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2007年11月14日

下流社会 新たな階層集団の出現

■ 書籍情報

下流社会 新たな階層集団の出現   【下流社会 新たな階層集団の出現】(#1028)

  三浦 展
  価格: ¥819 (税込)
  光文社(2005/9/20)

 本書は、「所得格差が拡がり、そのために学力格差が広がり、結果、階層格差が固定化し、流動性を失っている」という説が多数発表されたことについて、「日本が今までのような『中流社会』から『下流社会』に向かうということである」ことを解説し、「そういう時代を前にして、若い世代の価値観、生活、消費は今どう変わりつつあるのか」を論じているものです。この「下流」とは著者の造語で、「下層」ではなく、「基本的には『中の下』」であり、「中流であることに対する意欲のない人、そして中流から降りる人、あるいは落ちる人」を指すと述べています。
 第1章「『中流化』から『下流化』へ」では、「おそらくもうあまり成長はしない」わが国の社会の中で、「皆が中流であることを目指すことに価値はなく、むしろ自分にとって最適な生活、最適な消費、暮らしを求めるようになっているようにも見える」と述べています。
 第2章「階層化による消費者の分裂」では、「女性の行き方が多様化し、女性が分裂していく」として、女性を、

      上昇志向(高地位志向)
         ↑
   お嫁系   | ミリオネーゼ系
        普通の
専業主婦←―――OL系―――→職業志向
志向       |
   ギャル系  | かまやつ女系
         ↓
        現状志向

