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2007年11月01日

戦争プロパガンダ 10の法則

■ 書籍情報

戦争プロパガンダ 10の法則   【戦争プロパガンダ 10の法則】(#1015)

  アンヌ・モレリ (著), 永田 千奈 (翻訳)
  価格: ¥1575 (税込)
  草思社(2002/03)

 本書は、民主主義国家において、「開戦に当たり国民の同意を得ることが必要不可欠」であるため、「世論を動かして参戦に同意を得るため」に用いられる、10か条からなる「戦争プロパガンダの法則」について解説したものです。
 本書のもとになっているのは、1928年にロンドンで出版されたアーサー・ポンソンビーの『戦時の嘘』であり、「第一次大戦中、イギリス政府は、あらゆる国民に義憤、恐怖、憎悪を吹き込み、愛国心を煽り、多くの志願兵をかき集めるため(当時、イギリスでは兵役が義務ではなかった)、『嘘』をつくりあげ、広めた」ことを暴こうとし、戦争プロパガンダを、10項目の「法則」に集約しているものです。本書は、「この10項目を1章ずつたどっていこう」とするものであり、「ポンソンビーの指摘した状況」が、「現存する政治システムのなかでも、紛争が起こるたびに繰り返されているという実情を示す」ことであると述べています。
 第1章「われわれは戦争をしたくはない。」では、「あらゆる国の国家元首、少なくとも近代の国家元首は、戦争を始める直前、または宣戦布告のそのときに、必ずといっていいほど、おごそかに、まつこう言う」と指摘し、「まずは、平和を愛していると見せかけるほうが得策」であると述べています。
 第2章「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ。」では、「両陣営とも、相手国が流血と戦火の悲劇を引き起こそうとするのを抑止するために『やむをえず』参戦するという矛盾した構図は、第一次世界大戦時にすでに存在している」ことを指摘しています。著者は、第二次大戦の開戦時のドイツ、日本の側でも、「連合国側に戦争の責任がある」という論理が用いられていることを挙げ、「敵対状態にある双方が、同じ言葉を用いているという事実」を指摘し、「紛争が生じたとき、敵対する双方の情報源や資料の全体像が見えないまま、どちらが加害者であるかを判断することは不可能である」と述べています。
 第3章「敵の指導者は悪魔のような人間だ。」では、「たとえ敵対状態にいあっても、一群の人間全体を憎むことは不可能」であるため、「相手国の指導者に敵対心を集中させることが戦略の要となる」と述べ、「ありとあらゆる手段を使って敵の対象を悪魔に仕立て上げ、征伐すべき悪人、恐竜の生き残り、異常者、野蛮人、凶悪犯罪者、人殺し、平和を壊す者、人類の敵、怪物だと人々に示すことが必要なのだ」と述べています。
 第4章「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。」では、「多くの場合、経済効果をともなう、地政学的な征服欲があってこそ、戦争が起こる」が、「こうした戦争の目的は国民には公表」されず、宣戦布告に対する国民の同意を得るため、「その国の独立、名誉、自由、国民の生命を護るために戦争が必要であり、この戦争は確固たる倫理観に基づく」ものであると、「戦争の目的を隠蔽し、別の名目にすり替え」る戦争プロパガンダが行われることを指摘しています。
 そして、NATO軍によるユーゴスラヴィア空爆の例を挙げ、「開戦の動機は、人道的なものでも愛他主義でもない。ただ、開戦時、攻撃の必然性を疑う世論に対して、説得力のある理由を示すことが重要だったのだ」と指摘しています。
 第5章「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる。」では、「ここでいうプロパガンダによく見られる現象」として、「敵側だけがこうした残虐行為を行っており、時刻の軍隊は、国民のために、さらには他国の民衆を救うために活動しており、国民から愛される軍隊であると信じ込ませようとすること」を指摘し、「敵の攻撃を異常な犯罪行為とみなし、血も涙もない悪党だと印象づける」という戦略について述べています。
 そして、第一次大戦時の連合国側のプロパガンダで、「もっとも成功をおさめ、政治的に大きな影響力をもった」ものとして、「手を切断されたベルギー人の子供たち」の話を挙げ、この「手を切断」という言葉が、「野蛮人に対して善悪の裁きを下す戦いだという倫理的な動機、さらに長く厳しい戦いになりそうだという予感など、当時の世論を集約し、象徴するものとなった」と述べています。しかし、終戦後、このプロパガンダに心を動かされたアメリカ人富豪が、「手を切られた子供と会って話がしたい」とベルギーを捜索したが、「誰一人として実際の被害者を見つけることができなかった」ことを紹介しています。
 著者は、「どちらの陣営だろうと、暴力というのは程度の差こそあれ残忍なものであり、状況、手段、訓練や命令のあり方次第では、想像を絶する激しいものとなる」と述べ、「戦争プロパガンダは、こうした暴力を用いるのは敵側だけだと思い込ませ、自国の軍隊が暴力的な行為をしたとしても、それは失策や不注意から『不本意に』起きてしまったことだと主張」するとしています。
