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2007年05月19日
「男女共同参画」が問いかけるもの―現代日本社会とジェンダー・ポリティクス
■ 書籍情報
【「男女共同参画」が問いかけるもの―現代日本社会とジェンダー・ポリティクス】(#849)
伊藤 公雄
価格: ¥2310 (税込)
インパクト出版会(2003/08)
本書は、「『男女共同参画』という言葉をめぐって、現在、繰り広げられている多様な議論を交通整理するとともに、ぼくなりの考えをまとめるため」にかかれたものであり、保守系のメディアでの「ジェンダー・フリーたたき」「フェミニズムたたき」が目立って増え、「地方自治体の議会などで、急激にバックラッシュ(逆流)の動きが目立ってきた」ことに、「どうも面白がってばかりいられない」という動機から執筆されたものです。
第1章「現代日本社会とジェンダー・ポリティクス」では、今の社会が、「男だ女だといろんな形で枠づけがされている」ということに敏感になりながら、「今あるジェンダー・バイアスを是正していかなければならない」ということを目的とした研究や教育である「ジェンダー学」の必要性を述べるとともに、戦後、「『男は仕事』、『男は死ぬまで頑張れ」という生き方の中で、男性たちも、人間性を奪われてきた。だから、男性自身のよりよい人生のためにも、男性の意識や生活スタイルの見直しの必要がある」ことを主張しています。
そして、「女性が働くと少子化が進むんじゃないか」という意見に対し、現在少子化が進んでいる経済先進国として、日本とイタリア、ドイツを挙げ、これらの国が、「戦争に勝つためには人口を増やさなくてはならない。だから、女性は家庭において子どもを産んでもらおう」という共通した家庭政策を持ち、戦後も「女性は家庭にいるのが一番」という政策を採り続けた結果、専業主婦率が高く、少子化が進んでいることを述べています。
第2章「バックラッシュとその周辺」では、「男女共同参画」という「舌を噛みそうな言葉の成立」が、「『言葉』の『意味』をめぐる『力関係』の結果』でもあったことを指摘し、当初、女性運動から出た「男女平等」という言葉に対し、保守派政治勢力から「平等は困る」という声が出ると同時に、女性たちからも、「『平等』を口実に、女性の妊娠・出産という生理的機能の保護政策を無視するのではという不安」が出てきたために、「男女共生」という言葉が出たが、これに対し、「男女の特性論」を前提にしているとの反論が女性から出されたため、、結局、「男女の意思決定も含む対等な参加・参画」を意味する「男女共同参画」が、1990年代半ば以降定着したことが解説されています。
また、「男女共同参画の動きは、ソ連崩壊で終焉をつげたはずのマルクス主義者たちの隠れ蓑」という主張の裏に、「だまされた。こんな重要なことと知っていたら、男女共同参画社会基本法など通さなかったのに」という保守派政治勢力の思惑が透けて見えると指摘した上で、日本型バックラッシュの議論が、
(1)「らしさ」の縛りからの自由を進める男女共同参画(ジェンダー・フリー)の動きは、あるべき「らしさ」を否定し日本の文化や男女関係を破壊するのではないか。
(2)「専業主婦」否定の動きではないか。
(3)家族の絆を破壊するのではないか。
の3点にまとめることができると述べています。
そして、「知っているフェミニストの名前をあげよ」という学生アンケートで最初に名前が挙がる田嶋陽子氏を「象徴」として作られた、「フェミニズム=『男社会を一方的に批判するだけ』という『単調さ』イメージ」が多様なメディアで再生産されていることを指摘しています。
さらに、米国の保守化の動きの中で注目を集めている、「プロミス・キーパーズ」が、「資金援助者に極右勢力がいる」との指摘を受けるほどの「明らかに保守的な傾向をもったキリスト教の原理主義的な男性運動」であるにもかかわらず、
「男たちよ家庭・コミュニティに帰れ」
「男性はよき夫、よき父たれ」
「男性は家庭のサーバントとして活動せよ」
「男はもっと感情生活を取り戻し、男性同士の友情を深めなければならない」
と、「男性の家庭への回帰」を主張するという「一風変わった傾向」を持っていることを紹介しています。
第3章「教育をめぐる論争」では、「ジェンダー・フリー」という言葉が、「特に保守系の新聞や雑誌を中心に、ホットな言葉として登場しつつある」とした上で、「フリー」という言葉が、「ジェンダーからの自由」ではなく、「ジェンダーのない状況」→「まったく性差のない状況」へと拡大解釈される恐れを指摘するとともに、「ジェンダーの縛りから自由になった、『男だから』『女だから』という固定的な性別にとらわれない状況を意味する言葉として用いられる」という著者の定義を述べています。
また、政治面では反ジェンダー・フリー・キャンペーンの急先鋒である産経新聞が、生活面では、「同性愛者や性同一性『障害』者などセクシュアル・マイノリティの人権についての記事の掲載に、全国紙の中でもず抜けて積極的なメディア」であることを紹介しています。
