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2007年07月11日
下流喰い―消費者金融の実態
■ 書籍情報
【下流喰い―消費者金融の実態】(#902)
須田 慎一郎
価格: ¥735 (税込)
筑摩書房(2006/09)
本書は、住宅ローン除いても73兆円の信用供与額をもつ消費者信用産業に関して、「いま消費者金融の現場で何が起こり、どんな問題が浮上しているのか」、「武富士やアイフルを初めとする大手で、なぜこれほどまでに不祥事が続き、そうしたさまざまな問題点が表面化しながらも、利用者が全国的に増え続けている」のか、「近年になって猛威を振るうようになったヤミ金業者とは、一体何者か」など、「現今の消費者金融を巡る現状や問題点、対処法について」、筆者独自の取材を交えながら検証を行っているものです。
第1章「サラ金一人勝ち」では、アイフルが推奨している不動産担保ローンを、「明らかな過剰融資のうえ、最初からその担保自体を収奪せんがための大掛かりな仕掛けと言っても過言ではない」と述べ、「チワワを使ったテレビ・コマーシャルのソフトなイメージとは裏腹に」、アイフルがかつて「サラ金三悪」と言われた、
(1)高金利
(2)過剰融資
(3)過酷な取立て
を、「いまなお正しく踏襲するリーディング・カンパニーとして、消費者団体、市民グループなどから蛇蝎のごとく忌み嫌われてきた」と述べています。
また「利息制限法」と「出資法」の隙間問題である、「出資法の上限金利で貸し付けても違反に問われることのなかった、通称『グレーゾーン金利帯』(年29.2パーセント、日歩8銭まで)の存在根拠になってきた」ことについて解説し、06年1月の貸し金業者に対する裁判で、最高裁が、「利息制限法と出資法の上限金利が食い違うことにより生じていた『グレーゾーン金利帯』そのものを、ついに事実上、認めないと宣言した」ことを述べています。
一方で消費者金融側が、
「借りたものは返すのが当たり前だろがっ」
「借りるときは、"お願いですから、貸してください"と頭を下げるくせに、返すときになって金利が高いだのなんだの言いやがって!」
という、「時代劇に登場する高利貸しが口にするお決まりのセリフ」が"本音"であり、「いくら理論武装しようとも、彼らの本音は、『借りたものは返すのが人の道』というところに集約される」と述べています。
第2章「悪魔的ビジネスモデル」では、「この数年、メガバンクの消費者金融分野への進出ぶりは目を瞠るものがあった」として、その中でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFJ)と、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)の2行であると述べています。
そして、「ごく大づかみ」と前置きした上で、三井住友FGでは、「リスクの最も高い客はプロミスへ、次に高い客がアットローン、最も低い客が三井住友FGへ――という三階層の振り分けが可能に」なったことが解説されています。
また、消費者金融の従来の顧客イメージが、「主に中年男性」で、「収入はあまり多くない、フツーのサラリーマン。家庭を持っていれば、それに越したことはない」、というものであったのに対し、「今や消費者金融大手の主たる顧客層は、実態として『低収入の若年男性』の方にシフトしてしまっている」ことを解説しています。
さらに、消費者金融業会の成長率にも翳りが見えてきたことから、「あらたなビジネスモデル」として、大手各社が、
(1)顧客のマーケット層をより若年層にシフトしてゆく
(2)貸付ロットを大きくする
(3)事業者融資への展開
の3点の路線変更を行ってきたことを解説しています。
第3章「多重債務者350万人時代」では、新宿・歌舞伎町の裏社会で行われている、歌舞伎町で新手のサラ金である通称「レディース・ローン」会社を経営する暴力団のフロンと組織が主催すると言われる「おんな市」への侵入ルポが収められています。
第4章「下流喰いの深淵」では、「貸金業登録の有無が、ヤミ金かそうでないかを見分ける指標になる」時代は、当の昔に過ぎ去ったとして、「知事登録をしている業者の中にも、今やヤミ金業者はたくさん紛れこんで」いて、東京都の場合、「登録して3年以内の業者を『都(1)(トイチ)業者』と呼び、全国で摘発されるヤミ金の半分近くがそのトイチ業者とされている」ことが述べられています。
そして、「金貸しにオフィスを貸そうとする大家はさほど多くはない」ため、「そうした際にオフィス物件と都への届出事務などをワンパッケージにして営業する司法書士が、当然、引く手あまたとなる」ため、彼らが持ってくる物件の一つが、上野の有名なヤミ金ビルであると述べています。
また、ヤミ金の主な経営資源として、
(1)タネ銭(もしくは金主)
(2)携帯電話
(3)銀行口座
の3点を挙げ、「ヤミ金と『オレオレ詐欺』『架空請求詐欺』『振り込め詐欺』などが、すべてイコールの関係にあることが一目瞭然」だと述べています。
そして、奄美大島出身者で固められ、取立ての厳しさから「島グループ」と呼ばれて恐れられていたヤミ金グループを取り上げ、「誤解を恐れずに言えば、離島出身の若者という、これも一種の弱者が多重債務者という社会的弱者を喰う――いわば『下流喰い』とでも言うべき構図が、そこに現出していた」と述べています。
第5章「庶民金融の虚実」では、「信用金庫業界に小原あり」と呼ばれた城南信用金庫の故・小原鐵五郎元会長の金言として、
「貸すも親切、貸さぬも親切」
「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」
という言葉を紹介しています。
第6章「何が必要なのか」では、「マスメディアにとって大口の広告スポンサーである消費者金融が、一種のタブーと化しつつある現状」について、著者自身の体験談として、夕刊紙上で銀行系の某消費者金融ブランドに関して、「メガバンクともあろう存在が、そもそもサラ金と組むとはいかがなものか」という持論を展開したところ、大手広告代理店が、「いきなり編集部を素通りして、夕刊紙の親会社である某新聞社の広告出稿を全面ストップすると圧力をかけてきた」ことを語っています。
本書は、メディアではヤミ金などの事件になったものでしか登場しない、消費者金融の深刻な現状を解説してくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
本書のタイトルに「下流」とあるので、借りる側の方に焦点が置かれたものを期待していたのですが、どちらかというと消費者金融の業界事情などの方に力点が置かれ、「下流」の生活実態や、なぜ借りてしまうのか、という部分の記述は少なめに感じました。
■ どんな人にオススメ?
・消費者金融業界事情に関心がある人。
■ 関連しそうな本
山田 昌弘 『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』 2006年01月11日
樋口 美雄, 財務省財務総合政策研究所 『日本の所得格差と社会階層』 2006年02月01日
苅谷 剛彦 『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』 2006年02月14日
佐藤 俊樹 『不平等社会日本―さよなら総中流』 2005年03月22日
橘木 俊詔, 斎藤 貴男, 苅谷 剛彦, 佐藤 俊樹 『封印される不平等』 2006年02月10日
橘木 俊詔, 森 剛志 『日本のお金持ち研究』 2006年06月13日
■ 百夜百マンガ
スポ根ものは昔は少年誌の花形でしたが、ギャグの世界でも定番という座は外さないのかもしれません。
投稿者 tozaki : 2007年07月11日 07:00
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