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2007年03月06日
男女共同参画社会をつくる
■ 書籍情報
【男女共同参画社会をつくる】(#775)
大沢 真理
価格: ¥1019 (税込)
日本放送出版協会(2002/09)
本書は、著者の前著『企業中心社会を超えて――現代日本を<ジェンダー>で読む』の続編的な位置づけで、1993年以来9年間の日本社会の変化と男女共同参画政策を解説したものです。著者は、デフレと少子高齢化の2つの悪循環の媒介項になっている『「不安」を解消し、悪循環を好循環に転換するために、社会政策システムを『両立支援』型に組みかえることを通じて、男女共同参画社会をつくることがカギになる」というメッセージを本書にこめています。
著者は、日本の社会的セーフティ・ネットが、「男性の雇用と処遇が、安泰という以上に右肩上がりであることを前提」とした「男性稼ぎ主」型であり、このことが消費不況に影響していることを指摘した上で、家計構造を危険(リスク)分散型にすることで、将来性のある雇用機会にチャレンジしやすくなる「両立支援」型の社会的セーフティ・ネットに再構築することを主張しています。
また、「男女共同参画が家族を崩壊させる」、「専業主婦や育児を軽視する風潮を助長する」という一部メディアの論調に対し、日本人にとって、「母親が一人で育児に専念する」ことが「非伝統的」であり、1960年頃までは、日本人の大多数は大家族の農家で生まれ、母親は農業労働への従事が最優先で、子育ては年寄りやきょうだい等、多様な人々が分担し、農家の男性も長時間の農業労働に加え毎日1時間以上の家事労働もこなしていたことを指摘し、「親はもちろん、家族外の保育サービス、地域のネットワークなどが支えあう育児は、日本伝統の子育てを21世紀によみがえらせるものとすら」言えると述べています。
第1章「ジェンダーに縛られない社会」では、国際連合開発計画(UNDP)が発表している「人間開発報告」の中で、日本が、「人間開発指数(HDI)」では162か国中第9位にあるにもかかわらず、「女性が積極的に経済界や政治生活に参加し、意思決定に参加できるかどうか」を測る「ジェンダー・エンパワーメント測定(GEM)」では、64か国中31位に落ちてしまうことを挙げ、「日本は先進国の一員として特異である」ことを指摘しています。また年金制度の「性別による偏り」について、
(1)厚生年金の「標準的な年金(モデル年金)」額が、平均程度の賃金を得て制度に加入し続けた「男性被用者」をモデルとして設定されてきた。
(2)第3号被保険者の保険料は、共稼ぎあるいは単身の世帯からの"逆補助金"として支払われている。
(3)第3号被保険者制度と所得税の配偶者控除制度があいまって、有配偶女性が年収100万円前後以下の短時間・低賃金の就労を選考するよう促されている。
(4)夫の死後の遺族年金の額によって、共働きで第2号被保険者として納付してきた保険料を「掛け捨て」にすることが迫られる場合がある。
(5)専業主婦が離婚すると保険料の負担が生じ、さらに夫の死後受けられる遺族年金が再婚後給付停止されるため、結婚の自由を妨げられる。
の5点の問題点を指摘しています。
第2章「『男性稼ぎ主』型の形成と補強」では、いわゆる「標準世帯」とされている「内助の妻」と「会社人間」のカップルが、高度経済成長の結果として登場したものに過ぎないことを述べています。そして、日本の社会保障体系の特徴である「男性稼ぎ主」型の特徴を、
(1)家族頼み:生活はまず家族で支えあうものである、「夫は仕事、妻は家庭」という性別分業を行うことを前提とされた。
(2)男性本位:社会保障は、男性雇用者のニーズを中心に、世帯単位で設計された。
(3)大企業本位:とくに社会保険制度は大企業の労使に有利になっていて、税制もそれを助長してきた。
の3点挙げています。そして、1974年を境に男性の実質賃金の伸びが大きく低下したことを受け、1980年代後半からは専業主婦世帯は少数派となったことを紹介し、それにもかかわらず、日本の社会政策システムは1980年代に逆方向の改革が行われ、配偶者特別控除の導入や第3号被保険者制度の創設など、「女性が就業するにしても、所得を夫の被扶養家族の限度内にとどめるよう促」し、「低賃金のパートタイム就労を助長」した結果、「社会保険制度の空洞化が進行」したことが指摘されています。
第3章「放置されたジェンダー・バイアス」では、アンデルセンによる福祉国家体系の3類型論として、
(1)第1群:「自由主義的」福祉国家――米、カナダ、オーストラリアなど。
(2)第2群:「保守的」福祉国家――オーストリア、仏、独、伊など。
(3)第3群:「社会民主主義的」福祉国家――北欧諸国
を紹介し、日本はこのどれにも当てはまらない分類困難なケースであることが述べられています。そして、1980年前後の日本の福祉国家が、「社会的支出の規模がOECD諸国の最低レベルであり、社会政策が選別主義的で家族支援志向が低く、さらに脱商品化の度合いもまた低く、個人に市場参加をしいるという点で、自由主義的」でありながら、「同時に社会保険の職域分立と階層性(勤め先企業規模別の格差など)では保守的であり、雇用の性別平等でもOECD諸国の最低レベル」であったことが述べられています。
