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2007年03月28日

未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家

■ 書籍情報

未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家   【未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家】(#797)

  シルヴァン・ダルニル, マチュー・ルルー (著), 永田 千奈 (翻訳)
  価格: ¥1680 (税込)
  日経BP社(2006/9/21)

 本書は、「自分達の夢を極限まで追い求めた、すごい人たちに会いたい」という動機から、世界を旅してであった社会的起業のヒーローたちを紹介したものです。本書で取り上げられている「もうひとつの起業家」たちは、「変化を求めて声高に叫ぶことはしない。自身が変化を具現し、変化を促すタイプだ。原因をつきとめて糾弾するのではなく、解決策を示す。あくまでも地に足を着けたまま、社会問題に対して具体的で、広く応用できる未来への解決策を考え、実行する。未来に警鐘を鳴らすだけではなく、問題や行き詰まりを認識しつつも、楽観主義を捨てずに代替案を示す」と語られ、「セオリーよりも実践が優先する。自己犠牲に陥ることなく、自分達の行動が、経済、エコロジー、社会的分野でそれぞれどんな結果を生むかを冷静に判断する」と紹介されています。
 本書のタイトルは、ジュール・ヴェルヌの小説『80日間世界一周』をもじった「80人で世界一周」から採られていますが、実施には、取材先は113件にのぼっています。
 著者は、「この本はレシピ本じゃない。物語の本だ。新しいものを恐れる懐疑的な気持ちを克服した人たちの物語。不安定なもの、疑わしいものを批判するよりも、情熱を燃やし、実践的な価値を認め、まだ確立されていない考えでも、その正当性を信じるほうが賢いってことだってあり得るのだ」と述べています。
 第1章「ヨーロッパ」では、スーパーマーケットで買える、フランスで初めてのフェアトレード・ブランド「アルタエコ」を立ち上げたトリスタン・ルコントの、「まず、最初に大変だったのは、発展の見通しを強調し、市場の大半を占める既存の大型小売店を説得することだった」という言葉を紹介しています。
 また、自身が化学薬品のアレルギーに苦しんでいたことをきっかけに、「純粋に必要性から、従来とは異なる農法、『自然』で、とにかく自分自身が楽な農法を編み出そうと決意し、『自然が全て解決する』を信条とする農業人」となったペーター・コパートが開発した、「害虫を食べて作物の成長を助けてくれる益虫を育てるため」の方法論を紹介し、「現状を解決するには、もっと中期的、長期的な調和という視点から『イノベーション(技術革新)』を考え直さねばならないことがわかる」と述べています。
 さらに、環境に対して有害な塩素溶剤を売るエコロジストとして、ドイツの化学系洗剤レンタル会社、セフケム社長のカール・シュトゥッツルを紹介し、「顧客は、溶剤の量に対して金を払うのではなく、その機能、つまりは金属への洗浄効果に対して金を払う。末端の顧客が必要としているのは、大量の塩素溶剤ではなく、自社製品の衛生状態を維持することなのだ」という発想の転換によって、「できるだけたくさんの溶剤を売ることではなく、できるだけたくさんの金属製品をきれいにすることを目指そう」という「小さな革命」を引き起こしたことが語られています。
 第2章「アジア」では、「医療費を支払える患者は、貧しくて治療費が払えない患者の分も負担する」、すなわち、「患者の3分の1が正規料金を支払い、残りの3分の2は無料で手術を受ける」という画期的な医療システムの眼科病院を開業したゴビンダワ・ベンカタワミを取り上げ、それまでアメリカの企業から無償提供を受けていた眼内レンズをインドで生産することで安価に提供し、マクドナルドの成功を参考に、「安くて美味しいハンバーガーを世界中の街角で販売できるなら、その独創性と効率という宝物をもっと高尚なこと、失明者を救うことに活かせないだろうか」と考え、「患者は数時間の入院で充分。ベッドや病室などの設備はレンタルで安くあげればいい。各室で複数の患者の手術を行う。外科医は一人の患者の手術が終わったら、そのまますぐ後ろの患者の手術に取りかかる。看護師が術後の処置を行い、次の患者を呼び入れる」というファーストフード式の白内障治療システムを開発し、アメリカで眼内レンズ代を含めて1700ドルかかる手術を10ドルで実現したことを紹介しています。
 また、2006年にノーベル平和賞を受けたグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスを、「今回の旅で最大の成功例であり、最大の可能性を秘めたプロジェクトの発案者」として紹介し、「最も助けを必要としている、村で最も貧しい人たち」が、「返済能力がないとみなされ、銀行からお金を借りることすら」できず、「融資を拒否されることが、あらゆる阻害の発端になっている」こと、「多くの場合、貧困の原因は、個人の問題や、怠慢、能力不足ではなく、わずかな元金すら手にできない状況にある」ことに気づき、「貧者の銀行」グラミン銀行を立ち上げたことが語られています。そして、「まず、連鎖の末端にあるもの、人間のことを考える。そして、人間に希望を与えることが大切だ」という言葉を紹介しています。
