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2007年10月01日
働くみんなのモティベーション論
■ 書籍情報
【働くみんなのモティベーション論】(#984)
金井 壽宏
価格: ¥1890 (税込)
NTT出版(2006/10/13)
本書は、大和言葉で、「動機づけ、意欲、やる気という意味合い」を持つ「モティベーション」について解説しているもので、本書では、モティベーション論を「緊張系、希望系、持論系」の3つの系統に分けて取り上げています。
「プロローグ」では、「この本で言いたいこと」は、「自分のモティベーション(やる気、意欲、動機づけ)を自分で調整できる人間になるための手立てを探ること」であり、そのためには、「モティベーションについて、自分なりの持論(しばしば、本書で持<自>論と表記する)を持つことだ」と強調しています。
第1章「モティベーションに持論をもつ」では、本書全体を通じて強調したいこととは、「自分を知ること、自分の生きる世界を知ること」であると述べ、前者が「セルフ・セオリー」に、後者が「ワールド・セオリー」に関わると述べています。
そして、本書で紹介するモティベーション理論の系統として、
(1)緊張系:ズレ、緊張、不協和、欠乏を解消、回避するためにひとは動く
(2)希望系:夢、希望、目標、自己実現、達成など、ありたい姿に近づくためにひとは動く
(3)持論系:自分がどうやれば動くか暗黙にあるいは明示的に知っているまま、ひとは動くことになる。
の3つの系統を挙げています。
第2章「持論がもたらすパワー」では、すぐれた内省的実践家が自然に気づいているように、「自分の経験と経験の内省と、自分なりの思考からたどり着いた持論を、研究から生まれてきた理論とつき合わせてみたい」というときの理論への接し方として、
(1)シャワーを浴びるように、たくさんの理論に触れること。
(2)世の中にたくさんの理論があるとしても、その根源深いところにおける理論の基本類型をつかむこと。
の二通りがあると述べています。
第3章「マクレガー・ルネサンス」では、学者であるマクレガーが使った「X理論とY理論」という言葉が、教科書では研究者が構築した理論のように紹介されるが、「これこそが大きな(そして、マグレガーの真意からはズレの大きい)誤解」であると述べ、マグレガーは、「実践家がモティベーションの持論を、いくつかの項目からなる仮定群として抱いている」ことを描こうとしたと述べ、「X理論とY理論」は、「マネジャーたち自身が抱く対照的な人間観であり、持論に他ならない」と指摘しています。そして、「社会科学者が構築する公式の理論のように、科学的に検証されてはいなくても、実践家は、自分なりに自分の意思決定やアクションを左右する仮定群を持っている。それが、実践家が抱くセオリーにほかならない」とマグレガーの考え方を解説しています。
また、「マグレガーの最大の貢献」として、
(1)管理者になる頃には、意識している度合は低いかもしれないものの、モティベーションについての持論を持っていること。
(2)どのような持論を持っているかによって、部下の働き方、したがって職場のありようが変わってくること。
を明らかにした点にあると指摘しています。
第4章「外発的モティベーションと内発的モティベーション」では、「外発的動機づけを考えるための理論的視点と、外発的動機づけのみに頼ることの危険」について議論しています。
まず、外発的動機づけに過度に依拠することのマイナスとして、このことを最もラディカルに批判してきたアルフィー・コーンを取り上げ、外発的報酬が悪影響をもたらす理由として、コーンが注目した、
(1)報酬は罰になる
(2)報酬は人間関係を破壊する
(3)報酬は理由を無視する
(4)報酬は冒険に水をさす
(5)報酬は興味を損なう
の5点を紹介し、さらに、この問題の先鞭を切ったデシの主張として、
(6)報酬は使い出したら簡単には引けない
(7)報酬はそれを得るための手抜き(最短ルート)を選ばせる
の2点を追加しています。
そして、コーンが、読者からの手紙で、「間もなく3歳になる娘が寝る時間なのに、何度も何度もベッドルームから出てくるときに、どうしたらいいのか」と質問され、その選択肢として、
(1)「3つ数えるうちにベッドに戻らないと、テレビは一週間禁止よ」
(2)「今晩から3晩、ちょろちょろせずにすぐに寝たら、欲しがっていたぬいぐるみのクマを買ってあげるわ」
(3)「なぜベッドから何度も起きてくるのか、理由を探さなくちゃね」
の3点を挙げていることを紹介しています。
さらに、「内発的動機づけの最も有力な論者として君臨」するデシを取り上げ、彼が、「有能感と自己決定(self-determination)」に注目したことを紹介しています。
第5章「達成動機とその周辺」では、経営学における経営管理や組織行動のテキストで必ず紹介される理論モデルである「期待理論(expectancy theory)」について、「努力しだいでそのような報酬(実際には、多種多様な報酬の束)にありつける主観的確率(期待)をその報酬(の束)の価値との相乗効果(掛け算)で、実際にどれくらい努力を投入するかという大きさで示されるモティベーションの水準が決まる」というものであり、「期待×価値(誘意性)理論」とも呼ばれると紹介しています。
