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2007年08月03日
世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す
■ 書籍情報
【世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す】(#925)
ジョセフ・E. スティグリッツ (著), 楡井 浩一 (翻訳)
価格: ¥1890 (税込)
徳間書店(2006/11)
本書は、前著『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』の続編的な位置付けとなる、「経済そのものと、経済システム構築のために政治がどう利用されてきたか」を題材として取り上げたものです。
第1章「不公平なルールが生み出す『勝者』と『敗者』」では、本書が、「商品、サービス、資本、労働のフローが増加することにより、世界各国の経済がさらに緊密になる」という経済面の「狭義のグローバル化」を取り上げ、「グローバル化の利は、世界中で生活水準が向上する点にある」と述べています。
そして、「実行すべき事柄」は山ほどあるとした上で、
(1)貧困の広がり
(2)対外援助と債務免除
(3)不公正な貿易
(4)ワシントン・コンセンサス
(5)環境の保護
(6)国際経済機関のガバナンスの欠陥
の6つの分野で、
・現時点で改革がどこまで進んだのか
・目標達成まであとどれくらいか
の2点について「国際社会が解明を求めている」と述べています。
また、「過去150年間にわたり、政治力と経済力」の中核を占めてきた「国民国家」が、
(1)世界規模に拡大した経済の力
(2)権限の以上を求める国際政治の力
の2方面からの圧迫にさらされている、と述べています。
第2章「発展の約束――ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ」では、「グローバル化によって、東アジア諸国は貧困から抜け出すことができたが、「グローバル化を無条件で受け入れていたわけではなく、巧みに管理していたのだ」として、「東アジア諸国が成長と安定を同時に実現させた」と述べています。
また、「重要なのは、個人個人の所得ではなく」、「国全体の生活水準」であり、「個人所得と生活水準は、似て非なるもの」であると述べています。
そして、開発政策が成功するためには、
・市場
・政府
・個人
の3本柱に合わせて、
・共同体
という4本目の柱が必要であるとして、バングラディシュの「グラミン銀行」の事例を取り上げています。
第3章「アメリカを利する不公正な貿易システム」では、北米自由貿易協定(NAFTA)が「期待に添えなかった原因を理解することは、貿易の自由化が失望をもたらした原因を理解する一助となる」として、NAFTAが、「関税を撤廃する一方、非関税障壁が丸ごと存続することを容認した」ことを指摘しています。
また、WTOについて、「最も重要なのは、史上初めて実効的な――もちろん限定的ではあるが――強制メカニズムが盛り込まれた点」であるとして、「違反によって被害を受けた国は、加害国に貿易制限措置で報復することが許される」ことが、「驚くほどの効果を挙げた」と述べています。
さらに、「多国間貿易自由化交渉の時代は、終わりを迎えつつある」として、途上国が幻影を捨て去り、先進国にも保護主義の機運が高まっていることを指摘しています。
そして、アメリカにおいて、「巨額の軍事支出を正当化する理由の一つとして、各業界にもたらされる利益が臆面もなく語られる」ことについて、「軍事支出の隠れ蓑の下で、非効率な産業政策を遂行できる」ことを指摘するとともに、アメリカが悪用している非関税障壁として、
・セーフガード
・ダンピング課税
・技術的障壁
・原産地原則
等を挙げています。
著者は、「わたしはいまでも希望を捨てていない」として、「世界は遅かれ早かれ――早い方が望ましいが――より構成で親・開発的な貿易体制の創出にとりかかるはず」であると述べています。
第4章「知的財産権を強化するアメリカの利権集団」では、欧米の製薬企業が独占価格を維持する限り、「途上国では、一握りの人々しか薬を得られないという状況が続く」が、既存の救命治療薬の入手性を飛躍的に高めるには、
(1)医薬品を原価で:先進国が自国の製薬企業に対する課税権を"放棄"し、その代償として、途上国が特許を使うことを製薬企業に認めさせる。
(2)特許の強制実施:特殊事態で技術屋衣料品へのアクセスが緊急に必要なとき、政府は特許の強制実施権を発動することができる。
(3)研究資金の調達:大部分の研究資金は、先進国の政府と財団に頼るしかない。
の3つの改革を実行する必要があると述べています。
また、国際舞台におけるガバナンスが抱えている欠陥として、
(1)途上国の声がほとんど反映されない。
(2)利権集団の声が反映されすぎる。
の2点を指摘しています。
第5章「天然資源の収奪者たち」では、「有資源国の二大課題」として、
(1)資金を有効に利用すること
(2)資金を適時に利用すること
の2点を挙げた上で、3つ目の課題として、北海油田の代金としてドルが流れ込んだことで、自国の製品が国外での競争力を失った「オランダ病」を挙げています。
第6章「汚染大国アメリカと地球温暖化」では、今日と議定書の枠組みにとどまり、それを成功させるには、
