« 中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖 | メイン | なぜ人は宝くじを買うのだろう 確率にひそむロマン »
2007年03月31日
mixiと第二世代ネット革命―無料モデルの新潮流
■ 書籍情報
【mixiと第二世代ネット革命―無料モデルの新潮流】(#800)
早稲田大学IT戦略研究所, 根来 龍之
価格: ¥2310 (税込)
東洋経済新報社(2006/08)
本書は、「第二世代の誕生というネットワールドの構造変化を背景にして、SNS(ソーシャル・ネットワーキングサービス)におけるネットワーク行動の特性と無料サービスの収益性確立のプロセスについて論じるもの」で、中でも、第2世代の特徴である「リアル×バーチャル」の世界の発展とビジネス化に焦点を当てています。
プロローグ「mixiとは何か?――その誕生と成長――」では、SNSを、「ネット上のコミュニティサイトであるにもかかわらず、友人、知人など顔見知りとのコミュニケーションを楽しもうというまったく新しい趣旨のサービスであり、20~30代の若い世代を中心に、その利用者が急激に増えている」解説し、「ネットとリアルが連動したコミュニケーション」を楽しむことができる「一種の社会的インフラ」になりつつあると述べています。
また、mixiのコンセプトが、「身近な人から刺激を請合い、交流を深め、新しい情報・知識も得て、日々の生活をより楽しく豊かに」であることが解説され、その名前が、「mix(交流する)」と「i(人)」を意味することが述べられています。
第1章「『第二世代ネットコミュニティ』としてのmixi」では、伝統的なコミュニティが持つ性質として、
(1)一定の地理的範囲を伴うこと(地域性)
(2)構成員相互のフェイスtoフェイスの交流があること(物理的交流)
(3)構成員間に共通の価値観が存在すること(共通の価値観)
の3点を挙げ、一方で、mixiネットワークの特徴として、
(1)人への高い関与と信頼が基盤となっている。
(2)リアルな関係とバーチャルな関係が混在している。
(3)自分なりのつながりを多様に持つ。
の3点を挙げ、なかでも、(3)については、「mixiを利用してゆく過程やその結果としてもたらされるネットワークの特徴」であるとしています。
第2章「mixiの構造と特性」では、mixi全体を俯瞰し、参加者の関与対象によって、
(1)マイミクシィ:参加者の「人への関与」に根ざしたコミュニケーションや事故の情報発信活動
(2)コミュニティ:参加者自身の「興味・関心のあるテーマへの関与」に根ざした共通のテーマコミュニティへの参加とコミュニケーション
の「二層構造化」していることを指摘しています。そして、mixiが提供する様々なアクセスコントロール機能によって反映される「機能特性」として、
(1)「招待(制)」機能による「参加者の制約制及び限定性」
(2)「情報公開の階層別制御」機能による「ネットワークの自己制御性」
(3)「足あと」機能による「訪問履歴の相互参照性」
(4)「マイミクシィのアクセス状況閲覧」機能による「アクセス状況の相互参照性」
(5)「コメント書き込み等のアラート」機能による「顕示性と相互視認性」
の5点を挙げています。
また、「読むだけの人」を意味する「ROM(Read Only Member)」に対する言葉として、「ネットコミュニティに積極的に自分の意見を書き込み、中心的役割を演ずる人たち」である「RAM(Radical Access Member)」という言葉を紹介しています。
第3章「mixiにおけるコミュニケーション――情報の発信・伝播と消費行動――」では、mixi内部を流通する情報として、
(1)日記情報:参加者個々が自由意思で書きたい時に書きたい内容を書く。
(2)おすすめレビュー情報:参加者が、ある製品(商品)やサービスについて、主に肯定的な意見を自由意思で書き込む。
(3)「掲示板情報」:当該コミュニティに参加していれば、コメントを書き込むことができる。
の3種類を挙げ、「日記情報」において、「何かを目的とせず、コミュニケーションすること自体を楽しむ性質(コンサマトリー性)」を持つ会話が多いことを指摘しています。
第4章「『バーチャル特性』が果たす役割」では、「リアル特性が高い参加者」に関する仮説として、
(1)活動に関する仮説:リアル特性(傾向)の高い参加者は、ネットワークにおけるコミュニケーション活動に積極的である。
(2)信頼に関する仮説:リアル特性(傾向)の高い参加者は、ネットワークにおいて、相手を信頼しやすく、影響を受けやすい。
の2点を掲げ、この検証のために、ネットワークにおける行動特性についての測定項目として、
(1)mixi内情報に関する行動:コミュニケーションへの参加度や頻度を測定する。
(2)情報への信頼:mixiにおける情報をどの程度信頼し、その影響を受けて共感したり、情報への確信を高めたりしているか。
(3)消費行動:参加者同士の情報交換が、購買意思決定段階における「購入」までの一連の態度変容過程に対し、どの程度影響するか。