また、達成動機の研究を高い達成動機を持ってとことんやりぬいた、デイビッド・マクレランドが、達成動機の所在を、
(1)達成の卓越した水準を設定し、それに挑む。
(2)自分なりの独自なやり方で達成しようとする。
(3)長期間かかるような達成に取り組み、その達成を期待する。
の3つの基準に所在を見極めようとしたと述べています。
さらに、「内発的動機づけの理論に、デシとは異なる立場でユニークな貢献をおこなった」研究として、チクセントミハイの「フロー経験」とマズローの「思考経験」を取り上げています。フロー経験の特徴としては、
(1)行為と意識の融合
(2)限定された刺激領域への注意の集中
(3)自我の喪失や忘却、および世界との融合感
(4)自分の行為や環境を自ら支配できているという感覚
(5)首尾一貫した矛盾のない行為が必要とされ、そこに明瞭なフィードバックがあること
(6)自己目的的、つまり他の目的や外発的報酬のためにそれをしているのではないこと
の6点を挙げています。
第6章「親和動機」では、心理学者のデイビッド・ベイカンが、「人間には"エイジェンシー"として生きるという面と、ひとりではなくみんなと一緒だという"コミュニオン"な面の二重性がある」と説いていることを紹介し、日本ではこれを「主体性」と「共同的」と約すことが多いと述べています。
また、「マズローは、自己実現以外に愛と所属の欲求、マクレランドは、達成動機以外に親和動機、デシは、自律性と有能性意外に関係性にも注目する」理由として、
(1)遺伝子レベルで、われわれは集まり、親密さ、社会性を大事にするようにできているという考え。
(2)ベイカンの言うコミューナルなものが人間性の根底を占めるという考え。
(3)関係性に注目する精神分析の学派の考え。
(4)マッカダムズが、モティベーション論では「親密動機」に強く注目し、生涯発達の面では「世代継承性」にこだわりを見せた。
(5)有能感と自己決定(自立)を重んじるデシも、人が本当に充実した生き方を希求するなら、関係性が大事になってくることを強調している。
等の解説をおこなっています。
第7章「目標設定」では、モティベーションが、「『今、がんばる』という瞬発力の世界」で、キャリアは、「『長期的な生き方・働き方の意味づけ』という持続力の世界」であり、両者はばらばらではなく、「毎日のがんばりの積み重ねなく、長期的に意味のある生き方はむずかしいし、今打ち込んでいることが長い目で見て意味の感じられる行き方につながると見通せるなら、そのことがいっそう今がんばる気を万全なものにしてくれる」と述べています。
第8章「自己実現」では、「自己実現の欲求以外なら、『動機づける』ことができる」が、自己実現は別格であると述べ、「下位の四つだけが動機づけの問題で、自己実現は発達の問題だと強調するため」に、「自己実現の欲求」をピラミッドから切り離した図等を紹介しています。
第9章「実践家の持論」では、世の中に、「努力や能力という自分の側に原因を求めるタイプの人」(インターナルズ=内部帰属者)と、「課題や運という環境の側(自分の外側)に原因を探しがちな人」(エクスターナルズ=外部帰属者)とがいると述べています。
また、モティベーションを学ぶ意味として、「若いときは自分を動かすためのモティベーションを知れば十分だが、やがて人に動いてもらう立場になると、どうすれば他の人々の動いてもらえるかという点を踏まえてモティベーションを学ぶ必要がある」と語っています。
本書は、自分のモティベーションで悩んでいる人にも、部下のモティベーションで悩んでいる人にもお勧めの一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の中でも触れられていますが、「モティベーション」を「動機づけ」と訳すのにはやはり違和感があります。どうしても、目の前にニンジンをぶら下げられる絵を想像してしまいます。
■ どんな人にオススメ?
・自分や部下のモティベーションに悩んでしまう人。
■ 関連しそうな本
ヴルーム, 坂下 昭宣 『仕事とモティベーション』 2006年02月17日
ステファン・P. ロビンス (著), 高木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』 2005年04月27日
金井 壽宏 『組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法』 2005年06月09日
M. チクセントミハイ (著), 今村 浩明 (翻訳) 『楽しみの社会学』 2005年02月08日
エドワード L.デシ (著), 安藤 延男, 石田 梅男 (翻訳) 『内発的動機づけ―実験社会心理学的アプローチ』
■ 百夜百マンガ
「あ~る」にしてもそうですが、若いマンガ家が描く文科系部活漫画は楽しいです。新入生が珍妙なセンパイに翻弄される、という設定はたいてい同じですが。
投稿者 tozaki : 2007年10月01日 23:00
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