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2007年11月26日

アンビエント・ファインダビリティ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

■ 書籍情報

アンビエント・ファインダビリティ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅   【アンビエント・ファインダビリティ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅】(#1040)

  ピーター モービル (著), 浅野 紀予 (翻訳)
  価格: ¥1995 (税込)
  オライリージャパン(2006/04)

 本書は、「わたしたちの日々の生活の中ですでに現実のものとなろうとしている、どこにでもコンピュータが偏在する環境、すなわち『ユビキタスコンピューティング環境』の中にあって、私たちが日常的に情報に接する方法がいかに劇的に変化してきているか、そして、その接し方の変化によって私たちの生活がどのように変わろうとしているのかについて、非常に多くの具体例を示しながら解説」を試みているものです(巻末「解説」より)。
 第1章「遺失物取扱所」では、「われわれは、ファインダビリティの進化の変節点にいる。情報にアクセスするためのあらゆる新型インターフェースや装置を作り出すと同時に、ヒトや場所、製品、所有物などについてのすさまじく大量の情報を、ユビキタスなデジタルネットワークにインポートしつつあるところなのだ」と述べ、「各種プロセッサやセンサ、RFIDタグ、その他関連テクノロジ製品のサイズと価格は、ティッピングポイント(臨界点)に近づきつつある」としています。
 著者は、「インターネットがユビキタスコンピューティングに出会う場所」において、「アトムの大地とビットの海を結ぶ、今出現しつつある新たな海岸線を地図に記すにあたって、自分たちの来し方行く末を見晴らすためには、『ファインダビリティ』が有能なレンズになってくれる」と述べています。
 そして、本書のタイトルである「アンビエント・ファインダビリティ」を、「現在急速に出現しつつある新たな世界を表現する言葉」であり、この世界では、「誰の居場所でも何のありかでも、いつでもどこでも見つけることができる。われわれはまだその世界まで到達していないが、間違いなくその方向に向かって進んでいる」と述べています。
 また、Amazonの書籍売り上げの半分以上が、売り上げトップ130,000タイトル(これはBarnes & Nobleの店舗の品揃え点数)より下位の商品から成り立っているという、いわゆる「ロングテール」について、「限界費用がゼロ同然になる経済においては、競争への挑戦と大いなる勝利は、ファインダビリティの中にある」と述べ、「ファインダビリティは今日、ウェブにおける最大の話題であり、情報入手経路の収束とユビキタスコンピューティングの津波が海岸に押し寄せるにつれて、その到達範囲はさらに広がるだろう。現実空間で身体を動かす必要がどんどん少なくなるとしても、われわれは内蔵センサと空間的メタデータがあふれる物質世界をナビゲートするために、ウェブを利用するだろう。集団地とインスピレーションを捜し求める情報通の消費者たちが踊る進化するダンスにおいて、モバイル機器がデータの流れを1つにするだろう。そしてこのアンビエント経済の中で、ファインダビリティは競争優位性の重要な源になるだろう」と述べています。
 そして、「ファインダビリティは、われわれがどのように権威を定義し、信頼性を割り振り、意思決定を下すのかというプロセスにおける、静かなる革命の中心にある」と述べています。
 第2章「経路探索小史」では、「位置情報サポートとユビキタスコンピューティングが交わる地点で、人間はますます、物理空間とサイバースペースを結ぶハイブリッドな環境の中でナビゲーションを行うようになりつつある」と述べています。
 また、「情報の視覚化技術を利用してウェブをマップ化しようとする試み」が、ことごとく失敗している理由として、「そこには『その場にいるという実感』がないから」であると述べ、「空間的メタファーには限界がある」ことを認めた上で、「それでも、そこにはやはり真の価値がある」として、「ファインダビリティは物質世界とデジタル世界との架け橋であり、それらの間でユーザがさまざまな概念を思いのままにインポート/エクスポートできるようにしてくれる」と述べています。
 第3章「情報とのインタラクション」では、「有益な情報システムを設計するには、ユーザとその社会的背景についての深い理解が不可欠」であると述べ、「失敗に終わったウェブサイト、イントラネット、インタラクティブ製品のほとんどの背景には、ユーザとその情報探索行動についての見当違いなモデルが存在している。ユーザは複合的であり、社会的である。そして、情報もまた同じだ」と指摘しています。
 また、1948年にカルヴィン・ムーアズが「情報検索(information retrieval)」という用語を生み出したパンチカードの時代から、「情報検索の中心的な課題と原則は、いまなお有効かつ重要である」として、「これらの課題と原則の中心に、適合性(relevance)という概念が根を下ろしている。手短にいえば、適合する結果とは、ユーザにとって興味深く有益な結果のことである」と述べています。
 さらに、「人間が適用するメタデータのタグはアバウトネスを示すことができ、結果的に適合率を向上させる」として、「Googleのページランクアルゴリズムは、ユーザが構築するインバウンド(内向き)リンクが、アバウトネスを示す優れた尺度であると認識している」と述べています。
 第4章「錯綜する世界」では、「われわれは地球的規模のパノプティコンの中で生きることについて、深刻な不安を抱くかもしれない。そして実践的な観点から言えば、アンビエント・ファインダビリティは到達不可能な目標だ」としながらも、「それでもやはり、われわれは確実にアンビエント・ファインダビリティという未開の地に向かって進んでいるようだ。だから今こそシートベルトを締め、スマートフォンの電源を入れて、来るべき乱気流に備えよう」と述べています。
 そして、「レザーケース、回転式ベルトクリップ、着せ替えプレート、カスタム着メロ」などが、「消費者家電をハイテクなファッション的表現手段」である「エブリウェア(everyware)」に変身させると述べ、「ユビキタスコンピューティングの荒野をさまようとき、モバイル機器はわれわれの命綱となり、分かちがたく錯綜した未知の絆となって、人と人とを結びつけるだろう」と述べています。
 第5章「プッシュとプル」では、「現在のアテンションエコノミーの世界で適応するには、プッシュとプルとの新たなバランスが不可欠である」と述べ、「実際にサイトを訪れた多くのユーザにとって、サイトのトップページは案内板に過ぎず」、「サイトにアクセスしたユーザが欲しいのは製品やサポート情報、データ、ドキュメント、ダウンロードファイル」であり、「サイトが伝えようとしているメッセージには無関心なのだ」と述べています。
 また、考案した「ユーザエクスペリエンスのハニカム構造」として、下図の7つの要素を示し、
(1)これはユーザビリティの問題を超えたところまで議論を進めるために非常に役立つツールである。
(2)このハニカム構造のモデルはモジュール方式のデザインアプローチに対応している。
(3)ハニカム構造の7つの切り口はそれぞれが一種の「鏡」としても役立つ。
の3点を述べています。
        ____
       /    \
  ____/ 役に立つ \____
 /    \ Useful  /    \
/ 使いである \____/ 望まれる \
\ Usable  /    \ Desirable /
 \____/ 内容のある \____/
 /    \ Valuable  /    \
/ 探しやすい \____/利用しやすい\
\ Findable /    \ Accessible /
 \____/ 信頼できる \____/
      \ Credible /
       \____/
 