 さらに、同じバングラデシュで、企業内保育園の運営会社ブルキを創業したスライヤ・ハクを取り上げ、同社の目標が、「女性たちが子供か、経済的な独立かの二者択一を迫られなくてもすむようにすること」であり、「工場に保育所を併設する経済的メリット」を証明するために大々的に調査を行い、「工場内に保育所を作ることによって、生産性が向上すれば保育所運営の経費は充分補えること」を確信した彼女が、このモデルと実現し、各工場に広めていったことを紹介しています。
 日本からは、「化学製品を使わず、自身の健康も損なわず、人間らしい生活を楽しめるようにする」ため、合鴨を使った新しい農法を開発した古野隆雄を紹介し、アジアで7万5千件の農家がこの方法を導入し、「本来なら退治すべき害虫を食べさせることで、鴨のエサ代も節約」でき、「生産性は、従来の農法を上回り、集中農法と同等の水準を達成できるので誰も損をしない。いや、損をするのは化学肥料の販売会社だけだ」と述べています。
 第3章「北アメリカ」では、「従来の援助システムとはまったく異なるアプローチを続ける援助団体」である、アショカ財団の創始者であるウィリアム・ドレイトンを取り上げ、そのやり方が、「人に対して、つまりは、その人の夢を実現させる能力に対して投資する」、すなわち、「その人の発案したレシピや方法論ではなく、その天職に賭ける情熱を支える」という斬新さを持っていることを紹介しています。その内容は、「起業を目指す人たちは、その志の正当性に加え、企業家としての資質についても審査」され、「ひとたび審査に通れば、アショカ財団はその企業家に対し、フェローとしてその後3年間、計画の実現に邁進できるよう、毎月の生活費を支給」し、「研修や研究奨学金、経営指導、法律専門家の斡旋や、メディアへの紹介」などを行うというものであり、「社会起業家は魚を与えたり、漁のやり方を教えるだけじゃないんです。漁業全体が変革されるまで頑張るんです」という彼の言葉を紹介しています。
 第4章「南アメリカ・アフリカ」では、「統計外」の存在である「闇組織」が、経済システムから排除される仕組みを解き明かし、「裏経済」を法治経済に更生させようとILD(自由・民主主義研究所)を創設した、エルナンド・デ・ソトを取り上げ、「なぜ、ペルーでは資本主義経済が成り立たなかったのか。それは、欧米や日本のような『商業権の法的な認知』という資本主義の大前提となる部分が欠如していたからだ。経済活動も発展も、まず法による商業権の保護があってこそだ」という彼の言葉を紹介しています。
 本書は、起業によって社会を変えようとしている人にとって勇気を与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は、もちろん社会起業家たちの驚きのアイデアや豊かな発想力を紹介しているものではあるのですが、それ以上に力点が置かれているのは、そのアイデアなり事業は、彼らの人生にとってどんな意味を持っているのか、彼らがどんな環境や社会の中で生きてきたのか、という部分です。
 その意味では、本書のスタンスは、社会起業家として取り上げられているビル・ドレイトン氏の「アショカ財団」が事業そのものではなく、社会起業家その人に、その熱意に投資していることや、日本のNPOであるetic.が開催しているビジネスプランコンテスト「STYLE」が、事業そのもののアイデアだけではなく、「あぜあなたはその事業をやらなければならないのか」というところまで掘り下げていることに通じる気がします。


■ どんな人にオススメ?

・世界中の「すごい人」に会ってみたい人。


■ 関連しそうな本

 デービッド・ボーンスタイン (著), 井上英之 (監修), 有賀 裕子 (翻訳) 『世界を変える人たち―社会起業家たちの勇気とアイデアの力』 
 渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
 斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』 2005年06月01日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 C.K.プラハラード 『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』 2006年07月28日


■ 百夜百マンガ

仮面ライダーBLACK【仮面ライダーBLACK 】

 現在に続く平成版ライダーのハード路線を方向づけた作品。残念ながらイケメン俳優は出てこないですが、お母さん方もぜひ読んであげてください。

投稿者 tozaki : 2007年03月28日 07:00

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