(1)アメリカを参加させるためには途上国も含めないといけないが、その際には、途上国用の目標を設定する公平なシステムを作る必要がある。
(2)合意が得られた一連の目標を実行させる何らかの方法を見つける。
(3)目標遵守を容易にさせる排出削減のコスト削減の方法を探る必要がある。
の3つの問題に対処しなければならない、と述べています。
また、「地球環境問題を解決できなければ、経済のグローバル化を成功させてもほとんど何の役にも立たない」が、「グローバル化と経済発展によって、私たちはそれらの資源を容赦なく搾取する能力を、管理する能力を養うより速いペースで高めてきた」と指摘しています。
第7章「多国籍企業の貪欲――グローバルな独占を阻止する」では、「問題は、どうすれば確実に、途上国がもっと少ないコストで、もっと多くの利益を得られるか」であるとして、
(1)BSR運動
(2)グローバルな独占を阻止する
(3)経営陣に刑事責任を
(4)集団訴訟を可能にする
(5)銀行の秘密主義を規制する
の5項目からなる提案をしています。
第8章「債務危機への道すじ――借りすぎか? 貸しすぎか?」では、「問題のありかは明白」であり、「途上国は過剰な借入れをして――あるいは過剰な貸付をされて――いるばかりか、二次的な金利の上昇や為替相場の変動、所得の減少など、ほとんどあらゆるリスクを負わされている」と指摘しています。
そして、アルゼンチンが、「IMF式の緊縮財政もなく、債権者への返済のために国から金が流出することもなく、通貨の大幅な切り下げに助けられて」、「3年間で8パーセント以上の成長を成し遂げ」、同時に「財政赤字を好転させて見せさえした」として、「もしアルゼンチンがワシントンに金を送り続け、IMFの指示を受け入れ続けていたら、ほぼ確実に、ずっと悪い状況になっていただろう」と述べています。
また、主権国の破産の問題に関して、
(1)先進国が損害を与えないこと。
(2)反景気循環的な貸付への回帰
(3)借入れリスクの削減
(4)ひかえめな借入れ
(5)国債破産法の枠組み
の5つの改革が必要な点を指摘しています。
著者は、「債務返済を果たす上での多くの難題は、途上国側の失策からではなく、世界の経済・金融制度の不安定さか生じている」として、「リスクを分担して債務問題を解決する有効なメカニズムの必要性」を説いています。
第9章「外貨準備ステムの崩壊と『ドル大暴落』」では国際金融システム安定化のための「驚くほど簡単な解決策」として、「準備金として機能する新たな不兌換紙幣(ケインズは"バンコール"と名づけた)を国際社会が提供する」ことを挙げ、1997年の東アジア通貨危機をきっかけに、日本が提案した「アジア通貨基金の創設」の構想を取り上げ、「東アジア地域での影響力低下を恐れるアメリカとIMF」が「あらゆる手をつかって」つぶしにかかったと述べています。
第10章「民主的なグローバリズムの道」では、「グローバル化はそもそも、すべての国、すべての人に、未曾有の恩恵をもたらすはずだった」が、「先進国、発展途上国、両方の側から烈々たる怨嗟の声を浴びるに至っている」ことについて、「グローバル化を本来あるべき姿に近づけるために、どう再創造していけばよいか」と述べています。
そして、「グローバル化をうまく機能させるためには、考え方を変える必要がある」として、「もっとグローバルにものを考え、行動しなくてはならない」が、「今日、そういうグローバルな帰属意識をもつ人があまりに少なすぎるようだ」と指摘しています。
■ 個人的な視点から
本書のタイトルやおどろおどろしい表紙だけ見ると反グローバリズムの本なのかな?と少し不安だったのですが、中味はスティグリッツ先生らしい落ち着いていて力強い内容だったのでホッとしました。
ちなみに原書『Making Globalization Work』の表紙はこんなに恐そうではありませんし、内容に即しているように感じます。
■ どんな人にオススメ?
・「グローバリズム」というと活動家のスローガンのようなものだと思っている人。
■ 関連しそうな本
Joseph E. Stiglitz 『Making Globalization Work』
ジャレド・ダイアモンド 『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)』 2006年08月14日
ジャレド・ダイアモンド 『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)』 2006年08月15日
ラグラム ラジャン, ルイジ ジンガレス (著), 堀内 昭義, 有岡 律子, アブレウ 聖子, 関村 正悟 (翻訳) 『セイヴィング キャピタリズム』 2007年07月12日
ジェラード・デランティ (著), 山之内 靖, 伊藤 茂 (翻訳) 『コミュニティ グローバル化と社会理論の変容』 2007年07月24日
アビナッシュ・K. ディキシット (著), 北村 行伸 (翻訳) 『経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ』 2005年02月06日
■ 百夜百マンガ
ヤングジャンプに連載されている空手マンガと言えば『押忍!!空手部』みたいなのを想像しちゃうのですが、オタクっぽいというか『バスタード』っぽい絵が印象的でした。今何描いてるんでしょうか。
投稿者 tozaki : 2007年08月03日 07:00
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