著者は、ジェンダー・フリーをめぐる議論が、「すでに決着がついているように思う」とする理由を、「これを批判する議論には、一方的な決め付けから出発し、自分で思い込んで勝手に立てたとしか思われない議論(「ジェンダー・フリーは性差の否定だ」)で相手の主張を押し込め、政府の発言(「男女共同参画は性差の否定ではない」というきわめて当然の発言)の一部を引用して、『誤解』を拡大するという印象がどうしてもぬぐえない」からであると述べています。
また、家庭科教科書をめぐる、高橋史朗明星大学教授によるバッシングのポイントとして、
(1)専業主婦と良妻賢母を否定的に記述している。
(2)「個人の自立と平等なパートナーシップ」をキーワードにして「家族の中の民主主義」をことさら重視し、伝統的な「家族」を相対化して、「脱・家族」を目指している。
(3)「子どもは3歳までは常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後に悪影響を及ぼす」という「3歳児神話(母性神話)」を明確に否定している。
(4)「父性」「母性」という用語を避け、「親性」「育児性」「養護性」という耳慣れない用語を強調している。
(5)「男らしさ」「女らしさ」よりも「人間らしさ」を、ことさら強調。
(6)多様な家族・家族像を強調し、「夫婦別姓」を一方的に支持する偏った記述が見られる。
(7)未成年者を対象にした教科書なのに、「性的自立」すなわち性的自己決定権をことさらに強調している。
(8)児童の権利条約を歪めた拡大解釈をして、子供を「権利行使の主体」と位置付けている。
(9)1995年に北京で開催された第4回国連世界女性会議で、産む産まないを決めるのは、「女性の自己決定権」であり、人工妊娠中絶も女性の基本的人権の一部(リプロダクティーブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康/権利)と明記している。
(10)「女子差別撤廃条約」とのかんれんから。家庭科を男女共修の教育課程としたこと。
の10点にまとめ、解説しています。
第4章「日常生活の中のジェンダー・ポリティクス」では、夫婦のすれ違いのきっかけが、「何よりも子育て期」にあり、「育児参加の少ない夫たちに対しては、妻たちはいつのまにか、愛情を感じなくなってしまう」という研究を紹介し、日本では、「子育て期の亀裂が(妻の方から見れば)むしろ年をとるにつれて拡大していく」ことを指摘しmその背景には、「子育てへの夫の協力をあきらめ始め」、「自分ひとりに子育てを押付ける夫への憎しみ」が、妻たちの夫離れを生み出すのではないかと述べています。
また、男性がセクシュアル・ハラスメントに走る原因として、
(1)性役割のあふれ出し論
(2)「暴力は男性の本質」的視点
(3)ヘゲモニックな男性性を求める志向性――男性へのこだわり
の3点を挙げ、このうち(3)に関してはさらに、
・優越志向:他人より優越していたい、勝負に勝ちたいという心理的傾向
・所有志向:できるだけたくさんのモノを所有したい、しかもそれを自分のモノとしてコントロールしたいという心理的傾向
・権力志向:自分の意思を相手に押付けたいという心理的傾向
の3つに区分し、それぞれ、
「男は女に対して優越していなければいけない」
「女性をモノとしてきちんと管理できるぐらいでないと一人前の男ではない」
「男は女に対して自分の意思を押付けられるくらいでなかったら男ではない」
というヘゲモニックな男性性が、「かなり固定的なものとして身体化・内面化されているのではないか」と指摘しています。そして、セクシュアル・ハラスメントは、「優越、所有、権力の三つの志向性が合体する形であらわれる、典型的なケースなのではないか」と述べています。
本書は、男女共同参画をめぐる議論の、推進派の論点を押さえたい人にはコンパクトな一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
米国のプロミス・キーパーズの資金源が極右勢力ではないか、という記述がありましたが、日本の「反ジェンダー・フリー」戦線を張る全国的な動きの背景にはどういう勢力が援助しているのでしょうか。全国の自治体の議会で一斉に統一的なロジックで行動が進められていることをみると、単に保守政党という枠では捉えきれない動きのように思われます。
■ どんな人にオススメ?
・ジェンダー・フリー論争に足を踏み込みたい人。
■ 関連しそうな本
赤川 学 『子どもが減って何が悪いか!』 2006年10月19日
上野 千鶴子 『生き延びるための思想―ジェンダー平等の罠』
上野 千鶴子, 宮台 真司, 斎藤 環, 小谷 真理 『バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』
大沢 真理 『男女共同参画社会をつくる』 39147
木村 涼子 『ジェンダー・フリー・トラブル』
■ 百夜百音
【細野晴臣トリビュートアルバム-Tribute to Haruomi Hosono-】 Compilation オリジナル盤発売: 2007
聴く人によりますが、このメンバーは豪華です。細野ファンじゃなくても気になるアーティストが参加しているんじゃないでしょうか。欲しいなあ~~~~!!
投稿者 tozaki : 2007年05月19日 10:00
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