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2007年09月19日
リーディング・ザ・レボリューション
■ 書籍情報
【リーディング・ザ・レボリューション】(#972)
ゲイリー ハメル (著), 鈴木 主税, 福嶋 俊造 (翻訳)
価格: ¥2310 (税込)
日本経済新聞社(2001/01)
本書は、『コア・コンピタンス経営』で知られる著者が、活動拠点を大学からシリコンバレーのコンサルティング会社「ストラテゴス研究所」に移し、「世界的な企業と仕事をする機会」に恵まれ、さまざまな企業が持つ、「ラディカルなイノベーションを求める能力を企業の内部に深く組み入れようとする情熱」に触れてきた経験をベースに著したもので、「経営者が取りがちな表面的で安易な対応策を否定すること」を目的としたものです。
第1章「進歩の終わり」では、「われわれは、いまや新しい時代に入ろうとしている。革命の時代だ。しかし、頭では新しい時代の到来を理解しているが、不安にかられているのが実態だ」と述べ、「現在では、ゆっくりと進化していく企業は既に絶滅の道をたどっていると言ってよい」と語っています。
そして、「ビジネス・コンセプトを変革するのは、革命の時代に競争優位を再定義するようなものだ」と述べ、「将来の成功をかちうるために不可欠なのだ」と解説しています。
また、革命の時代には、ビジネス・モデル間のみならず、「イノベーションのシステム」をめぐっても競争が起こるとして、新しい産業秩序は、「従来とはまったくタイプの異なる革新の産物」であり、「人間の想像力を駆使することで達成されるイノベーション」であると述べています。
第2章「期待は高まり、収益は減る」では、「収益逓減の袋小路から抜け出すには、まず現在とっている戦略、後生大事にしてきたビジネス・モデルがもう役に立たなくなったと認識すること」であり、「昨今は、ビジネス・モデルの寿命が短くなっている」と述べています。
そして、「戦略の陳腐化を素直に認め、新しい富を創造する気概は、戦略を変革するための絶対条件だ」と述べています。
第3章「ビジネス・コンセプトのイノベーション」では、ニュー・エコノミーにおいて、「イノベーションを考える基準は製品や技術でなく、ビジネス・コンセプトである」と述べ、ビジネス・コンセプト変革の目的は、「産業や競争の領域に、戦略的な多様性を持ち込むこと」であると述べています。
そして、ビジネス・コンセプトのイノベーションは、厳密に言えば競争戦略ではなく、「競合他社との正面衝突を避けるもの」であり、「攻撃よりも回避に重きをおいている」ものであると解説しています。
また、ビジネス・モデルの構成要素として、
・コア(中核)戦略
・戦略的資源
・顧客とのインターフェース
・価値のネットワーク
の4つの部門を挙げ、これらの構成要素は、
・コア戦略←行動のコンフィギュレーション→資源ベース
・コア戦略←顧客の利得→顧客とのインターフェース
・資源ベース←企業の境界(守備範囲)→価値のネットワーク
の3つの「ブリッジ要素」によって結び付けられていると解説しています。
さらに、ビジネス・コンセプトに備わる富の可能性の実現にあたって考慮すべき点として、
・ビジネス・コンセプトが顧客に利得を提供するにあたって、どの程度の効率性があるか。
・ビジネス・コンセプトにどの程度の独自性があるのか。
・ビジネス・コンセプトの構成要素が、どれほど適合性があるか。
・ビジネス・コンセプトが、平均以上の利益を生み出す源泉となる利益ブースター(利益を増進するもの)を、どれほど活用できるか。
の4点を挙げています。
著者は、「新しいビジネス・コンセプトを革新する構想をめぐらしたり、ビジネス・モデルの優劣を決めたりする本能的な能力」が必要な理由として、
(1)洞察力を働かせば優れたビジネス・ケースが築けること
(2)現行のビジネス・モデルから脱皮するには、想像力と忠誠心が必要であること
の2点を挙げています。
第4章「自分の視点から未来を見よ」では、「戦略の本質は、その多様性につきる」と述べ、「企業の想像力を解き放つ前に、自分自身の想像力に枠をはめるタガを外し、社内で次々と新しい視点を提供できる存在になることが必要だ」と述べています。そして、「斬新な大きいことをしようとするなら、周囲から笑われるようなことをしなくてはならない」というマーク・アンダーセン氏の言葉を紹介しています。
また、史上最高の子供向け番組になった「セサミ・ストリート」の例を挙げ、「あれか、これか、という『OR』の問題にぶつかった」ときには、「二者択一の必要をなくすような新しい解決法を探すこと」を薦めています。
第5章「企業の反逆者たち」では、「イノベーションは、許可を得て着手する性質のものではないことは明らか」であり、「革命家自身が決定すべき問題だ」と述べ、「今以上に影響力をもつ方法を習得し、企業内で存在感を大きくする必要がある」と語っています。
