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2007年10月08日
旅篭に泊まる
■ 書籍情報
【旅篭に泊まる】(#991)
価格: ¥1533 (税込)
小学館(1995/07)
本書は、中高年向けの雑誌『サライ』に連載された全国の「旅籠」を紹介する企画をまとめ、24軒の旅籠を紹介しているものです。
「旅籠」の名は、「食料・織機・炊事用具を籠に入れ、それを背負って旅をしたことによる」とされています。なお、Wikipediaによると、「旅籠という言葉はもともとは旅の時、馬の飼料を入れる籠(かご)のことであった。それが、旅人の食糧等を入れる器、転じて宿屋で出される食事の意味になり、食事を提供する宿屋のことを旅籠屋、略して旅籠と呼ぶようになった」と解説されています。著者は、「木造の歴史的建造物の中に寝泊りすることで、心の平安を実現できる……。宿泊料金も格安なので、旅籠ファンはますます増えるに違いない」と述べています。
「笹屋旅館」(福島県・喜多方)では、昭和50年にNHKテレビで「蔵の町」として紹介されるまで、1000人来たかどうかの観光客が、「60年には30万人に膨れ上がった」ことが述べられ、さらに、60軒だったラーメン屋が120軒に急増したことで、「近頃では年間100万人を超す観光客が、この小さな町に押し寄せている」と述べています。
コラム「旅籠に泊まる 楽しみ方さまざま」では、旅籠に泊まる楽しみを、「江戸回帰の喜び」であると述べ、「都会のビジネスライクで忙しい時間に対し、タイムスリップ感覚を通じての『ゆったりとした時間の流れ』を本質とする。そう、ゆっくり、たっぷり歩きたい。言い換えると、よい散策コースのあるところに、旅籠は生き残った」と述べています。
また、現代的な観光旅館と、旅籠とについて、
(1)大型鉄筋・多数の部屋数に対し、年月を経た木造で5部屋程度と質素。
(2)まばゆい照明に対し、薄暗い。
(3)バス・トイレ付きに対し、どちらも共同。
(4)間仕切りがコンクリートに対し、襖の仕切り。
(5)水洗トイレに対し、簡易水洗かボッチャン式。
(6)ご馳走を並べ1泊2日の価格帯が1万2000~2万5000円。これに対し、手料理で6500円~1万2000円。
(7)冷暖房エアコン設置に対し、扇風機・石油ストーブ。
の7点を比較対照しています。
そして、「旅の通は、2泊3日以上の旅程を組み、旅籠に続けて泊まる。都会の俗塵を頭の中から追い出すには2泊は最低必要」であると述べています。
「和泉屋」(群馬県・永井宿)では、三国街道の最大の難所であった三国峠であったため、「猿ヶ京の関所は通過できても、日のあるうちの峠越えは無理だし、反対に峠は越えられても、関所が通れる時間には間に合わない」ことが、永井宿反映の大きな理由であったことを解説しています。また、永井の家屋の多くが、「二階の床を張り出した、せがい造り」をしている理由として、「旅籠の傍ら営まれた養蚕に適した構造で、大きな軒下は農作業に必要」だったことを挙げながら、「その持送りに実用とはおよそ無関係な、ひときわ立派なけやきの波の彫刻があるのが和泉屋だ」と述べています。
「越後屋旅館」(長野県・奈良井宿)では、「江戸時代最高の建築技術を駆使して建てられた200年の歴史を持つ旅籠」であり、「二階が前へせり出した出梁造り、猿の頭のような桟木を使った一階の庇、土間に入ると面白いデザインの旅籠行灯、近代に副業にしていた薬舗の看板に講の看板、ランプ、箱階段、吹き抜けの黒光りする天井、磨きこまれた廊下」などを挙げ、「生きている古美術の宿」と評しています。
「松代屋」(長野県・妻籠宿)では、過疎化のために寂れていく一方だった昭和40年代の妻籠の住民が、「企業誘致の道を選ばず、郷土の文化構成=町並み保存によるにぎわい」を望み、住民運動がリードし、行政がこれを認知して協力するというもので、「先駆者としての妻籠の成功」が、「全国の町並み保存運動の活発化に大きく貢献した」ことが述べられています。
「大橋屋」(愛知県・赤坂宿)では、安藤広重の東海道53次に、客で賑わう旅籠の様子を描かれた旅籠であったが、大正10年に火災にあい、「広重が活写した部屋の当たりは消失、当時の遺構は旧東海道に面した表の棟だけになってしまった」ことを述べた上で、「往時のたたずまいを残す旅籠は東海道広しと言えど、もはやこの1軒だけである」と述べています。
「長瀬旅館」(岐阜県・高山)では、「かつては商人宿であり、飛騨街道を通って富山から信州にブリを運んだ飛騨ブリの商人、富山の薬売り、京の染物屋や機屋、大坂道修町の薬問屋、名古屋の呉服屋たちも逗留した」と述べた上で、伊藤博文をはじめとする「多くの文人墨客が好んで訪れた宿」であると述べています。
本書は、各地の街道に残る江戸の名残を追い求める人にはお勧めの一冊です。
■ 個人的な視点から
本書は、元が雑誌のグラビアということもあり、単に古い旅籠を紹介するというだけではなく、街道歩きやまち歩きなどと組み合わせた観光コースの提案という側面も持っているようです。そのため、本書の写真や案内を読むと、江戸を追体験できるような印象を与えますが、実際に現地に行くと、ガイドブックを持った観光客や大型バスの団体客でごった返していて風情が損なわれている、ということもありそうです。
■ どんな人にオススメ?
・江戸の旅人気分を味わいたい人。
■ 関連しそうな本
宮本 和義 『和風旅館建築の美』 2007年09月30日
高野 慎三 『つげ義春を旅する』 2007年10月07日
高野 慎三 『郷愁 nostalgia』
高野 慎三 『旧街道』
宮本 和義, 鈴木 喜一 『旅泊の空間―日本旅館建築新発見紀行』
日本旅行作家協会 『和風木造りの宿』
■ 百夜百音
【バンザイ】 ウルフルズ オリジナル盤発売: 2006
いつの間にかベテランになってましたが、「ウルフル」は「ソウルフル」から「ソ」を取ったもので、狼とは関係ないそうです。
投稿者 tozaki : 2007年10月08日 07:00
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