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2007年10月12日

情報操作のトリック―その歴史と方法

■ 書籍情報

情報操作のトリック―その歴史と方法   【情報操作のトリック―その歴史と方法】(#995)

  川上 和久
  価格: ¥756 (税込)
  講談社(1994/05)

 本書は、「現代社会における多種多様な情報操作を整理し、そのメカニズムを多少でも解明することを目的」としたものです。
 第1章「情報を操作する、情報で操作する」では、情報操作を、「情報の送り手の側から見れば、個人、もしくは集合的な主体が、何らかの意図をもって、直接、もしくはメディアを介して、対象に対して、意図した方向への態度・行動の変化を促すべく構成されたコミュニケーション行動とその結果の総体である。また、情報の受け手の側から見れば、意図的・非意図的によらず、受け手の態度・行動に影響を及ぼすコミュニケーション行動、およびその結果の総体である」と定義しています。
 また、態度研究の大家であるマクガイアによる、態度変容の抵抗力形成要因の4つの次元として、
(1)行動への関与
(2)態度間の関連
(3)受け手の中に、変化の働きかけそのものを拒絶するような姿勢を植えつけること
(4)事前に予想される説得メッセージに対して、あらかじめ対応を施しておくこと
の4点を紹介しています。
 第2章「情報操作の歴史」では、「権力が、その持っている力を背景にして情報操作をするやり方」として、
(1)ミランダ:権力を「賞嘆せられるべきものとして」飾り、人々を情緒的・感情的な状態が優先する状態におき、権力に服従させるための操作
(2)クレデンダ:権力を正当化するための理由付けの機能を果たす信条
の2種類があると述べ、ミランダによる支配強化としては、世界の歴史において、「支配の正当化のためにそれが宗教と結びつく例」が多く見られることを挙げ、クレデンダによる支配強化としては、「権力による統治を合法的に具現化するもの」として、戦前の日本において、「大日本帝国憲法のもとで、『現人神』である天皇制の神話と伝承が修身、国史、国語等の教科の中で繰り返し強調され、支配の正統性が教育システムの中に組み込まれていた」ことを挙げています。著者は、「権力による統治そのものが、巨大な情報操作の仕掛けをともなっている」と述べています。
 また、マス・メディア発達以前の情報操作として、「敵国に対する敵愾心を煽る情報操作」や「敵側の戦意を喪失させる」情報操作が行われてきたことを紹介した上で、マス・メディアの発達後、ナチス・ドイツが、「感情に訴え、偏見・差別を助長させるような情報を巧みに用いて、民衆の反ユダヤ主義、反共産主義を煽っていった」ことを解説しています。そして、日本においても、1942年6月のミッドウェー海戦の大敗北以後、大本営発表が意図的に操作されるようになったと述べています。さらに、アメリカが、宣伝分析研究所で効果的な情報操作の研究を行い、政治宣伝の「7つの原則」として、
(1)ネーム・コーリング:攻撃対象の人物・組織・制度などに、憎悪や恐怖の感情に訴えるレッテルを貼る。
(2)華麗なことばによる普遍化:権力の利益や目的を正当化する。
(3)転換:権威や威光により、権力の目的や方法を正当化する。
(4)証言利用:尊敬・権威を与えられている人物を用いる。
(5)平凡化:大衆と同じ立場にあることを示して安心や共感を引き出す。
(6)いかさま:都合のよい事柄を強調し、不都合な事柄を矮小化したり隠したりする。
(7)バンドワゴン:皆がやったり信じていることを強調し、大衆の同調性行に訴える。
の7点を見出していることを紹介しています。
 第3章「政治と情報操作」では、1993年の総選挙で、自民党が過半数をはるかに割り込んだ際に、テレビ朝日の椿貞良報道局長が、「非自民政権が誕生するように報道することを指示した」と発現し、大きな波紋を広げたことを解説しています。
 また、テレビの普及と政治については、1960年のアメリカ大統領選挙における、共和党ニクソン候補と民主党ケネディ候補のテレビ討論の例を取り上げ、視覚効果を重視したケネディ候補と生真面目に政策を訴えるニクソン候補とで、ラジオを聴いた有権者はニクソンが勝ったという印象を受け、テレビを見ていた有権者はケネディの圧勝という印象を受け、「このテレビ討論が、選挙の帰趨に大きな影響を与えた」といわれていることを紹介しています。
 さらに、ノイマンによる、マス・メディアが、「世論認知をある一定の方向に導きやすい3つの特徴」として、
(1)共鳴性
(2)蓄積性
(3)遍在性
の3点を挙げています。
 そして、選挙報道に関するアナウンスメント効果として、
(1)バンドワゴン効果:優勢であると報じられた候補に投票しようとする効果
(2)アンダードッグ効果:劣勢であると報じられた候補に対し、それならば救ってやろうという効果
の2種類があることを解説しています。
