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2007年02月13日

シャウプの証言―シャウプ税制使節団の教訓

■ 書籍情報

シャウプの証言―シャウプ税制使節団の教訓   【シャウプの証言―シャウプ税制使節団の教訓】

  カール・S. シャウプ (著), 柴田 弘文, 柴田 愛子 (翻訳)
  価格: ¥1680 (税込)
  税務経理協会(1988/12)

 本書は、1988年に開催された「発展途上国における基本的税制改革からの教訓」と題する会議に提出された論文の一つであり、シャウプ博士が日本税制について40年ぶりに発言したもとして、「税制の専門家にとって有益であるのみならず、日本の一般読者にとっても興味のあるもの」です。
 第1章「税制改革の由来」では、マッカーサーが、「歴史をひも解くと、国家の破滅は、常にとは言わないまでも、税制の非能率が嵩じて起きることが多い」とに認識を持ち、日本が2~30年後に世界有数の一大民主勢力になるためには、「健全な税制の創設とその実施」が必要であり、日本を民主国家にするためには、「地方政府を強化する必要」があり、「都道府県ならびに市に、より大きな財政的な自立」すなわち「独自のより強力な課税権を与える必要がある」と考えていたことが解説されています。
 第2章「プロジェクトの始まり」では、税制使節団が、1949年の夏の大部分を帝国ホテルで過ごし、1ヶ月の集中的な仕事の後、8月には「東京の暑さを山間部のホテルに避け、報告書の草案作り」を行い、8月末までに報告書が完成し、数週間後には英和対訳4巻として発表されたことなどが述べられています。
 第3章「税制使節団報告書」では、1949年8月26日の報告書に盛られた勧告として、
(15)主要地方税の1つである住民税は、均等割りや順位などの要素を重視せず所得を中心にすべきであり、市町村にすべて帰属させるべきであり、法人はこの税の対象外とするべき。
(16)不動産税の課税ベースの拡大。
(17)地方事業税は事業会社に対する付加価値税によって代替され、その税収はすべて都道府県のものとする。
(25)国の地方自治体に対する援助交付金制度は、
 ・100%交付金は、行政府の責任の所在が混乱し、国レベルからの過度の統制の基礎となり、国と地方の官僚間の摩擦が生じるためほとんど全部廃止。
 ・100%未満の交付金は一般目的の平衡交付金によって代替し、地方自治体を新しい業務や、よりよい方法の先駆者たらしめるよう計画された部分的交付金は存続する。
 ・平衡交付金は、各地方ごとに計算し、(1)一定の標準税率での地方税収と(2)その地方における必要な地方行政サービスを行う最小限のコストとの差を標準化するように計算される。
(26)地方財政委員会が設置され、情報を収集し、法令では厳密に律しきれない一定の事項について決定する。地方行政組織臨時審議会が、国、都道府県及び市町村間で特定の行政機能を割り当てるため設置されるべき。
などが盛り込まれたことが解説されています。
 さらに、税務行政に関しては、「税務当局のしていどおりの帳簿・記録を整えることに同意する所得税の納税者は、明瞭に識別できる指定の色(青)の申告用紙に記入することで見分けられ、実際の実地調査がないかぎり再査定〔更正または決定〕の対象とされないもの」とされ、青色申告制度の導入が勧告されたことが解説されています。
 第4章「税制使節団勧告の実施度」では、「報告書に盛られた概念上及び実際上の勧告」のうち、「重要なものほとんど全部発表後1~2年の短期間に実施に移された」が、1987年までには「廃止されたり、大幅に変更されたもの」もあり、「短期、長期いずれにわたっても実施されぬままに終わったものもあった」と述べられています。そして、その主要な例外は、「都道府県の所得を課税基準とする事業税に代替されるよう提案され」、「後日立法化されたが、適用は停止されついに施行されなかった」「付加価値税(VAT)」だけであり、その要因としては、
(1)付加価値の基本概念が当時の日本のみならず、一般にあまり知られていなかったこと。
(2)お互いの境界線を越える取引について、都道府県間の争いがたぶん危惧されたこと。
(3)日本の官僚及び国民が三段階にわたる所得税のもたらす累積負担についてあまり心配しなかったこと。
の3点が挙げられています。
 また、報告書の作成者たちが望んだ所得税を税制全体の大黒柱とすることについては、1949年と1986年の歳入状況を比較し、
(1)国税及び地方税の合計額のうち国税である個人所得税の占める割合は36%から26%に激減している。
(2)法人(所得)税のそれは8%から19%に上昇している。
(3)主として所得に基づいている住民税の割合は3%から15%に増加している。
ことから、「これら3つの所得に対する税金の合計」は1948年に総税収の47%であったものが1986年には60%となっているが、「法人(所得)税の割合の上昇と個人所得税の割合の低下は、報告書が明らかに望んだところと完全に逆であった」と述べられています。
 さらに、「地方に対し必要度に応じ交付金を配分する原則」が、「ある程度受け入れられたが、その交付金の総額は一定の国税の歳入額に依然としてリンク」していることが指摘されています。また、「三大地方税のうち二種の税の役割の根本的変化」や「総税収に対する地方税収の割合の大幅増」にもかかわらず、「都道府県と市町村の相互間の相対的重要性はほとんど変わらなかった」上、「住民税を市町村だけのものにすべきだという勧告は採用され」ず、「現在市町村はその税収額の69%を取っているに過ぎない」と述べられています。
 税務行政に関しては、「徴税職員に対する徴税目標制度」が1950年に廃止されたが、その後数年間は、滞納額の取立てについての「地区の税務署への割当制が存続」したことが解説されています。
 第5章「税制使節団報告書の一般的評価」では、1965年にマーティン・ブロンフェンブレナーとその研究助手小菊喜一郎が、「税制使節団の計画を立法化という点で『限定された部分的成功でしかない』と評し」、その理由として、「他国での長期間にわたる実験の成果のないまま」、
・純資産税〔富裕税〕
・継承取得税〔相続税〕
・付加価値税
などの、「いくつかの新しい財政上の実験を含んでいた」ことが指摘されています。
 また、1987年にジェーソン・C・ジェームズは、「使節団は国税としての直接税により国の税収のほとんどが徴収されるようにしたかったのであるが、直接税の中では個人所得税が間もなく使節団が頭に描いた構造を離れ、高い税率で純資産の課税抜きという包括的というよりはむしろ所得源泉別分類所得税という従前の形にもどるようになってしまった」ことを指摘しています。
 さらにジェームズは、「シャウプの地方財政制度」にとって「最大の打撃は1954年の平衡交付金の廃止」であり、その要因として、「1953年7月に始まった朝鮮戦争休戦による景気後退は予算の歳出の引締めを必要とし、平衡交付金は格好の標的となった」うえ、「「使節団の考えた交付金の分配法は共通の地方税の分配法にそのときもなお地方自治庁の手で利用されていたが、地方自治体に分配される金額の決定は、いくら必要であるかを独立して査定するのではなく、国の政府がいくら使えるかを決定することに左右されるというやり方にまたもや戻ってしまった……平衡交付金は地方自治を"下から"財政的に支える制度になるはずであったのに、"日本の事情に会わない"という建前から、たった4年で完全に姿を消してしまった」と解説されています。
 本書は、シャウプ自身による40年後の勧告の評価を読むことができる貴重な一冊です。


