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2007年10月19日

消える本屋―出版流通に何が起きているか

■ 書籍情報

消える本屋―出版流通に何が起きているか   【消える本屋―出版流通に何が起きているか】(#1002)

  山田 淳夫
  価格: ¥1890 (税込)
  アルメディア(1996/07)

 本書は、著者の住む町に、「ショッピングセンターができて大型書店がテナントとして入った後、7軒あった書店が僅か1軒になってしまった」というエピソードを紹介した上で、1990年代に日本中の書店で起こった変化を紹介しているものです。
 第1章「消える本屋」では、コンビニエンスストアの成長の秘密として、POSを活用した売れ筋商品への徹底的な販売集中と、"死に筋"商品の排除を挙げた上で、1992年度にセブン-イレブン扱いの出版物の売上額が1000億円を突破し、出版物小売業界のトップに躍り出たことを紹介しています。そして、千葉県船橋栄町店オーナーの「町の書店の雑誌コーナーは死体置き場ですな」という言葉を紹介し、「出版物をこのように生鮮食品と同じレベルで扱い、商品の回転率一辺倒、最新号の雑誌も売れなくなる前にどんどん返品すると言うやり方は、もちろん書店の商売のやり方にはなじまない」と述べています。
 また、町の本屋が次々と廃業する現状について、書店従業員の労働条件の悪さを指摘するとともに、最近の書店の特徴として、
・郊外化
・複合化
・大型化
・チェーン化
を挙げています。
 著者は、コンビニエンスストアの「情報を駆使したその飽くことなき販売と流通改善の努力に保守的な出版業界が学ぶことは少なくない」としながらも、「その目先の"おいしさ"に目がくらむと、出版社も取次会社もとんでもないことになる危険性をはらんでいる」と述べています。
 第2章「流通の改善」では、書店で本を注文すると何週間もかかる、というクレームが多いことについて、
・書店が注文伝票を起票
・短冊を郵便で取次会社に発送
・取次会社で手持在庫の有無を調べ、ある場合は、書店別に仕分け
・ピッキング(書籍抜き出し)、書店ごとに梱包、伝票作成、発送
・輸送
などのプロセスを紹介しています。
 また、当時の新しい流れとして、1986年にクロネコヤマトがはじめた「ブックサービス」を紹介し、その強みが、「集品と配送に走り回っている宅急便トラックをフルに活用していること」を挙げ、書店とタイアップして、書店への「客注」をサポートする業務を始めたことを紹介しています。
 さらに、「出版流通業界の根幹に関わってくる問題」として、「再販制(定価制)と委託販売制(返品制)」を挙げ、「返品製に支えられて、書店は常に必要以上に多めの注文を出し、一方出版社側は、それが結局売れ残って大量の返品となって戻ってくることを警戒して、必ず注文数を割り引いて送品するという『出庫調整』やすぐには送品しない『出庫保留』によって対抗するというイタチごっこを繰り返してきた」と指摘しています。
 著者は、トーハンの取締役に名を連ねているイトーヨーカ堂社長、セブン-イレブン会長の鈴木敏文氏の言葉として、「いま注文した本が届くまでにどのくらいかかりますか? 読者にとっては読みたいときが買いたいときです。いま読みたいものを二週間も三週間も後にもらったって、その頃は興味は他へ移っていますよ。そういうことをやっているから、読者がどんどん減ってしまう」という指摘を紹介しています。
 第3章「本と再販制」では、政府規制等と競争政策に関する研究会再販問題検討小委員会が1995年7月25日に発表した中間報告書「再販適用除外が認められる著作物の取り扱いについて」が、「業界の予想を上回る厳しい内容」であったことを解説しています。
 そして、再販制が、戦時中から戦後にかけて、国が文化政策として、「新聞と雑誌については国鉄(現、JR)による特別運送制度と第三種郵便制度によって、全国同一料金による輸送を保証してきた」経緯があるため、たラック輸送においても、「送品時の運賃は取次会社負担という慣習に従って、都内の運賃も遠隔地の運賃も取次会社の輸送コストの中に含まれている」ことを解説しています。
 また、わが国の出版物の販売が、
(1)委託販売制:一定の期間内であれば売れ残った商品の返品を認める制度。
(2)再販制:定価販売によって書店、取次会社、出版社の粗利も一定であることが、出版業界の経営を安定したものにしている。
の2つを基本にして成り立っていると解説しています。
 第3章「本と再販制」では、著者の意見として、「多様で豊かな出版文化を支えて行く上で再販制度はやはり必要だと考える。著作物の再販制度は、いわば文化的環境の保護制度と言っても良いだろう」と述べています。
 第4章「情報発信基地」では、「再販制度によって文化が守られると言いながら、出版業界は、出版社も取次会社も経済効率優先で地方の読者をなおざりにしてきた。『地方では本は売れない』として、話題になっているベストセラーなどの配本も後回し。都会で売れ残り始めてから、ようやく地方の書店に配本される」という現状を指摘し、「出版業界が再販制度の維持に当たって、『文化』を掲げるのなら、業界が率先して地域文化を支えていることを態度で示さなければおかしい」と主張しています。
 本書は、本を愛する人にとっては馴染み深い「本屋」が抱える構造的な問題を指摘した一冊です。


■ 個人的な視点から

 昔、本屋でバイトしたことがありますが、まさしく郊外の大型チェーン店で店員はほとんどバイト、というものでした。事前には、「本屋の店員」というと、
・立ち読みしているお客にハタキをかける。
・万引き犯を捕まえる。
なんていうイメージ(妄想?)があったのですが、現実には、立ち読みは自由、怪しい動きをしている客がいたら近くの本を並べなおしたりして牽制する、というくらいで、出口で「お客さん、ちょっと鞄の中見せてください」なんていうやりとりはありませんでした。
 それから返本の山を箱詰めするなどの力仕事が結構ありました。


■ どんな人にオススメ?

・近所の本屋が減って寂しく思っている人。


■ 関連しそうな本

 田口 久美子 『書店風雲録』
 小林 一博 『出版大崩壊―いま起きていること、次に来るもの』
 江口 宏志, 北尾トロ, 中山 亜弓, 永江 朗, 幅 允孝, 林 香公子, 堀部 篤史, 安岡 洋一 (著) 『本屋さんの仕事』
 青田 恵一 『たたかう書店―メガブックセンター・責任販売・万引き戦争 ジャンル別マネジメント・新古書店対策』
 田口 久美子 『書店繁盛記』
 木下 修, 吉田 克己, 星野 渉 (著) 『オンライン書店の可能性を探る―書籍流通はどう変わるか』


■ 百夜百マンガ

暴れん坊本屋さん【暴れん坊本屋さん 】

 本屋さんの日常と活躍を描いた作品です。こういうのを読むと書店員になりたくなります。小さな古本屋のレジで一日中本を読んでる店員さんが一番の憧れですが。

投稿者 tozaki : 2007年10月19日 07:00

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