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2007年03月29日

広報・パブリックリレーションズ入門

■ 書籍情報

広報・パブリックリレーションズ入門   【広報・パブリックリレーションズ入門】(#798)

  猪狩 誠也
  価格: ¥2200 (税込)
  宣伝会議(2007/01)

 本書は、「広報あるいはパブリックリレーションズを初めて学ぶ人のため」の入門書です。米国で生まれた「パブリックリレーションズ」が日本に導入されて60年経ち、「日本に導入された時代と今日とでは社会の様相がまったく異なってしまった」ため、「社会にとって、また組織にとっての重要性はますます増してきた感がある」と述べられています。
 第1章「広報・パブリックリレーションズとは何か」では、「広報・パブリックリレーションズ」を、「組織とそれを取り巻く人々・集団との関係を円滑にし、お互いが信頼できる関係を作り、維持する考え方であり、技術である」と定義しています。
 また、行政広報論の第一人者である井出嘉憲教授が提唱する、PRの「4つの理念」として、
(1)事実に基づいた正しい情報を提供する。
(2)ツーウェイ・コミュニケーションを確保する。
(3)「人間的アプローチ」を基本とする。
(4)「公共の利益」と一致させる。
の4点を紹介しています。
 さらに、広報活動を、
(1)社外情報の受信
(2)社外情報の社内への発信
(3)社内情報の受信
(4)社内情報の社内への発信
(5)社内情報の社外への発信
の5つに大別しています。
 第2章「広報・パブリックリレーションズの歴史」では、1947年にGHQの指令により、府県などの地方行政機関に、「国民統治の方法のひとつとして"パブリックリレーションズ"の導入が示唆」され、日本の行政が考えた訳語「広報」が広がっていったとして、その語源の一つに、「戦前、日本が現在の中国東北部に傀儡国家『満州国』を作ったときに、そこに日本が設定した国策企業の南満州鉄道(満鉄)に『弘報課』があったこと、遅れて満州国政府にも『弘報処』という部門が存在していたこと」の影響を挙げています。
 また、占領軍の米軍スタッフが、日本の民主化のために、「国民にはよく知らせ、国民の声をよく聴くべきだという民主主義の初歩ともいえるパブリックリレーションズの理念を熱心に指導した」にもかかわらず、日本の行政機関は、「敗戦まで、行政は国民の声を聴くなどほとんど考えもしなかった」ため「広報とはほとんどが"お知らせ"一辺倒」であり、「当時、行政広報の指導的立場にあった人は"広報"と訳したことが、『PRとは広く知らせることだ』という誤った観念を植え付ける原因ともなったと述懐している」ことを紹介しています。
 一方、民間企業には、
(1)電通(当時は電報通信社):吉田秀雄社長がGHQに接近する間にPRの考え方に触れた。
(2)証券業界:野村證券の奥村綱雄社長を中心に、証券民主化、大衆化をスローガンにしていた。
(3)日本経営者団体連盟:労使関係安定化方策のための経営視察団をアメリカに派遣し、そのときに、社内報、提案制度、態度調査などのパブリックリレーションズとヒューマン・リレーションズを持ち帰った。
の3つのルートでPRという概念が導入されたことが解説されています。
 第5章「広報・PR活動のマネジメント」では、経営戦略における広報・PR部門の役割として、
(1)経営戦略の策定の一部を分担すること
(2)経営戦略遂行のためのコミュニケーション戦略を策定・実行すること
(3)社外への発表
の3点について解説しています。
 第6章「コミュニケーションとコミュニケーション手段」では、企業に関わるコミュニケーションについて、
(1)社内コミュニケーション(Internal Communication)
(2)社外コミュニケーション(External Communication)
の2つに大別し、「企業にとって、社内コミュニケーションは社外コミュニケーションの質を高める上で重要である。それは、企業が人々に理解され、信頼されるためには、企業で働く人々の一人ひとりがステークホルダーとのパーソナル・コミュニケーションによって個人としても組織人としても理解・信頼されることが前提になるからである」と述べています。
 また、企業内コミュニケーションのために、「組織内部で使う言葉、概念を組織のメンバー全員が共有できるように、その組織特有の言葉を新入従業員のときから教え込んだこともひとつの知恵であった」が、「こうした組織特有の用語の使用は、他の組織と融和を阻み、独善性を生み出しやすい」として、電電公社の民営化時に石川島播磨工業から総裁として乗り込んだ真藤恒氏が、「電電ごでしゃべるな、日本語で話せ」といったエピソードを紹介しています。
 さらに、マス対象のコミュニケーション理論として、
(1)「二段階の流れ」仮説:マスメディアによる上方は、オピニオンリーダー(インフルエンサー)を経て、活動性の低い人々(フォロワー)に流れる。
(2)「議題設定機能」:メディアが公共の問題について人々の議題、その重要度、優先順位、枠組みまで決定する。
(3)「沈黙の螺旋」:メディアが特定の意見を唱導すれば反対意見は沈黙し、時間とともにますます特定の意見が支配的になっていく。
の3つの基礎理論を紹介しています。
 第7章「メディア・リレーションズ」では、パブリシティを、「企業や団体が、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどの各種のメディア(客観的な報道機関)に対して、公共との関わりのある情報を提供し、そのメディアに主体的に報道してもらうこと」と定義し、
(1)マスメディアを使うこと。マスメディアは基本的には公共性がある。したがって、その情報には、社会性、公共性がなければならない。
(2)情報の選択の責任はメディアが持つ。したがって、その情報は真実でなければならない。同時にニュース性が必要である。
(3)ニュース性が必要であっても、誇大であったり、事実を曲げてはならない。もしそれが後で分かったら、そのメディアからは見向きもされなくなるだろう
の3点を挙げ、マスメディア対応の原則として、
(1)誠実
(2)迅速
(3)正確
(4)公平
(5)冷静
の5点を挙げています。
 第10章「エンプロイー・リレーションズ(社内広報)」では、「企業で働く社員が最も大事なステークホルダーであることは当然である」とした上で、直接的には人事部門の担当としながらも、内部のコミュニケーションという観点から広報部門がかなり力を入れていかなければならない点が多い、としています。
 また、「トップの経営に賭ける情熱、夢を社員に伝えなければ、社員はその夢を共有できない。それは電子メディアや年数回刊行の活字社内誌だけでよいのか、生の集会で、あるいは、せめて映像で伝えれば、感動の共有ができるのか」は、「広報パーソンの腕の見せどころ」であるとしています。
 さらに、社内広報も、「広報・PRの原則通り、双方向型でなければならない」ため、「公式ルートでは収集できない情報を集めること」も重要な職務であると述べています。
 そして、「感動の共有化」を図るために、
・コンテスト(キャッチフレーズ、論文、商品アイデア、QCサークルなど)
・発明・優秀セールスパーソン・社会貢献や文化スポーツに活躍した社員の表彰
等のイベントを時折開催することも大事であると述べています。
 具体的には、活字社内報に関して、
(従来)社内融和をモットーにして、できるだけたくさんの社員の顔写真を入れ、趣味を語ったり、わが子の絵を載せたりという「人間関係型」といわれる人事・労務部門発行の月刊誌が多かった。
(現在)コーポレート・コミュニケーション戦略の一環であり、社外情報も社内情報も重要な情報は全員で共有しなければならないため、広報部門が担当することが多くなっている。
 第11章「ネット広報・PR」では、ブログの特性として、
(1)個人からマスに対して情報発信することが促進される。
(2)コミュニケーションをとおしたクリエイティブが求められる。
(3)更新をこまめに実施できる運営体制が必要不可欠である。
(4)コメント機能によりコミュニケーションが盛んに行われ、ネガティブな情報も迅速に流通するリスクを併せ持っている。
(5)ネガティブなコメントやトラックバックに対する適切な対応が重要。
の5点を挙げています。
 第13章「危機管理」では、「広報は危機管理にはじまって危機管理に終わる」とした上で、危機管理を、
(1)クライシス・マネジメント:緊急事態が発生した場合の対応
(2)リスク・マネジメント:危機予防や保険によるリスク・ヘッジ
の2つに大別しています。
 そして、クライシス・コミュニケーションとして、「社内に対してはきちんと情報を流しておくことが重要」とし、「速報はイントラネットで、一段落したら活字社内報で詳細に報告する。特に再発を起こさないためにも原因をはっきり伝えておきたい」と述べています。 また、危機管理の基本方針を考える際には、
(1)「最悪の事態」を想定しておくこと。
(2)事実を隠さないこと――事実を隠し、後で露見した場合、事態は間違いなく悪くなる。
の2点をまず頭においておきたいと述べています。
 さらに「記者会見の5原則」として、
(1)謝罪
(2)現状説明
(3)原因究明
(4)再発防止
(5)責任表明
の5点を挙げています。
 本書は、広報とパブリック・リレーションに携わる人間にとっては、是非読んでおきたい一冊です。


