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2007年07月29日

安全安心のための社会技術

■ 書籍情報

安全安心のための社会技術   【安全安心のための社会技術】(#920)

  堀井 秀之
  価格: ¥3360 (税込)
  東京大学出版会(2006/01)

 本書は、「安全安心を達成するためには、安全のためにこれまで構築してきた工学的な枠組みだけでは不十分」であり、「安心を取り扱う心理学的なアプローチはもちろん、それを包含したもう少し大きな、そして新しい枠組みが必要」という問題意識に基づき、「科学技術の成果と社会制度をうまく組み合わせることによって生み出される問題解決策」である「社会技術」に関して書かれたものです。
 第1章「安全安心のための社会技術」では、社会問題の解決を困難にしている要因として、
(1)問題の複雑化
(2)著しい科学技術の進歩に伴う問題の高度化
(3)価値の多様化
の3点を挙げています。
 そして、その解決策を開発するためのアプローチとして、
(1)問題の全体像把握
(2)分野を越えた知の活用
(3)問題解決志向の知識連携
の3点を上げ、「そのような問題認識と解決のアプローチに基づいて開発された解決策」を「社会技術」であり、「社会問題を解決し、社会を円滑に運営するための『技術』である」と定義しています。
 第2章「社会技術の開発・実装事例I」では、「医療安全達成の診療ナビゲーションシステム」に関して、「医療の質の向上」に関する研究の歴史が浅く、「基本的に医療スタッフの知識や技術の向上は個々人の問題として位置づけられてきた」ため、「病院における個々の診療の質に直接寄与する可能性がある技術に、病院(組織)として関与するという情報システムは、費用対効果が直接見えにくい」ため普及してこなかったことが解説されています。
 また、「地震被害の可視化技術の開発」に関して、「個人個人を対象とした地震防災」が、研究開発の必要性が高く、自身の危険性に対する関心を高めることがまず必要である」と述べています。
 「オントロジーに基づく知識の社会共有支援」に関して、AIや知識工学の文脈において用いられる「オントロジー」について、「社会技術的文脈」で用いられるオントロジーを、
(1)リンクによって相互に関係付けられた概念の構造である。
(2)ある特定のコミュニティにおいて広く受け入れられている。
(3)関心の対象となる全ての概念を適切な詳しさで網羅している。
(4)ある特定の専門領域に関係する。
の4つの性質を持つものと定義しています。
 「緊急時対応のマルチエージェントシミュレーション」に関しては、危機対応におけるソフトウェア面でのシステム設計を行うため必要となるものとして、
(1)様々な災害や事故によって生じる被害状況や緊急事態をできる限り網羅的に想定
(2)その中で周辺住民がどのような行動をとるのかその傾向を理解、予測
(3)危機対応を行う関係諸機関が、迅速な情報収集・伝達と適切な対応・連携を行えるように規則、手順、役割分担などの具体的な仕組みを整備
(4)適切なシナリオに基づく訓練を行って運用方法を習得
(5)訓練で得られた反省点を適宜防災体制の改善へ反映させる
の5点を挙げています。
 第3章「社会技術の設計方法」では、現代日本の安全法の特色として、
(1)権限の大きさに比べて行政コストを抑制したシステムを形成してきたが、その有効性が問われている。
(2)縦割りが持続していること。
の2点を挙げた上で、「様々な分野における類似の課題を横断的に捉えるとともに、行政、学会など第三者機関、保険など産業界をつなぐような場において実験を積み上げていくプロセスを構築する必要がある」と述べています。
 第4章「社会技術の開発・実装事例II」では、「知識の流動化・再分化・主観化が進んでいる」一方で、「社会技術基盤は社会全域にまたがる分野横断的なものであることが求められる」情勢の下で、知識創造と伝承のプロセスを有効に作動させるための装置として、「会話という人間にとって最も自然なコミュニケーション様式を基調とする会話型知識プロセスという方式を導入し、それを実現するための技術的枠組み」について述べています。
 その例として、地震防災の場合に、「地域コミュニティの構成員が協力して、コミュニティに特化した知識創造と伝承のプロセスを作り上げることによって、コミュニティで共有された文脈の中にコミュニティ構成員の相互の信用が付与されたコミュニティ独自の防災知識体系が想像されるようになることが期待される」と述べています。
 本書は、「社会技術」という観点から安全安心の問題に光を当てた一冊です。


■ 個人的な視点から

 主観的な問題と思われがちな「安全・安心」という問題が、かなり技術的な問題であることが本書を読むとわかります。それも「社会技術」という聞きなれない技術であることを理解する、という意味でも本書の価値があるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・水と安全はただだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 岡本 浩一, 今野 裕之 『組織健全化のための社会心理学―違反・事故・不祥事を防ぐ社会技術』 2007年01月24日
 岡本 浩一, 石川 正純, 足立 にれか 『会議の科学―健全な決裁のための社会技術』
 岡本 浩一, 鎌田 晶子, 堀 洋元, 下村 英雄 『職業的使命感のマネジメント―ノブレス・オブリジェの社会技術』
 岡本 浩一, 鎌田 晶子 『属人思考の心理学―組織風土改善の社会技術』
 岡本 浩一, 本多‐ハワード 素子, 王 晋民 『内部告発のマネジメント―コンプライアンスの社会技術』
 樋口 晴彦 『組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか』


■ 百夜百音

FIRST FINALE【FIRST FINALE】 オメガトライブ オリジナル盤発売: 1985

『FIRST FINALE CONCERT』FIRST FINALE CONCERT

投稿者 tozaki : 2007年07月29日 22:00

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