アガシとシンパーは氷河の仕組みが分かっていたら氷河期があったかどうかに興味をもたなかっただろう」と述べています。
そして、1957年にケーンという「必要な詩人」が現れることによって、アガシとライエルにも時期が到来し、「だれもが巨大な氷をアガシと同じ視点で見ることができるようになった」ことが述べられています。
第6部「二つの悲劇と一つの勝利」では、北極圏から生還したケーンが、1856年に地理学会から金メダルを贈られ、ケーンの著書は、アガシを初めとする各方面の名士からの推薦を受け、ひとたび出版されると大騒ぎになったことが述べられています。
また、「現在の世界は天変地異のあと、ごく最近できた新しいものだ」という考えが機雷で生涯を通して闘ってきたライエルが、その考えを認めるようになったことなどが述べられています。
本書は、現代では当たり前になった氷河期と言う事実とそのイメージが、日本ではまだ徳川幕府の時代だった19世紀の人たちにどのようにして受け入れられたかを教えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
19世紀のイギリス、と言えば、『ジョジョの奇妙な冒険』の第1部であるジョナサン編です(作品の舞台は1880年代ですが)。本書を何気なく読んでいると、登場人物が150年前の人物だということを気にせずに読めてしまいますが、当時の学会の権威の高さや服装、雰囲気などを想像して読むとさらに楽しめるかもしれません。
■ どんな人にオススメ?
・氷河期を当たり前のものだと思っている人。
■ 関連しそうな本
ブライアン フェイガン (著), 東郷 えりか, 桃井 緑美子 (翻訳) 『歴史を変えた気候大変動』 2006年12月02日
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ジャレド ダイアモンド 『銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎』 2006年09月12日
■ 百夜百音
【ガンバの冒険】 TVサントラ オリジナル盤発売: 1997
子供の頃に見たときは、とにかくノロイが恐い、何週にもわたって重々しい絶望が続くのが辛かったです。大人になってからもう一度見たい作品の筆頭です。もちろん『宝島』にも同じことが言えますが。
投稿者 tozaki : 2007年02月04日 22:00
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