■ 個人的な視点から

 広報というと、外に発信する機能ばかりがイメージされますが、それ以上に社内への情報発信や流通促進が広報の重要な機能であることが本書で知ることができます。
 社内への情報発信の方法としてまず挙がるのは、日本企業の家族的経営の特徴の一つともいわれている社内報ですが、これは、戦後、アメリカの企業を視察に訪れた日本企業の調査団が、当時の「世界一の企業」であったIBMの社内報を見て、それを真似てはじめたのだという説があります。社内報の他にも終身雇用や手厚い福利厚生なども、日本企業の特徴といわれていますが、もともとは、アメリカの企業であったIBMを真似て創めたものが、半世紀後にアメリカへ日本企業の特徴として「逆輸入」されたものなのだそうです。


■ どんな人にオススメ?

・この4月から広報担当になってしまった人。


■ 関連しそうな本

 井之上パブリックリレーションズ (著), 井之上 喬 (編集) 『入門 パブリックリレーションズ―双方向コミュニケーションを可能にする新広報戦略』 2006年12月13日
 矢島 尚 『PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル』 2006年11月13日
 ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳) 『コーポレート・コミュニケーションの時代』 2006年10月23日
 世耕 弘成 『プロフェッショナル広報戦略』 2006年09月22日
 電通プロジェクトプロデュース局ソーシャルプロジェクト室 (編集) 『広報力が地域を変える!―地域経営時代のソーシャル・コミュニケーション』 2007年02月21日


■ 百夜百マンガ

とつげきウルフ【とつげきウルフ 】

 燃える若者やオッサンが主人公である場合が多いですが、珍しく子供が主役です。そのせいか大当たりはしませんでしたが。

投稿者 tozaki : 2007年03月29日 08:00

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