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2007年09月30日
和風旅館建築の美
■ 書籍情報
【和風旅館建築の美】(#983)
宮本 和義
価格: ¥1628 (税込)
JTB(1996/07)
本書は、旧宿場や温泉など、日本中で営業を続けている旧い和風旅館を紹介しているものです。
○「竹林院群芳園」吉野山(奈良県)
本館の大屋根の、「こんなスケールのある煙出しは、他に見たことはない」という高く大きな煙出しや、江戸期の絵師の描いた贅沢な襖絵などを紹介しています。一方で、「よく見ると、襖は傷みがあって、ここでも保存の難しさに行き当たった」と指摘しています。
○「起雲閣」熱海温泉(静岡県)
「船成金」と呼ばれ、後に鉄道、農林大臣を歴任した政治家・内田信也の別荘であった大正5年の和風の別荘建築と、富国生命、東武鉄道、根津美術館の創設者である根津嘉一郎の別荘であった大正10年の洋風建築からなり、戦後、金沢の白雲楼ホテルの経営者が、進駐軍にホテルを接収されてしまったために、熱海で根津別荘を引き継いで旅館を起こしたことが解説されています。ただし、2000年からは熱海市の所有になり、熱海市指定有形文化財として、一般公開されています。
○「福住楼」箱根(神奈川県)
伝説のように伝えられている名物女将「長谷川まつ」について、嘉永2年に商家の娘として生まれたが、家業が潰れたために、東京柳橋の芸者になり、後に身請けされ、箱根で宿を経営するに至ったこと、最初の店は、現在の場所より上流だったが、明治43年の洪水で一切を失った後、現在地で再開、福沢諭吉、夏目漱石、島崎藤村、川端康成などに贔屓にされたことが紹介されています。
また、客室の表札や襖の七宝の引き手が盗まれてしまったことがあること、建築好きの先代が、障子、欄間、壁、天井などあらゆるところに質の高い、凝った意匠を施したため、建物の維持の苦労はつきず、木造三階建ての重みで襖や障子の開け立てが不自由になることなどが紹介されています。
○「奈良屋旅館」箱根(神奈川県)
廊下や柱、敷居、手摺、障子の桟などを、年に一度、手ぬぐいで作った袋におからを詰めたもの(おからは豆腐店からトン単位で購入)で力を入れて擦って掃除していること、お客様からの苦情でやむなくエアコンを設置し、「壁に穴を開けなければいけないし、涙が出るほど悲しかった」ことなどが紹介されています。
旅館としては、平成13年5月20日に閉店し、300年の歴史に幕を下ろしましたが、平成19年9月23日に「NARAYA CAFE」として営業を開始しています。
○「積善館」四万温泉(群馬県)
元禄4年(1691)の竣工で、本館の梁や柱も300年前のものがあり、「現存する湯宿では最古のものと思われる」と紹介されています。
○「能登屋旅館」銀山温泉(山形県)
江戸時代初期に銀鉱があって繁栄した温泉。「温泉街全体のシンボルといえる高楼」は、「正面に立つと五重塔のようにも見える」と、正面からの写真が紹介されています。
○「強首 樅峰苑」強首(秋田県)
代々、135万坪を有する大地主であった小山田家の屋敷を昭和41年に旅館に転用したもので、建物は、大正3年の強首大地震で旧建物が倒壊し、大正6年に竣工したもので、高さ15mの入母屋造りで、「まさに変化に富む豪農の館である」と紹介されています。
○「伊勢屋」奈良井宿(長野県)
中山道木曽十一宿の中で、「奈良井千軒」と呼ばれた最大の宿場。二階をせり出した「出し梁造り」で、この辺りの典型的な建築様式である「漆喰塗りの袖宇達、庇をおさえた猿頭と呼ばれるサン木」などが見られると解説されています。
○「旅籠 大橋屋」赤坂宿(愛知県)
東海道36番目の宿場であった赤坂宿が、明治22年の鉄道開通で急速に衰退し、開通当時64軒営業していたうち、今日まで残ったのは大橋屋のみであることが解説されています。慶安2年(1649)の創業、建物は正徳6年(1716)の竣工で、広重の東海道五十三次の赤坂の画に描かれており、当時は「伊右衛門鯉屋」を屋号を名乗っていたことが紹介されています。
○「料理旅館 鶴形」倉敷(岡山県)
著者は、「倉敷の残された甍の家並みを見る度に、日本中にあった同じような町並みを壊し、国籍不明の家並みを造った愚かな人々を呪う気分になる」と述べています。
この他、巻末の座談会では、旅館建築の魅力として、「手摺りとか、書院の組み木とか、欄間とか、ちょっとした引き手の部分の彫金の細工とか、博物館へ行ったら、もう手を触れちゃ困りますよ、っていうようなものに直に触れられる」ことや、「一流ではない、一流藩建築の面白さ」があり、「それを実用に供しているところ」などが挙げられています。
本書は、温泉好きや和風建築マニアさんはもちろん、普段は目にすることが少ない、江戸や明治の日本を追体験してみたい人にお勧めの一冊です。
■ 個人的な視点から
本書で紹介されているうち、元が別荘であったり、本陣であったりなど、元々上流階級向けの建物は旅館となった現在も1泊2日で2~3万円するのでなかなか手が出ませんが、元が旅籠であったり、湯治場であったりしたものは現在でも安く泊まれるようです。ただしサービスもそれなりのもののようですが。つげ義春好きの人にはこういうところのほうが向いていそうです。
■ どんな人にオススメ?
・ひっそりと残された江戸や明治を体験したい人。
■ 関連しそうな本
宮本 和義, 鈴木 喜一 『旅泊の空間―日本旅館建築新発見紀行』
山口 広, 日大山口研究室, 宮本 和義 『近代建築再見―生き続ける街角の主役たち』
日本旅行作家協会 『和風木造りの宿』
つげ 義春 『貧困旅行記』
つげ 義春 『つげ義春の温泉』
つげ 義春 『つげ義春旅日記』
■ 百夜百音
【BEAUTIFUL BALLADE~20th Anniversary Super Ballad Single Best~】 徳永英明 オリジナル盤発売: 2006
いつの間にか、20年選手のベテランになってました。もやもや病という病名をこの人ではじめて知った人が大多数だと思います。
投稿者 tozaki : 2007年09月30日 22:00
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