第4章「橋本六大改革の光と影」では、1970年代後半から21世紀にかけて、日本の「福祉見直し」の福祉国家観が、「国民負担率の抑制」を最優先の政策課題としてきたことが述べられています。そして、この路線に対する社会保障制度審議会の95年勧告の言外の批判として、「『公的負担』の抑制を至上命題として『家族による不要、介護、育児等の負担』を増やし、しかも社会保障制度を『男女平等の視点』に立って見直すことを怠るなら、家族を形成し維持する負担は一層大きくなる。『国民負担の抑制』路線は、若い人々、特に女性が結婚を先送りし、子供を産み育てないという方法で、そうした過重な負担を避けようとする傾向を助長し、その結果、少子高齢化をさらに加速するという不合理に陥る」と述べています。
第5章「小泉『骨太方針』を検証する」では、経済戦略会議の「公正な格差」論を、「経済戦略会議の一部の学者メンバーが独創的に作ったものではなく、90年代後半に諸方面で合作されて、主流となってきたもの」であると指摘しています。そして、経済戦略会議のセーフティ・ネット論が、
(1)社会保障給付のナショナル・ミニマムのレベルを高くしすぎると、「モラルハザードが生じるだけでなく、非効率的な大きな政府を作り上げることになる」として、サービスも「社会的な必要最低限」と限定している。
(2)従来の社会保障制度改革について、「これまでの改革も国民負担の増大と社会保障給付の削減の組合せを続けてきた結果、制度に対する国民の信頼感の低下と将来不安の増大をもたらしている」と批判的である。
の2点を挙げています。
また、男女共同参画社会基本等の基本理念として、
(1)男女が性別による差別的取扱いを受けないこと等男女の人権の尊重。
(2)社会制度・慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響を中立なものとするよう配慮。
(3)国・地方公共団体または民間団体の政策・方針の立案及び決定への男女共同参画。
(4)家庭生活における活動と他の活動の両立。
(5)国際的強調。
の5点を挙げています。
第6章「男女共同参画社会への道」では、「安心」の基盤となりうる持続可能な社会政策システムへの改革案として、
(1)「三つの福祉政府体系」を確立し、中立的な税制とする。
(2)雇用平等の確率を。
(3)一元的な所得比例年金を。
(4)介護保障は地方分権を目指した税方式で。
(5)一人一保険証の医療保険を。
(6)ミニマム保障で雇用不安を解消。
(7)普遍的な児童手当と子育て支援を。
の7つの政策を提言しています。
本書は、日本の男女共同参画政策の中心にいる著者ならではの深い関心と幅広い視点が発揮された一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書の中で、日本の社会政策システムが、社会的セーフティ・ネットの機能低下や空洞化があらわになり、「プロクルステスのベッド」と化しているのではないか、という言葉が出てきます。
このプロクルステスとは、ギリシア神話に登場する追い剥ぎで、「捕らえた人を鉄のベッドに寝かせ、ベッドからはみ出す長身の体を切り、短ければ無理やり引き伸ばした」というもので、融通の利かない画一的な制度を「Procrustean bed」と言うそうです。
■ どんな人にオススメ?
・男女共同参画に関する入門書を探している人。
■ 関連しそうな本
赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子 『男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして』 2005年09月08日
脇坂 明, 冨田 安信 (編集) 『大卒女性の働き方―女性が仕事をつづけるとき、やめるとき』 2006年05月02日
赤川 学 『子どもが減って何が悪いか!』 2006年10月19日
伊藤 公雄 『「男女共同参画」が問いかけるもの―現代日本社会とジェンダー・ポリティクス』
佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』 2005年12月06日
ロザベス・モス カンター (著), 高井 葉子 (翻訳) 『企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる』 2005年10月11日
■ 百夜百マンガ
ドラマ化されて人気を博した作品です。「監察医」ものは推理小説の一ジャンルとして確立していますが、マンガでは珍しいんじゃないかと思います。
投稿者 tozaki : 2007年03月06日 21:00
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