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2007年10月14日
世間遺産放浪記
■ 書籍情報
【世間遺産放浪記】(#997)
藤田 洋三
価格: ¥2415 (税込)
石風社(2007/04)
本書は、「長く人の生業やくらしとともにあった、『用の結果の美』としての建築や道具。または庶民の饒舌、世間アートとでも呼びたくなるような不思議な造形の数々」である、「世間遺産」を収めた写真集です。
「牡蠣灰窯」(香川県さぬき市津田町)では、ダースベーダーのヘルメットのような構造物を紹介しています。これは、「はるばる広島から牡蠣殻を運び、近くの松林から生まれる松葉を燃料にして、漆喰用の石灰を焼成した」ものであることが紹介されています。
「空中の伺納屋」(広島県庄原市)では、高床部分に農具と藁を収納し、軒下では牛馬を飼ったという高床式の「伺納屋」を紹介しています。
「湯の花小屋」(大分県別府市)では、皮のなめしや茄子漬に始まり、日本画・書道・染色・陶芸にも使用された明礬の原料となる湯の花を現在も産み続ける小屋を紹介しています。
「かわら垣」(兵庫県淡路市)では、廃瓦を利用して積み上げた「かわら垣」を紹介し、このかわら垣が震災を逃れて生き延びたのに対し、「コンクリートで固められた、堅強なはずの阪神高速道路が崩壊した光景を思い出す」と述べています。
「眼鏡橋」(大分県大分市野津原町)では、「『ドカベン』が『土方の弁当』だったということを知らない世代が増えている」ことを嘆くとともに、「土方のオジサン達も老眼鏡が必要な年代となっている」と語っています。
「三和土」(福岡県みやま市瀬高町)では、「土を固めて作る土間」を、「叩き」、「敲き」とも書くが「三和土」とも書くことを紹介し、土間用の土は、風化した可溶性珪酸に富む土が良いとされる「叩き土」と、塩に含まれるニガリと石灰を塗して木片で叩いたものであると解説しています。
「雷おこしの家」(福岡県北九州市八幡東区)では、大正3年着工、昭和2年完成の「東洋一のダム」と称された河内貯水池の管理事務所を紹介し、「ひび割れた泥壁。雑草が芽吹く石垣。それは近代の文明が作り出し、自然が磨きをかけた美しく崩れる建築たち」と語っています。
「擬洋風煉瓦と黒磨きの土蔵」(岩手県一関市花泉町)では、明治38年に建てられた現役の道具蔵を紹介し、「どこかの開港場で西洋煉瓦を見た気仙左官が、これまたどこかの瓦窯で焼かせた特注品ではあるまいか」と想像を働かせています。
「アーチのある温泉」(大分県別府市)では、著者が、温泉建築独自の秘技をおって、タイル職人を追いかけたが、「墓場に行って聞け」、「生きていれば何歳」という返事が返ってくるばかりであったと語っています。
「四階楼」(山口県熊毛郡上関町)では、「上関のピサの斜塔」と称された四階楼について、勤皇の志士・小方兼九朗が明治12年に自邸として建築したものであることを解説し、その擬洋風建築を「鎖国が解け関所や通行手形が廃止された明治時代に、大工と左官の手が見よう見まねで生み出した、和風と洋風が婚姻を結んだような建物」であると語っています。
「稲わら干し」(国内各地)では、脱穀後に積み上げてさまざまな用途のために保存される藁について、「藁塚・藁にお・藁ぐろ・藁小積み」などといわれるほか、地域によっては、「トシャク」、「ボッチ」、「ススキ」などと全く違う呼び名で呼ばれるほか、
・「ヨズクハデ」島根県温泉津町
・「ボウガケ」青森県
・「ワラトツ」鹿児島県
などの写真を紹介しています。
本書は、日本各地の「世間」に埋もれている過去の日本の姿、そして左官を中心とする職人の技を伝えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
世間には色々な「遺産」が残っているわけですが、子供の頃に見た風景を残そうとするのも結構大仕事な気がしてきました。牛小屋と馬糞の匂いというのはもはや当たり前の風景ではないのかもしれません。
■ どんな人にオススメ?
・今見ている風景のうち、50年後は何が残るのか、と考えてしまう人。
■ 関連しそうな本
小林 澄夫, 奥井 五十吉, 藤田 洋三 『泥小屋探訪―奈良・山の辺の道』
藤田 洋三 『藁塚放浪記』
藤田 洋三 『鏝絵放浪記』
『宮本常一―「忘れられた日本人」を訪ねて』
高野 慎三 『つげ義春を旅する』 2007年10月07日
宮本 和義 『和風旅館建築の美』 2007年09月30日
■ 百夜百音
【CD&DVD THE BEST SCANCH 軌跡の詩】 SCANCH オリジナル盤発売: 2005
マッキーの従兄弟としても知られているローリーですが、こういう人は、若い頃よりも年喰った後のほうが味が出てしまうのが恐ろしいです。
投稿者 tozaki : 2007年10月14日 22:00
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