の3点を設定しています。
そして、「リアル特性」が高いmixi参加者の特性傾向として、
・高いリアル率
・密な紐帯率
・低い情報公開度
・バーチャルコミュニティへの低い参加度
・「実際に知っているマイミクシィ」への高い信頼度
・「実際に知らないマイミクシィ」「友達の友達」への低い信頼度
を挙げています。
著者は、当初設定した「活動に関する仮説」と「信頼に関する仮説」は棄却され、「mixi内情報に関する行動」「情報への信頼」「消費行動」に影響を及ぼすのは、「バーチャル特性」であったと述べています。
第5章「『第二世代』特有の存在」では、それぞれに独立した「クリーク」を相互に行き来する「パイプ役」として、「mixiにおける人との関係や情報の流れをつないでくれる役割」を果たす「バーチャリアラー」について解説し、マーケティング・コミュニケーションの領域における、「特別な専門知識は持たないが、市場全般の広く、複数のカテゴリー情報や販売店の情報などの横断的な情報を集めて発信する、周囲の人から貴重な情報源として頼りにされているような消費者像」である、「市場の達人(マーケット・メイヴン)」との類似性を指摘しています。
第7章「無料サービスにおける収入源」では、「個人別の『おすすめ商品』に関する情報をeコマースのサイトに表示したり電子メールで送ったりする」「リコメンデーション機能」について解説しています。
第9章「無料サービスの事例紹介2」では、日本初の無料プロバイダーであった(旧)livedoorが、「大手の有料プロバイダと同様、1ユーザにつきメールアドレスを一つ発行し、50MBまでのホームページスペースを割り当てていただけでなく、ニュース、エンターテイメント情報、芸能情報、懸賞企画など、大々的な情報ポータルの運営」も行い、そのコスト負担がかさんだことに言及しています。
第10章「3社のビジネスモデル整理」では、mixi、フォトハイウェイ、(旧)livedoorの3社について、「コスト構造がほぼ共通している一方で、主な収入源はそれぞれ異なっている」ことを指摘しています。
第11章「3社事例の比較」では、(旧)livedoorが、「利用者基盤の増加とともに増えるコストを回収するだけの収入を得ることは最後までできなかった」のに対し、mixiは、「ネットワーク外部性によって、戦略モデルを差別化できるという強み」があり、「利用者基盤と蓄積情報という2つの資源の間に強い相互強化関係があった」ことを指摘しています。
エピローグ「第二世代ネット革命とは何か?」では、「リアル×バーチャル」が、「SNSの登場をきっかけとする、参加者間の新しいネットワークの構造」であると述べています。
本書は、mixiを楽しもうという人にとっては、あまり関係のないことですが、SNSの運営に携わっている人や、次のビジネスのネタを探している人にはお奨めの一冊です。
■ 個人的な視点から
個人的には、ネットワーク理論による分析のところをもっと正面から扱ってほしいという感想はあるものの、それは専門の研究者に譲るとして、このくらいにざっとまとめてもらうと人に説明するときには使いやすそうです。第1部の内容を元にしたパワーポイントの資料とかがあるとうれしいですね。この研究所のページにでも置いてないでしょうか。
■ どんな人にオススメ?
・SNSの先にあるものを見たい人。
■ 関連しそうな本
ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 栗原 聡, 福田 健介, 佐藤 進也 (翻訳) 『スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス』 2006年03月22日
ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日
安田 雪 『ネットワーク分析―何が行為を決定するか』 2005年10月13日
アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
岡本 呻也 『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』 2005年07月18日
■ 百夜百音
【結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HONDARA盤】 クレイジーキャッツ オリジナル盤発売: 2005
合掌・・・。
4月から新社会人の皆さん。社会人の在るべき姿は植木等の「日本一」シリーズに学びましょう。当時の最先端の「東京」を見ることができる上、「釣りバカ日誌」の佐々木さんの若い頃も見れますよ。役回りはいつも同じですが。
『結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HARAHORO盤』
投稿者 tozaki : 2007年03月31日 06:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1320