の5つのタイプに類型化し、「現在、女性の格差が拡大している」のは、「かつてのように、単に夫の所得の多寡に帰せられる格差」ではなく、「自分自身が稼ぎ出す所得、その背景にある自分の学歴、その背景にある親の階層、そして自分自身の性格、容姿など、様々な要因によって形成されるライフスタイル全体の格差である」と解説しています。
 また、男性についても、「現在、若者が就職できるかどうかは、本人の実力はもちろんだが、親の階層に規定されているという見方も可能だ」と述べ、「若者が弱者と強者に分裂、二極化した」と述べ、極端に言えば、「高い階層の親から生まれた者は、学習塾と私立中高一貫校に進み、より高い学歴を得て、よりよい仕事につきやすい。低い階層の親から生まれた者は、公立の学校にしか行かず、学歴が低く、高卒で止まりがちであり、良い仕事につきにくく、失業者、無業者になりやすい」という現実が進行してきたと述べています。
 第3章「団塊ジュニアの『下流化』は進む!」では、「昭和ヒトケタ世代、団塊世代、新人類世代、団塊ジュニア世代を比較した『欲求調査』をもとに4世代の世代別・男女別の階層意識を比較」しています。
 そして、山田昌弘東京学芸大学教授の『希望格差社会』に関して、高度成長期は、「貧しい人ほど希望をたくさん持つことができた時代だった」と述べ、「低い階層の人ほど多くの希望と可能性を持ち、高い階層の人ほど、それまであった権利を縮小された時代であり、その意味で、個別具体的な事例はともかく、総じて言えば、希望格差が縮小する時代であった」とする一方、「現在は、将来の所得の伸びが期待できる少数の人と、期待できない多数の人、むしろ所得が下がると思われる少なからぬ人に分化している」と述べ、「希望が持てるかどうかが階層格差によって規定される。つまり希望が持てる階層と、希望が持てない階層に分化し、その階層が固定化する」ことこそ、山田の希望格差論であると述べています。
 第4章「年収300万円では結婚できない!?」では、「『欲求調査』をもとに、団塊ジュニアの階層意識別に所得、結婚、家族、職業などについてどのような違いがあるか」を見ています。
 そして、近年、「学歴と階層意識の相関も高まった」として、「裕福な専業主婦になるためにも高学歴が必要である。なぜなら、収入の高い男性と出会うためには一流企業に入った方が有利であるが、近年一流企業に入るためには、たとえ一般職でも四年生大学卒であることが求められるからである」と述べています。
 著者は、「配偶関係、家族形態、職業などの観点から階層意識を見てくると、従来型の理想の結婚増や家族像は決して弱体化はしていないことがわかる」と述べ、女性の生き方や家族形態は多様化したが、「必ずしも幸福の形が多様化したというところまではいっていない」と述べています。
 また、コラム「恋愛にも階層の壁ふたたび」では、「自由恋愛が輝きを持っていた時代は70年代がピークであったに違いない」と述べ、「80年代以降、階層化が進んで自由恋愛が困難になった」として、「結婚ほど同じ階層の人間同士を結びつけるものはない。個人だ、自由だと入っても、そもそも異なる階層の人間と出会うチャンスがないし、出会っても、恋愛の、まして結婚の対象とは考えないのが普通である」と述べています。
 第5章「自分らしさを求めるのは『下流』である?」では、団塊世代が、「消費社会の主役として、1960年代以降、個性的であることを前として生きてきた」と述べ、自分らしさ志向が拡がっていった結果として、「若い世代では『下』ほど自分らしさ志向が強く、『上』ほど自分らしさ志向が弱いという逆転が起きたことは、やはりにわかには理解しがたい」が、教育社会学者の苅谷剛彦東京大学大学院教授が、「親の階層が低い高校生ほど学習以外に自己能力感のある者が多いと指摘したことと呼応している」と述べ、「自己能力感を自分らしさ志向や自己実現感覚と読み替えれば、下流ほど自分らしさ志向が強いことが説明できる」と解説しています。
 第7章「『下流』の性格、食生活、教育観」では、「コミュニケーション能力が高い男女ほど結婚しやすく、仕事もでき、消費も楽しむという一方で、コミュニケーション能力の低い男女ほど結婚しにくく、一人でいることを好み、仕事にも、消費にも意欲がないという分断が生じる」と述べています。
 また、高度成長期以前は「貧しい人ほど加工食品を食べなかった」が、「現在は加工食品の方が安いし、自分で作るよりコンビニ、ファミレス、居酒屋に行った方が安い。よって、下流ほどそうした食産業に依存する」と指摘し、日清食品が、高付加価値の健康志向ラーメンと低価格商品とに二極化した製品を出すと言われていることを紹介しています。
 著者は、「親がエリートだからといって、子供にエリートとなる人生を強要できないように、親が、自分らしく、マイペースで、のんびり生きたい、実際そう生きているからといって、子供にもそういう価値観、人生を押し付けていいわけではない。親は、そして行政、社会は、すべての子供にできるだけ多様な人生の選択肢を用意してやるのが義務だと私は考える」と主張しています。
 第8章「階層による居住地の固定化が起きている?」では、「第四山の手論」という説を紹介し、「テレビドラマの『金妻』に象徴されるように、東急田園都市沿線などは、住民の高齢化と共に次第に高級住宅化してきた」現象を解説しています。そして、「総じて、東京郊外、とくに横浜・川崎で生まれ育つことは、現在の団塊ジュニアの階層意識によい影響を与えていることはどうも確かである」と述べています。
 また、「今住んでいる沿線、地域に固定していく」という住む場所の固定化について、「1960年代生まれくらいから、始めから大都市圏に住んでいた人」が増えたため、団塊ジュニアにとっては「郊外が故郷なのだ」と述べ、これは、「国土政策上そのように誘導されてきた」者であり、1985年に国土庁が発表した「首都改造計画」が見事の実現しつつあるのが現在であると言える、と述べています。
 そして、「生まれた時から東京の郊外の同じような住宅地の同じような中流家庭に育った同じような価値観の若者が増えるということは、異なるもの同士のぶつかり合いから、新しい文化が生まれる可能性を縮小させている」と述べ、それは「世界の縮小」であると指摘しています。
 「おわりに――下流社会化を防ぐための『機会悪平等』」では、「完全機会均等論は解決しがたい問題を内包している」として、「もし、完全なる機会均等社会が実現したら、結果の差はすべて純粋に個人的な能力に帰せられる。しかしそれはそれで非常に過酷な社会ではないか」と指摘し、「もちろん機会均等は重要なのだが、それより求められるのは『機会悪平等』の仕組みなのではないか」と述べています。
 本書は、単なる社会評論ではなく、勃興している「下流」という巨大な消費ターゲットをマーケティングの目で捉えた一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の場合、本文中で「下流」と名指しされる人が多く、誰でもどこか思い当たるところがあるだけに、ドキリとさせる→だから売れた、というところがあるのかもしれません。学術的な内容では決してないですが、新書自体のマーケティング戦略としては秀逸なのかもしれません。
 昔から劣等感を煽る商品は廃れないと言いますが、なかなか正面切って「貧乏」を取り上げるのは難しいなか、「中の下」のコンプレックスをくすぐるマーケティングとしては秀逸だと感じます。


■ どんな人にオススメ?

・自分は「下流」かもしれない、と思う人。


■ 関連しそうな本

 橘木 俊詔 『日本の経済格差―所得と資産から考える』 2006年02月10日
 苅谷 剛彦 『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』 2006年02月14日
 B.エーレンライク (著), 曽田 和子 (翻訳) 『ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実』 2007年06月25日
 ポリー・トインビー (著), 椋田 直子 (翻訳) 『ハードワーク~低賃金で働くということ』 2006年03月08日
 白波瀬 佐和子 『少子高齢社会のみえない格差―ジェンダー・世代・階層のゆくえ』 2006年03月10日
 山田 昌弘 『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』 2006年01月11日


■ 百夜百マンガ

TOUGH【TOUGH 】

 高校生ではなくなった続編ですが、かれこれ15年ほど前の作品なわけです。主人公の名前に時代を感じてしまいます。

投稿者 tozaki : 2007年11月14日 22:00

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