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2007年09月25日

談合破り!―役人支配と決別、命がけの攻防記

■ 書籍情報

談合破り!―役人支配と決別、命がけの攻防記   【談合破り!―役人支配と決別、命がけの攻防記】(#978)

  桑原 耕司
  価格: ¥1470 (税込)
  WAVE出版(2007/7/6)

 本書は、岐阜市内で建設会社「希望社」を経営する著者が、受注した「(仮称)北東部コミュニティセンター及び岐阜北消防署三輪出張所建築主体工事」の入札から竣工までの経緯を紹介しながら、岐阜市の公共工事執行に関する問題点を指摘したものです。
 第1章「談合の罠」では、自治体発注者が指名競争入札を多用する理由として、「工事実績、財務状況ともに信頼がある会社を選べるから」というのは表向きの理由であり、「業者指名権」を手放したくない、という本音があることを指摘しています。
 そして、入札条件であったJVを組むパートナーを探す中で、「おたくと組むなんて、恐ろしくてできない」とまで言われて断られ、「業界の慣習と訣別している私たちとJVを組めば、今後はゼネコンから仕事が来なくなってしまうかもしれない」ことを恐れられていたことが述べられています。
 また、建設会社の間の談合成立に基づく「落札のシナリオ」について、
(1)発注者側が設定した予定価格を、入札前につかんでおく。
(2)談合で決められた"本命"は、この金額を超えないように、かぎりなく近づけて落札することを目論む。
(3)"お付き合い"として参加する会社は、本命に追従する金額を入れる。
というものであり、「予定価格が分かれば、談合の"本命"ができる限り高値で落札できるようにするのは、あまりにもたやすい」と述べています。
 第2章「請負人の葛藤」では、公共工事において、建設業界では、「請負」を「うけまけ」と呼ぶことが浸透しているように、「公的機関の発注者と請負人の間には、目に見えない主従関係ができあがっている」ことを紹介し、希望社の「現場代理人」であった「Y」が、「公共工事に深く根づくこの関係の意識」から解き放たれることのないまま、代謝してしまったことが述べられています。
 そして、市側が「請負代金内訳書」の単価を変えるように要求してきたことについて、市が独自に設定している専門工事の「設計単価」と希望社側の専門工事単価に歴然とした差がついたままで実績ができてしまうと、「これまで市が適正とみなしていた設計単価は、大幅な見直しを検討しなければ」ならなくなり、「今後の工事で設定する予定価格にも影響するばかりか、コミセン以前の発注工事は高すぎたのではないか、という疑いも抱かれる」ため、希望社が「内訳書に書き込んだ専門工事の単価を引き上げ、市の設計単価に近づけようとした」のではないかと推測しています。
 第3章「不毛なる闘争」では、「型枠」の材料に関して、「一般的な合板(木材)ではなく、ラス(金網)を使う」ことで、「コスト削減、工期短縮につながる提案」をめぐっての市側との争いが語られています。
 そして、「技術的な検討に踏み込んだとは思えないまま態度を硬化させ、"期限切れ"に持ち込む市側のやり口は許しがたい。そして何より、仮設のひとつである型枠の材料選択の権限は、市側にないはずだ」との考えから、「中央建設工事紛争審査会」に仲裁申請をしたものの、国交省の一部である仲裁機関には、行政が行政を裁くことができず、「公平・公正な判断がなされたとは思えない」結果であったことが述べられています。
 また、岐阜市が「調査基準価格」を公開しない理由として、「調査基準価格」とは、「市が設定した予定価格の一部分である『直接工事費』の額」であり、この額のほとんどは、「下請にかかる費用だろうと市が想定した金額」であると解説しています。そして、岐阜市がこの「調査基準価格」を非公開にした理由は、
(1)設計価格が高くなってしまう。
(2)調査基準価格が公開されると、契約の内容に適合した履行を行わない恐れなどのある業者が調査基準価格に近い金額で入札を行い、調査を回避してしまう。また、そのような恐れのない業者であっても、入札に参加する業者に自己の事情により市による調査を避けたい考えがあるならば、調査基準価格以下の入札はしないため、結果として落札価格が高止まりする。
の2点を挙げていることを述べています。
 第4章「役人の欺瞞」では、「設計変更に伴なう変更金額の協議」を開始したという証拠を無理やり作りたい岐阜市側が、希望社を突然訪れ、受付に「協議開始のための書類」を置いていってその様子を証拠として写真を撮ることによって、「協議開始を既成事実にするための"強硬手段"」に出たことが述べられています。
 また、希望社がコミセンを落札した翌年度の岐阜市発注の建築工事では一般競争入札が実施されず、2件の小学校改築工事で「公募型指名競争入札」が実施されたものの、「申込書提出期限(2004年4月)において、岐阜市発注の請負金額4500万円以上の建築工事を受注し施行するものでないこと」という参加条件が定められ、コミセンを請け負った希望社は入札できないカラクリになっていたことが解説されています。
 第5章「癒着構造との決別」では、入札のほとんどで採用されている指名競争入札の問題点として、
(1)入札参加者が特定の数社に限定されることにより、参加者間での調整、すなわち談合が容易になる点。
(2)入札参加条件としてさまざまな制限が加えられているので、入札に参加できる会社が限定されてしまい、その効果がなくなってしまう点。
の2点を挙げています。
 著者は、「単価を示さないで協議をすすめ、発注者独自の方法で算出した増減額を一方的に押し付ける岐阜市の姿勢は、発注者と請負人の請負契約における『対等な立場』を真っ向から否定するものであり、『審議にしたがって契約を履行する』などとはほど遠いものなのである」と批判しています。
 本書は、公共工事に携わる人はもちろん、民間事業者はパートナーとしてではなく「業者さん」としか見ることができなくなってしまっている多くの公務員にとって身につまされる思いのする一冊です。


■ 個人的な視点から

 佐賀市の小学校の工事を扱った『公共事業を、内側から変えてみた』では、他の事業者、とくにゼネコンや専門事業者とのバトルが中心でしたが、今回のバトルの相手は発注者である市役所そのもの。受付に書類を置いて、写真を撮って帰るところはちょっと大人気ないと感じました。


■ どんな人にオススメ?

・公共工事を内側から変えたい人。


■ 関連しそうな本

 桑原 耕司 『公共事業を、内側から変えてみた』 2006年02月22日
 桑原 耕司 『「良い建築を安く」は実現できる!―建築コストを20%も削減するCM方式』 2006年04月12日
 武田 晴人 『談合の経済学―日本的調整システムの歴史と論理』
 加藤 正夫 『談合しました―談合大国ニッポンの裏側』
 鬼島 紘一 『「談合業務課」 現場から見た官民癒着』 2006年03月15日
 木下 敏之 『日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条―佐賀市「電子自治体」改革一年の取り組みから』 2006年10月18日


■ 百夜百マンガ

暴虐外道無法地帯ガガガガ【暴虐外道無法地帯ガガガガ 】

 盛り上がるにつれて、流血率が上がり、白黒漫画ゆえ、インクの消費量が増え、ページをめくる手が黒くなります。昔の『地雷震』や『ニライカナイ』が連載されていた頃を思い出します。

投稿者 tozaki : 2007年09月25日 05:00

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