そして、全ての企業の構成モデルとして、
(1)業務モデル:組織の形態、業務内容、顧客との関係、業務プロセスなど、日常業務にかかわりのある部分を詳細に述べたもの。
(2)ビジネス・モデル:ビジネス・コンセプトの構成要素について行った選択。
(3)メンタル・モデル:個人レベルで、業界で成功するための原動力として認識されている信条。
(4)政治的モデル:企業内の権力分布、とくに「メンタル・モデル」を補完する権力分布を述べたもの。
の4つのモデルを挙げ、「ビジネス・モデルのイノベーションには、まず企業の中心に居座っているメンタル・モデルを移動させることが不可欠だ。そのためには、企業に深く浸透している信条を覆さなければならない。メンタル・モデルとビジネス・モデルの接点をずらす必要がある。そのためにはあまのじゃくにならなければならない」と述べています。
著者は、企業の反逆者の例として、IBMを「ネット関連ビジネスに先鞭をつけ、他社に先んじ」させた「何人かの活動家」を紹介しています。ジョン・パトリックとデビッド・グロスマンは、「ウェブに取り組む準備段階」として、「Get Connected(接続しよう)」と題された9ページの宣言を起草し、「IBMがウェブに真剣に取り組むための条件」として、
(1)社内連絡にはeメールを活用し、書類は減らす。
(2)従業員のすべてにeメール・アドレスを与える。
(3)経営幹部と顧客や投資家をオンラインで直結する。
(4)顧客とのコミュニケーションを円滑にするため、ホームページを開設する。
(5)レターヘッドや名刺など、あらゆるものにウェブ・アドレスを印刷する。
(6)eコマース促進のためにホームページを活用する。
の項目に分けて述べていることを紹介しています。
また、ソニーの「デジタル革命家」として、「ソニー・コンピュータエンタテイメント」の産みの親である久夛良木健を取り上げ、ライバル会社となった任天堂に協力しつづけるために、経営幹部の支援が必要となったことや、「社内では孤立感を味わい」孤独だったこと、「ソニー・コンピュータエンタテイメント」というプロジェクト名には、「チップの開発で培った技術が、ソニーをテレビゲームをはるかに越えた高みにまで導くことを想定した壮大な名前」であり、当時の大賀社長は「大げさ」だと思い気に入っていなかったことなどが述べられています。
この他、ロイヤル・ダッチ・シェルにおいて、「再生可能なエネルギーこそ、シェルの将来の可能性が秘められていると確信」し、エネルギー部門の計画を策定したジョルジュ・デュポンロックを取り上げています。
著者は、4人の活動家が、「4人とも組織の中で働いており、不満分子を引っ張り出して彼らの精神を鼓舞した。容認されなかったプロジェクトを指導し、最終的には世界的な規模と複雑な組織を持つ企業の運命を変えるほどの仕事を成し遂げた。彼らこそは、市民レベルの活動家だ」と述べています。
第6章「それ行け、反乱だ!」では、「企業内で反乱を起こす方法」として、
・ステップ1:視点を確立する
・ステップ2:マニフェスト(宣言)を起草する
・ステップ3:連合を作る
・ステップ4:ターゲットを決め、タイミングをつかむ
・ステップ5:反対勢力の吸収と制圧
・ステップ6:翻訳者を見つける
・ステップ7:小さな勝利、初期の勝利、こまめな勝利
・ステップ8:孤立し、浸透し、統合する
の8つのステップについて解説しています。
また、「活動家の価値観」として、
・誠実であること
・思いやりがあること
・謙虚であること
・実利主義
・勇敢であること
の5点を挙げています。
第7章「年齢を重ねた革命家たち」では、「伝統にどっぷりとつかっている既存の企業ですら、会社ぐるみで年齢を重ねた革命家に変身させることができる。逆に、活動家を公式に支援しなければ、企業は革命の時代に課される二つの挑戦を受けて立つことができないだろう」と述べ、
・企業の再生
・業界の再生
という2点を挙げています。
著者は、「年齢を重ねた革命家に学ぶ教訓」として、エンロンの例を挙げ、
・市場を、その種類を問わず効率的にしようとする情熱。
・商取引や裁定取引のようなコア・コンピタンスに基づく、ビジネスの境界の大局的な定義。
・新しい富の想像を目指して市場を求める活動的な社風。新人のアイデアでも無視せずに検討するシステム。
・創造的で活力あふれるスタッフをエキサイティングな新しい機会に起用できる開かれた人材登用制度。
・熱意ある起業家が自ら想像した富の一部を報酬として与えられるシステム。
・技術や経営資源が自由に組み合わせられる柔軟な組織。
の6つの要素が重要であると述べています。
また、シスコの「パックマン・スタイルの買収プロセス」が、「革命的なイノベーションがつづく業界で、会社が生き残る鍵」であったと述べ、シスコの買収戦略が、「業界全般に生じた技術の転換に対応する形でつくりあげられる」ものであると解説しています。