 1991年の湾岸戦争における情報操作の例としては、大量の原油流出によって油まみれになった水鳥の哀れな姿が、「イラクによる環境テロの典型」として報じられたが、「ここで問題とされているシー・アイランドから流出した油によるものではなく、カフジ製油所から流出した原油による汚染をイギリスの通信社が配信したものだということが判明した」ことを解説し、同じような情報操作が、テレビゲーム画面のようなピンポイント爆撃によって、人命不在の「ハイテク戦争」であるかのようなイメージを作り出してきたと述べています。
 第4章「日常生活に忍び寄る情報操作」では、1992年から93年にかけて頻発した「ヤラセ」事件を取り上げ、これらの事件が、「私たちに、情報操作の虚実を改めて突きつける格好となった」と述べています。そして、マス・コミュニケーション研究者の渡辺武達氏によるヤラセの定義として、「情報送出において、その主題と全体の編集、およびそれに関連する具体的小項目について社会的・科学的真実と異なる形で意図的に番組制作したり、番組を脚色・演出、ないしはレポートする、あるいは番組内で出演者にそのような表現をさせること、もしくは局外者からそのような番組制作および情報送出をさせられること」という定義を紹介した上で、テレビ番組におけるヤラセとして、
(1)世論を誘導する意図を持った番組の制作と放送
(2)全編の偏向
(3)編集上における意図的な事実の削除、あるいは添加
(4)番組内の個別事項の間違いや虚偽
(5)番組内容の誇張表現
(6)ないことをつくりあげる捏造
(7)事実の脚色と歪曲
(8)事実や真実からの逸脱
(9)速報性と映像だけが真実というテレビのメディア特性に起因するもの
の9点を紹介し、「ヤラセは、情報操作の主要な部分を含んでいる」と述べた上で、「ヤラセを可能たらしめる構造的問題」として、
・ハイテクを駆使して、事実を作り上げる技術が発達してきたこと。
・マス・メディアに携わる者の中に、根強い送り手・受け手観があること。
の2点を指摘しています。
 また、流言に関して、オルポートとポストマンが、流言の伝わりやすさを、「その主題の、受け手にとっての重要性(importance)と曖昧さ(ambiguity)の双方の結果」として定義していることを紹介した上で、流言と情報操作の例として、
(1)木下富雄が調査した、豊川信用金庫の取り付け騒ぎに関する流言の伝達経路の研究
(2)1978年から79年にかけて発生した「口裂け女」の流言
の2つの事例を紹介しています。
 第5章「経済情報の操作」では、広告の機能として、
(1)情報提供機能
(2)欲望創成機能
(3)説得機能
(4)文化創造の機能
(5)情報を多極化・多元化するというより広い文脈の中での広告の機能
の5点を挙げています。
 さらに、スコットによる広告が人々に注目されるための条件として、
(1)訴求力の強さは、相対する訴求物がないほど強い
(2)訴求力の強さは、呼び起こされる感覚の強さによって決まる
(3)注目度の高さは、その前後にくるものとの対比によって変わる
(4)訴求力・注目度を高めるには、できる限り分かりやすく
(5)注目度は、目に触れる回数や反復数に影響される
(6)注目度は、広告を見たときに起こされる感情の強さによる
の6点を挙げています。
 本書は、情報が氾濫する社会の中で、自分の立ち位置を見失わないための「情報リテラシー」を身につけたい人にはお勧めの一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者の川上氏が社会とメディアに精通しているかは、平成17年3月の千葉県知事選挙で、著者が選挙参謀としていかに有能な働きをしたかを調べていただければ分かるのではないかと思います。
 単に研究者としてだけではなく、実践の場にて活躍されている姿勢は、多くの研究者に刺激を与えるものではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・自分は自力で情報を理解していると思う人。


■ 関連しそうな本

 川上 和久 『イラク戦争と情報操作』
 菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年09月07日
 横江 公美 『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』 2005年07月13日
 高瀬 淳一 『情報と政治』 2005年06月23日
 ドナルド・R. キンダー (著), 加藤 秀治郎, 加藤 祐子 (翻訳) 『世論の政治心理学―政治領域における意見と行動』 2006年06月19日
 高瀬 淳一 『武器としての「言葉政治」―不利益分配時代の政治手法』 2006年08月10日


■ 百夜百マンガ

パパはなんだかわからない【パパはなんだかわからない 】

 ヤンジャンの四コマ全盛期?を飾った人です。
 ヤンジャンで人気を得た奥さんは、毎日新聞の夕刊でついにお茶の間の顔になってしまっています。

投稿者 tozaki : 2007年10月12日 23:00

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