2007年10月07日
つげ義春を旅する
■ 書籍情報
【つげ義春を旅する】(#990)
高野 慎三
価格: ¥903 (税込)
筑摩書房(2001/04)
本書は、「月刊漫画ガロ」の編集者であった著者が、つげ義春の作品の舞台を訪ねた紀行文です。
「『二岐渓谷』と秘湯への旅」では、1968年に発表された「二岐(ふたまた)渓谷」に登場する「湯小屋旅館」を尋ね、「霧がわきあがっている。湯気がゆらいでいる。目をみはった。熱そうでいかにも秘湯といった風情だ。おしえたくない。誰にもおしえない。わたしだけの定宿、湯小屋旅館」というパンフレットの一節を紹介しています。そして、宿の主人、星卓司氏にインタビューし、1974年の「枯野の宿」に登場する三重塔の壁絵が星氏が描いたものをモデルにしていることなどを紹介しています。
また、二岐渓谷の入口になる岩瀬湯元温泉について、岩瀬湯元の夜景が描かれたペン画を取り上げ、「つげ義春のペン画の中でも秀逸な一点だ」と評しています。
つげ義春との対談「ワラ屋根のある風景」では、つげが、「ワラ葺きの家そのものが好きというものでも」なく、「やはり、『貧しげな風景』が好きということなのか」と語っています。
著者は、「とくに会津方面に関しては、江戸時代のままの姿を見ているのは、いまやつげさんだけかもしれないですよ」と、つげを「歴史の生き証人」だと語っています。
「『海辺の叙景』と外房の海」では、作品の舞台が、つげが幼少時を過ごしたことのある外房の大原を舞台にしたものであり、作中で「子どもを抱いた女の人」の土左衛門が揚がったとされる八幡岬や、地元民だけが知っている、断崖が続く途中にある小さな入り江があることを紹介しています。
著者は、大原の漁村が持つ、「つつましい漁村の美しさ」について、「御宿や勝浦、興津、鵜原、太海等々の漁村に親しみを覚えるのは、大原の漁村の情景に心を奪われた結果であるのだろう」と語っています。
「『初茸がり』『紅い花』『西部田村事件』と一軒の宿」では、大多喜の「旅館寿恵比楼(すえひろ)」を、「三十年前、つげ義春が十日間ほどをすごした旅館である」と紹介し、滞在中の1965年10月に「不思議な絵」を描き上げだだけではなく、翌月の『ガロ』に発表された「沼」に関して、
「大多喜の宿屋に娘さんがいて、これがものすごくかわいい女の子なんですよ。十七、八の。ところが言葉を喋ると千葉の方言丸だしなんです。それがかえって、奇妙な違和感があって、その女の子がかわいいせいもあったから、エロティックにも感じた」
と語っていることを紹介しています。
また、つげが、「西部田村事件」の舞台をさまよいながら、「ある意味で、作品に登場する患者と同じような解放感を味わっていたのではないか」と述べ、つげが、「自然の風物の何もかもが新鮮に見えて、目から鱗が落ちたようでした」と語っていることを紹介しています。
「『庶民御宿(しょみんおんやど)』と千倉漁港」では、1960年代に外房の千倉を訪ね、当時、「大原や勝浦よりも賑わう繁華な町の印象を受けた。鉄道が敷設される以前は、漁港として、物資の集散地として大きく栄えたのだろうかと想像した」著者が、三十数年ぶりに千倉を訪れた著者は、「町が大きく変貌」し、「往時の賑わいが少しも伝えられない」ことに気づきます。
著者は、「それでも、私は、千倉の町が好きなのである。たぶん、それは、路地の奥にまで潮の香りが漂ってくるからだろう」と語っています。
「『ねじ式』のモデルになった風景」では、鴨川市の太海を訪れ、「仁右衛門島から眺めた漁村の情景が心をとらえて離さない。小さな漁村ほど、つつましく、わびしく、それゆえに美しいものはないように思えてくる」として、「太海の漁村は、現代からとり残されたような感じがする」と語っています。
そして、作品中で、「家の密集する路地裏に蒸気機関車が『ゴッゴゴゴ』と到着する場面のすばらしさ」について、つげと話しているときに、「ああ、あれは千葉の漁村なんですよ。太海というところなんだけど」ということが明らかになったエピソードが語られています。
「『ゲンセンカン主人』と湯宿温泉」では、群馬県の三国街道沿いの湯宿温泉の「大滝屋」を訪ね、この大滝屋が、「三十年前につげ義春が宿泊したそのままの姿を今に伝えている」と語っています。
「『大場電気鍍金工業所』をさがして」では、つげが、中学校に通わずに働いていたメッキ工場である「川端鍍金工業所」を古い地図から発見し、葛飾区立石に残っていた看板を発見しています。
本書は、つげ義春の世界を実際に体験してみたい、という人にとっての重要なガイドブックになる一冊です。
■ 個人的な視点から
個人的には、つげ義春といえば房総、というイメージがあるのですが、千葉の人間でもなかなか知られておらず残念なことです。とはいえ、つげ作品の舞台である、ということが地域のイメージアップにつながるかと言えば、つげ作品に描かれた、貧しく、わびしく、美しい房総の農村や漁村の風景を認めたくない人、なかったことにしたい人も少なくないのではないかと思います。
■ どんな人にオススメ?
・つげ作品の風景の中に入り込みたい人。
■ 関連しそうな本
つげ 義春 『つげ義春の温泉』
つげ 義春 『貧困旅行記』
宮本 和義 『和風旅館建築の美』 2007年09月30日
『旅篭に泊まる』
高野 慎三 『郷愁 nostalgia』
高野 慎三 『旧街道』
■ 百夜百音
【ポリリズム】 Perfume オリジナル盤発売: 2007
ACのゴミ分別のCMでしばらく前から流れていた曲なのですが、ようやく一般に認知されるかも知れません。
ところで、スポンサー企業が不祥事を起こした場合、CMを自粛し、代わりにACのCMが流されることがあります。深夜はともかく、毎週見ているゴールデン枠でACが多く流れていたら、いつもだったら何のCMがあったのかを考えてみてもいいかもしれません。テレビでは一社提供番組は少なくなりましたが、ラジオではDOCOMOの一社提供番組でずっとACのCMが流れていて気持悪かったことがあります。
投稿者 tozaki : 2007年10月07日 05:00
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