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2007年09月12日
部長のハート―解決!職場のストレス あなたは部下を愛せますか?
■ 書籍情報
【部長のハート―解決!職場のストレス あなたは部下を愛せますか?】(#965)
河合 薫
価格: ¥1000 (税込)
プレジデント社(2004/10)
本書は、「ストレスに対処する能力(Sense of Coherence: SOC)」の概念を用いて、「部長」の心配事を解決に導き、「あなたが元気になること」を目的としたものです。著者は、SOCを用いる理由として、
(1)SOCが「心配事をエネルギーに換えてしまう能力」であること
(2)SOCが「環境で創られる能力」であること
の2点を挙げています。
第1章「『首尾一貫感覚』――あなたは『楽天力』を持っていますか?」では、SOCが、1979年にアントノフスキーによって提唱された、人間が「どうして元気なんだろう?」と考える「健康生成論(salutogenesis)」という考え方に基づいていることを解説しています。アントノフスキーは、ナチスの強制収容所からの生還者を多く含んだ、イスラエルに住む45~54歳の女性たちへの調査の結果、「そんな経験を持ちながら、ココロの健康を保っていた女性が29%もいたこと」に着目し、「なぜ、彼女たちは極限にいたるほどの悲惨な経験をしているにもかかわらず、人生の新しい局面である更年期に適応する力を持ち、精神的にも元気でいられたのか」と考えたことが、「人間には『ストレスを退治するパワー』があるのではないだろうか?」と考えたことが健康生成論の生まれた背景であり、その結果SOCにたどり着いたことが解説されています。
このSOCは、「心配事をエネルギーに換えてしまう能力」と説明されていますが、直訳すると「首尾一貫感覚」と訳され、「自分の人生で起こるさまざまな出来事のつじつまを合わせることができる感覚」であると説明されています。アントノフスキーは、SOCを、「人生を通じて人間が元気でいられるように働く、『能力』だ」と述べ、
(1)把握可能感(sense of comprehensibility):ストレッサーを秩序付けられる、ときにはある程度予測できると考え、同時にそれがどういうものなのか自分で説明できるという確信
(2)有意味感(sense of meaningfulness):ストレッサーは自分にとってある意味、挑戦であり、それに対することは人生に必要なことであるという確信
(3)処理可能感(sense of managebility):ストレッサーに対応し、処理するための資源が自分にはあるという確信
の3つの要素から構成されていると述べています。
著者は、「SOSは性格ではありません。あくまでも『能力』です」と述べ、「乳幼児から思春期を経て青年期にいたるまでの人生の経験を通じて、育ってきた環境との相互作用によって後天的に形成されていく能力であり、成人期以降も人生の経験によって変化することが確かめられて」いると解説しています。
第2章「『元気になる力』――今も職場に残ってますか?」では、「あなたの会社」に欠落している「失われた元気になる力」として、
(1)夢
(2)働きがい
(3)信頼
の3点を挙げ、「この『元気になる力』を取り戻すことが、楽天力の高い職場をつくるための基本」であると述べています。
第3章「『把握可能感』――「俺が責任をとってやる」と言えますか?」以降の章では、本書の主人公である「部長」(=読者)に愛人がいる、と設定し、さまざまなストレスのかかる状況を解説しています。本章で、彼女から「誕生日を忘れていた」ことを指摘された「部長」(=読者)は、
(1)忘れるなんてことは誰にでもあることだ。大したことじゃない。「このあとホテルに行く予定にしていたんだ」とかいって、うまくこの場を乗り切ろう。
(2)や、やばい。ど、どうしよう……。どうにかしなくっちゃ! まずは、正直に謝って、今度会ったときにネックレスを買いに行こうと約束しよう。それとも、忘れてはいなかったけど、時間がなかったと言い訳しようか。
(3)あ~、もう終わりだ! 俺はなんてダメな男なんだ。
の3つの中からどれが一番近いかによって、
(1)ホテル部長
(2)言い訳部長
(3)パニック部長