 また、現代においても、アメリカがクウェート侵攻を制裁するための国民の支持を得るため、広告会社が流した、「保育器を盗もうとしたイラク兵が、なかにいた未熟児を放り出した」という作り話を利用し、「紛争介入を肯定する一大キャンペーンを行った」例を挙げています。
 第6章「敵は卑劣な平気や戦略を用いている。」では、第5の法則の当然の帰結としてこの法則がなりたると述べ、「多くの場合、技術的な優劣が勝敗を決定する」ため、技術的に劣る側は、「自分たちが使えない兵器を、敵が一方的に攻撃に用いるのは卑怯」であると非難し、「自国が行うときには合法的かつ巧妙な戦略として有効な『奇襲』も、敵陣が仕掛けてくれば卑劣な行為と非難する」と述べています。
 第7章「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大。」では、「戦況が思わしくない場合、プロパガンダは自国の被害・損失を隠蔽し、敵の被害を誇張して伝える」とのべ、第一次大戦開戦後の1か月で、フランス軍の被害は死者約31万3千人にのぼっていたが、「フランス軍参謀は、軍馬1頭の被害も一切公表せず、(英軍、独軍のような)戦死者名簿も発表しなかった」と述べています。
 第8章「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している。」では、「感動は世論を動かす原動力であり、プロパガンダと感動は切っても切り離せない」と述べ、「感動をつくりだすのは、お役人の仕事ではない」ため、「職業的な広告会社に依頼」するか、「感動を呼び起こすことが得意な職業、芸術家や知識人に頼ることになる」と述べています。
 著者は、「戦意高揚のために芸術家、知識人、文化人が駆り出される」ことについて、
(1)知性、才能とは何か。
(2)なぜ彼らがその精神を、その筆を、戦争プロパガンダに提供したのか。
の2つの疑問を呈し、「聖なる連帯感は、批判精神をすっかり麻痺させてしまう」と述べています。
 第9章「われわれの大義は神聖なものである。」では、「民主主義、『文明』、自由、市場経済といった概念も、不可侵の価値をもつものとして宗教と同様の意味を持つことが多い」と述べ、「とくに『民主主義』という概念は、あらゆる犠牲を払ってでも守り抜かねばならない神聖なものになった」と指摘しています。
 第10章「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である。」では、「戦時において、慎重に判断を行なうもの、立場を決める前に双方の言い分を聞こうとする者、公式発表の情報を疑う者は、即座に『敵のまわし者』にされてしまう」と述べています。
 そして、「戦時に政府が判断を誤った場合、多大な損害が生じることになる。だから、本当は戦時にこそ、政府の誤った決定を正せるように、言論の自由が保障されるべきなのだ」と主張しています。
 著者は、戦争プロパガンダの法則を突き詰めていくと、
・われわれは、今なお、先人たちのように情報をうのみにしていまうだろうか。
・こうした法則は意識的に実践されたのだろうか。
・真実は重要だろうか。
・なにもかも疑うのもまた危険なことではないだろうか。
という「根本的な疑問にたどりつく」と述べています。
 本書は、戦争を前にして、国家がどういう態度を取るのかを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 そう言えば日本も海の向こうの戦争と関わって色々揉めているわけですが、こういう場合の政府のプロパガンダっていうのはどういう風に行われているのでしょうか。なかなかその時代にいながら国家の情報操作の全容を理解するのは難しいのかもしれませんが、そのための能力を磨く必要はありそうです。


■ どんな人にオススメ?

・戦争と国家に一定の距離を保ちたい人。


■ 関連しそうな本

 高木 徹 『ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争』 2006年11月27日
 高瀬 淳一 『情報と政治』 2005年06月23日
 横江 公美 『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』 2005年07月13日
 菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年09月07日
 村上 龍 『海の向こうで戦争が始まる』
 川上 和久 『情報操作のトリック―その歴史と方法』 2007年10月12日


■ 百夜百マンガ

おやこ刑事【おやこ刑事 】

 子供たちが「太陽にほえろ」を真似てケイドロ遊びをしていた頃、徹底的に人間ドラマを追求していた作品です。

投稿者 tozaki : 2007年11月01日 21:00

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