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2007年11月20日

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する

■ 書籍情報

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する   【グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する】(#1034)

  佐々木 俊尚
  価格: ¥798 (税込)
  文藝春秋(2006/04)

 本書は、「検索エンジンを軸にして新たなインターネットのパワーを生み出し、そのパワーをテコにしてありとあらゆる業界へと進出を図ろうとしている巨大企業」である「グーグル」が、なぜそれほどのパワーを持ち、どのような影響を社会に与えようとしているのかを描いたものです。
 第1章「世界を震撼させた『破壊戦略』」では、「グーグルはこの数年、ありとあらゆる局面で『破壊戦略』をスタートさせている」として、「グーグルニュース」や、オフィスソフト、「Gメール」、「グーグルマップ」、無料の無線インターネット接続サービス構想である「グーグルネット」などを解説しています。そして、グーグルニュースに関しては、辺境のマイナー新聞がグーグルニュースに載ることで多くの読者を得ることができるようになった例を挙げ、「『情報のハブ(中心地)』が轟々と音を立て、別の場所へと軸を移していく」と述べ、これまで情報のハブを握っていたのは、一部の大手マスコミであり、「マスコミの側は自由に情報を動かし、自在にマスコミが作り上げる空間を演出していた」が、グーグルニュースの登場によって、「今後そのハブを握るのはグーグルとなる。グーグルの計算式(アルゴリズム)が情報のハブとなり、情報の空間を支配する司祭となっていくのである」と解説しています。
 第2章「小さな駐車場の『サーチエコノミー』」では、羽田空港近くで小さな駐車場を経営している「山崎夫妻」を取り上げ、羽田空港利用客から預かった車を1時間以上もかかる神奈川県内の駐車場や大田市場の無料駐車場に停めてしまうような「魑魅魍魎の世界」である羽田民間駐車場業界に参入した山崎夫妻が、他の業者が行なっているような巨額なマージンがかかる旅行代理店に頼らず、ビジネスを展開するために、「キーワード広告」を利用したことを解説しています。
 また、インターネットの古典的な広告であるバナー広告が、「クリックできる」ことに最大の特徴を持ち、広告代理店は、「テレビや雑誌の広告と違って、クリック回数を計れば広告効果がどの程度あるのかがすべて計算できる」とPRしたことについて、これは「パンドラの箱」を開けてしまった、と述べ、「それまでのテレビや雑誌の広告は『本当に効果があるのかどうかわからないけれど、ものすごく多くの人が見ているし、おそらく効果はあるのだろう』という漠然とした広告主の期待感から成り立っていた」が、この「期待感」に対しては、「本当は広告効果なんかないんじゃないか」という指摘が少なくなく、「インターネットの広告は、そうした砂上の楼閣に対するアンチテーゼとして登場したといってもいいかもしれない」と指摘しています。
 さらに、グーグルの検索エンジンの革新性について、
(1)「クラスタリング(結合)」というコンピュータ・テクノロジーを採用し、普通の安価なパソコンを数千台つないで、爆発的に増加するホームページをデータベース化することに成功した。
(2)「人気のあるホームページからリンクが張られているページはよいホームページ」という考え方に基づいた「ページランクテクノロジー」の開発。
の2点を挙げています。
 第3章「一本の針を探す『キーワード広告』」では、山崎夫妻の駐車場の広告のターゲットが、「関東一円に散らばっていて、しかも格安チケットを持っていて、そして羽田空港に自家用車で行こうと思っている人」という特殊なターゲットに広告を届けることが、これまでのマスメディア広告や折り込み広告などでは不可能であったのに対し、キーワード広告はそれを可能にし、「日本全国に(世界中に)散らばる特定の人たちに広告を届けることができるモデル」であると解説しています。
 山崎夫妻は、「羽田 駐車場」「羽田空港 駐車場」「羽田空港 民間駐車場」のようなキーワードで数万円からスタートし、「顧客にダイレクトに広告が投げ込まれる」ことによって、「きちんと顧客と向き合って、商売を続けていくことができる」納得のいくスタイルであり、「旅行代理店のおこぼれをもらうんじゃなくて、自分でキーワード広告を使って一生懸命顧客を開拓するようになって、考え方がすごく変わった」と語っていることを紹介しています。
 第4章「メッキ工場が見つけた『ロングテール』」では、古くからマーケティングの世界で使われてきた、「パレートの法則」「80:20の法則」が、「こと商品の販売に関しては当てはまらなくなりつつある」として、これまで死に筋だと思われた残りの20%の部分の商品が、「ものすごい勢いで売れるようになってきた」と述べ、その原因は、「インターネットが出現し、グーグルの高性能な検索エンジンがネット利用の中心になるにしたがって、消費者のニーズが劇的に変わってきたからである」と述べ、商品を売れる順に並べたグラフでは右側に長く広がる「長い尻尾」の形の部分の売れ行きが増える「ロングテール現象」が起きていると解説しています。そして、この現象によって、「それまで商売にならないと思われていたような顧客層――ある程度の数は存在するけれども、全国や全世界に転々と散らばってしまっているために、顧客にするのは難しかったような人たちにモノを買ってもらうことが可能になった」と解説し、「消費経済を根底からひっくり返してしまいかねない」ため、「サーチエコノミー(検索経済)」という大げさな用語が登場していると述べています。