著者は、本章で取り上げた、エンロン、シュワブ、シスコの3社に共通する「企業自体と業界を継続的に再生する能力」に関して、「高邁な理想、新しい意見を積極的に探し、聞き入れる企業文化、柔軟な組織の枠組み」などが共通した性質であるとした上で、それぞれの独自性として、
・エンロン:肥沃な農地を耕すスタイルのイノベーションを採用しており、コア・コンピタンスを利用して定期的に新しい市場を開拓している。
・シュワブ:らせん階段を登りつめていくスタイルで、顧客である投資家に優れたサービスを提供したいという飽くなき情熱が根幹にある。
・シスコ:技術革新の猛烈なスピードを考えると、外部からイノベーションを導入するしかなかったのかもしれない。
等の点を挙げています。
第8章「イノベーションをデザインするための法則」では、「必然的かつ永続的にイノベーションを志す企業を作り上げる」法則として、
・デザインの法則1――理不尽な期待
・デザインの法則2――柔軟なビジネスの定義
・デザインの法則3――理想
・デザインの法則4――新しい声
・デザインの法則5――オープンなアイデア市場
・デザインの法則6――オープンな資本市場
・デザインの法則7――オープンな人材市場
・デザインの法則8――リスクの小さい実験
・デザインの法則9――細胞分裂
・デザインの法則10――個人への報酬
の10点を挙げています。
そして、「あなたの会社にも、きっと革命家がいるはずだ」と述べた上で、「問題は、革命家に発言の機会を与えるプロセスがないことだろう。革命家は孤立し、無力感を味わい、社内にいるはずの熱意ある同僚とも切り離されている」と語っています。
第9章「新たなイノベーションのためのソリューション」では、「ラディカルなイノベーションを実行する能力」を培うために、
・イノベーションを実行する能力に投資すれば、相応の見返りがある。
・企業には、潜在的な想像力や活用されていない起業家精神が眠っている。
・イノベーションを企業の組織的に能力にすることができる。
の3点を信じて行動することが必要だと述べています。
また、「マネジメント・プロセスが、イノベーションを阻害してしまうケース」として、
(1)マネジメント・プロセスは、年次計画に合わせて進行していくのが暗黙の了解事項である。
(2)マネジメント・プロセスは普通、成長よりも安定を優先する。
(3)マネジメント・プロセスは、既存のビジネス・モデルを出発点として考えることが多い。
の3点を挙げています。
本書は、企業の中で孤立している「革命家」にとって、行動の指針となりうる一冊です。
■ 個人的な視点から
著者は、C・K・プラハラードとの共著『コア・コンピタンス経営』で知られていますが、本書の前書きにもあるとおり、活動の軸足を大学からコンサルティング会社に移し、その成果が本書に反映されています。
本書の内容はもちろん素晴らしいものですが、『コア・コンピタンス経営』が登場したときのインパクトというか、新鮮さという点ではややおとなしく、その主張は比較的よくあるタイプのものになっています。
スモールワールド・ネットワークの理論でネットワーク研究に革命を起こしたダンカン・ワッツも、理論の世界から現実の企業組織にその分析対象を移したとたんに、結論としては、ありきたりな分析になってしまいましたが、理論の世界での革命家が、必ずしも実務の世界でも革命を起こせるわけではないようです。
■ どんな人にオススメ?
・企業の中の「革命家」の人たち。
■ 関連しそうな本
ゲイリー ハメル, C.K. プラハラード (著), 一條 和生 (翻訳) 『コア・コンピタンス経営』 2005年02月09日
ジョセフ・H. ボイエット, ジミー・T. ボイエット (著), 金井 壽宏, 大川 修二 (翻訳) 『経営革命大全』 2006年01月06日
別冊宝島編集部(編) 『わかりたいあなたのための経営学・入門』 2005年01月26日
C.K.プラハラード 『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』 2006年07月28日
若松 茂美, 織山 和久, 上山 信一 『変革のマネジメント―明るい「リストラ」を考える』 2005年08月10日
ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
■ 百夜百マンガ
どの作品でもなんとなくつながっている、という作風は永井豪を髣髴とさせますが、パロディに塗り固められているところが楽しいです。
投稿者 tozaki : 2007年09月19日 22:00
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