■ 個人的な視点から

 訳者は、「訳者あとがき」のなかで、シャウプ勧告後、「わが国の税制の辿った道は勧告受け入れ直後から始まった、勧告の要素の取り外しの歴史であった」と解説しています。
 ちなみにシャウプ博士は、1902年生まれ、2000年3月に97歳で亡くなられていますが、来日した1949年には、「世界で最もすぐれた税制を日本に構築する。」希望に燃えていたと言われています。


■ どんな人にオススメ?

・日本の税制と地方財政制度の原型を見たい人。


■ 関連しそうな本

 竹前 栄治, 中村 隆英, 天川 晃 『GHQ日本占領史 (13)地方自治改革』 2007年01月19日
 天川 晃 『GHQ日本占領史 (38)地方自治体財政』
 天川 晃, 増田 弘 『地域から見直す占領改革―戦後地方政治の連続と非連続』
 石見 豊 『戦後日本の地方分権―その論議を中心に』 2007年02月09日
 竹前 栄治, 中村 隆英, 天川 晃 『GHQ日本占領史 (37)国家財政』


■ 百夜百マンガ

キリン【キリン 】

 バイクマンガの主人公は通常、20前後の若者なんですが、なんでこんな歳の主人公が、って思った人は多いんじゃないでしょうか。

投稿者 tozaki : 2007年02月13日 21:00

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