 また、福井県の地場メッキ工場だった「三和メッキ」が、「『メッキ』という言葉で検索しても、三和メッキの名前が出てこない!」ことに気づき、キーワード広告やSEO対策に取り組んだ結果、全国の企業から仕事が舞い込むようになり、なかでも「東京にある企業の研究施設のメッキのニーズ」というニッチな市場を、秘密保持契約を結ぶことで押さえることに成功したことについて、「研究施設や工場などから小口のメッキを受注し、それらを次々にこなしていくというニーズは、新しいロングテールそのものだ」と述べています。
 第5章「最大の価値基準となる『アテンション』」では、「ロングテールを最大限に活用し、自社の収益につなげているのがグーグルという企業なのである」と述べた上で、グーグルは、収益構造を見る限り、「検索エンジン企業」と言うよりも、「巨大な広告代理店」になりつつあると述べています。そして、アドワーズとアドセンスという確固とした収益モデルの上に、「無線インターネット接続やオフィスソフト、案内広告(クラシファイド)などの新しいビジネスもどんどん無料で提供していくことができる」と述べています。
 また、「グーグルが実現しようとしている」ことは、グーグルニュースなどの「各種サービスの上でインターネットの個人ユーザーや企業などがありとあらゆる情報を交換し、売買し、金銭を流通させることのできる、巨大な場所(プラットホーム)を作り上げることである」と述べています。
 さらに、「アテンションがすべてを支配するアテンションエコノミーの世界」では、「囲い込み」という戦略はありえず、「人々がお互いのアテンションに基づいてさまざまなコンテンツや情報を流通させる際に、その流通を『仲介』することが、最高の戦略となる」と指摘しています。
 第6章「ネット社会に出現した『巨大な権力』」では、アメリカのビジネス誌『BUSINESS2.0』に掲載された「グーグルがメディアになる」という記事で、「グーグルがすべてを呑み込んでいくという将来像」がリアルに描かれ、この記事では、「グーグルが通信インフラになる」「グーグルが消滅する」などの可能性を論じた上で、「グーグルが神になる」という章で締めくくられていると紹介しています。
 そして、「グーグルの未来像は、新しいタイプの監視社会の幕開けとなるかもしれない」と述べ、かつて語られた「ビッグブラザー」という「国家主義的な監視システム」はいまや古いモデルであり、「現在進んでいる監視社会は『民』が主体になっている」と述べています。
 著者は、「世界のすみずみまで入り込み、すべてを見通している神の姿」を、「グーグルの未来の姿、そのものかもしれない」、「グーグルこそが、『神の遍在』なのである。それがわれわれにとって薔薇色の夢となるのか、それとも暗黒の悪夢となるのかは、まだ誰にもわからない」と述べています。
 本書は、普段便利に使っているグーグルの持つ意味を考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 グーグルにはいつもお世話になっていますが、最近の検索結果は、かなとカタカナと漢字の間に融通が出てきたような気がします。もちろん便利なのですが、昔の融通の効かない頑なさもそれはそれで便利だったので使い分けられるようにしてもらえると嬉しいです。


■ どんな人にオススメ?

・グーグルは検索エンジンだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 嶋田 淑之, 中村 元一 『Google―なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか』 2005年08月18日
 梅田 望夫 『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』
 ジョン・バッテル (著), 中谷 和男 (翻訳) 『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』 2006年06月20日
 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
 スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』 2006年04月10日
 ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 栗原 聡, 福田 健介, 佐藤 進也 (翻訳) 『スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス』 2006年03月22日


■ 百夜百マンガ

一撃伝【一撃伝 】

 そんなに拳法ブームでもなかった時代から中国拳法を取り上げていたような気がします。

投稿者 tozaki : 2007年11月20日 22:00

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