にタイプ分けされ、「この事態にどう対処するか」について解説しています。(1)の「ホテル部長」は、今回の事件を全くストレスとして受け止めておらず、「楽天力の高い人は、低い人に比べ、この段階で『自分にとって、全く問題のないことだ』と認知し、『ストレスでない』と判断する傾向」にあり、「ストレスと認知したとしても、すぐにそれに対する対処法を選択することが可能」であると解説されています。(2)と(3)のタイプは、「今回の出来事を自分にとって危機的状況である」と判断し、「ストレスにさらされている」状況にありますが、「そのあとどうするか?」という対処の原動力を、持ち備えているか否か、という点で違いがあり、(2)の「言い訳部長」は、「いくつかの対処法を持ち合わせており、多少パニックに陥りながらも、どうにか危機を乗り越えること」ができるのに対し、(3)の「パニック部長」は、「この危機を乗り越えるための対処法」を全く考えることができていないと解説され、このような「ストレスにうまく対処するための原動力を持ち合わせていない」人が、「楽天力の低い人」であると述べられています。
著者は、この「事件」は、職場においても応用できるものであり、「SOC(楽天力)の低い部下の楽天力を高め」、「楽天力の高い部下の能力を最大限に引き出す」ことこそが、「部長であるあなたの仕事」であると述べています。
そして、「楽天力の高い人は、直面した出来事を説明不可能などうにもならないこととしてではなく、自分で説明できる秩序だった明瞭な情報として受け止めること」ができ、この「説明できるという感覚」がSOCの構成要素の一つ、「把握可能感」であると解説しています。
第4章「『有意味感』――『おお、がんばってるな』と言ってますか?」では、SOCの構成要素の2つ目である「有意味感」について、「ストレッサーが自分にとって、立ち向かっていく価値のあるものだ」と思える感覚であると述べ、「動機づけの要因」であると解説しています。
また、「価値あるメッセージがココロに与える影響」について、シグリストらが1980年代に提唱した「努力―報酬不均衡モデル(Effort- Reward Imbalance model:ERIモデル)を取り上げ、「職業生活において『努力しているのに、報われない』状態が続くと、それは慢性的なストレッサーになる」ことを説明した理論モデルであると述べ、ERIモデルが、「仕事から得られる報酬」を、
(1)金銭などの経済的報酬
(2)他者からの尊敬などの心理的報酬
(3)昇進などの仕事(キャリア)の機会
の3つに分類していることを解説しています。
そして、「仕事を意味のあるものだ」と感じる部下に育てるためには、「社会的に価値ある意思決定への参加という経験の持続は、人が仕事に有意味性を感じる源である」というアントノフスキーの言葉を紹介したうえで、
(1)仕事上の喜びと誇り
(2)自由裁量度
の2つの要素で説明できると解説しています。
第5章「『処理可能感』――『お前なら大丈夫だ』と言えますか?」では、SOCの3つ目の要素である「処理可能感」について、「ストレッサーに対応し、処理するための資源が自分にはあるという確信」であり、ここで「処理するための資源」とは、「元気にある力」のことであると述べています。そして、さらにわかりやすく翻訳すると、「元気になる力を動員して、困難な出来事に直面しても、自分なら何とか切り抜けられる。何とかやっていけると信じられる感覚」であると述べています。
著者は、部下の「効力への信念」を強める方法として、
(1)制御体験:何らかの困難にぶつかり、乗り越える努力をした結果、見事に成功することで「効力への信念」が強められる。
(2)代理体験:他人の行動を観察することから、効力感を得る方法。
(3)社会的説得:他人から勇気付けられたり、評価されることで「効力への信念」が強められる。
(4)良好な生理的状態:体長が悪いと、人間は自分の遂行能力が低下していると思い込んでしまう。
の4点を挙げています。
本書は、職場のストレスに悩む人や、職場のストレスの原因になっている人にぜひ読んでいただきたい一冊です。
■ 個人的な視点から
本書は、「部長」や「愛人」が出てきたりして、「職場恋愛相談」か何かと間違えられそうですが、しっかりと、仕事のモチベーションとストレスについて解説している本です。それだけに、思わせぶりな本書のタイトル・サブタイトルは、売上には貢献するかもしれませんが、評価としてはちょっともったいない気がします。著者がぜひ読んでほしいと思う人に素通りされてしまってはもったいないです。
■ どんな人にオススメ?
・部長のハートの中味を知りたい人。
■ 関連しそうな本
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■ 百夜百マンガ
この恐い見た目の上に名前は「鬼」!
こんな人事課長がいたら恐いですが、実は人事制度やモチベーション、チームビルディングなどを正面から取り上げたビジネス物であり、ほろりとさせる人情ドラマです。
投稿者 tozaki : 2007年09月12日 07:00
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【人事課長鬼塚 】