 そして、「ファインダビリティはウェブデザインにおいてもっとも扱いにくい問題の1つ」であり、その理由の一部として、「意味体系と構造につきものの曖昧さ」を挙げています。
 第6章「ソシオセマンティックウェブ」では、社会学者のSusan Leith Starによって提唱された、「複数の集団が共有していながら異なる理解を行なっている道具または観念」を表す「境界オブジェクト(boundary object)」をキー概念に、セマンティックウェブとソーシャルソフトウェアのそれぞれを支持する両コミュニティ間の「過激で激しい議論の応酬」について論じています。
 そして、これら二派のコミュニティが、「似たような問題に直面」していながら、「不幸なことに、過去から教訓を得たりお互いから学びあったりすることができない場合が多い。両者が話し合うことは滅多にないし、いざ話をする段になっても、互いに異なる語彙を用いて会話してしまう」と、その論争が「バベルの塔」を想起させると述べ、「希望的観測としては、メタデータを境界オブジェクトとして用いることで、われわれは相互解釈を育み、共通理解を形成し、真の社会的進歩を促すことができるはず」であると述べています。
 また、「われわれがメタデータと呼ぶ境界オブジェクトに備わっている美徳」として、「どちらか一方だけを選ぶ必要はない」と述べ、「オントロジー、タクソノミー、フォークソノミーは相互排他的なものではない」と指摘しています。
 著者は、「情報のファインダビリティは、人間が知覚する情報の品質に偏りをもたらす」という研究結果を取り上げ、人気度を示すメタデータが、「ユーザがどのデータを見つけるかを左右するだけではなく、そのデータをどれくらい尊重するかにも同様に影響を及ぼす」と述べています。
 第7章「啓示による意思決定」では、「自分の家族やキャリアや健康に関するもっとも重大な決断に限って、もっとも感情に左右されやすい」という「限定的"非"合理性」の存在を認めながらも、「われわれは群集の英知の存在や、『たとえ集団内のほとんどの人間が格別に見識があるわけでもなく合理的でもないとしても、なお集団として賢明な決断にたどり着くことはありうるのだ」という知見を紹介しています。
 著者は、「最終的には、コンピュータは人工頭脳を作り出すことではなく、実在する人間の知性を拡張することに関わっている」と述べ、「人間と機会と区別するのは、情報に秘められている啓示である」点が、著者が「ウェブを愛する理由である」と述べています。
 本書は、普段意識せずに活用している、ウェブ上に集められた知恵や、その活用を可能にしているファインダビリティの重要性を気づかせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 普段何気なく使っている検索エンジンですが、考えてみれば、これだけ世界中に無数にあるウェブサイトの中で、お目当てのサイトにたどり着けるということは、奇跡のような出来事ではないかとも思います。
 七十近い自分の親がネットで調べ物をして、買物をしているのを見ると、インターネットが一部のマニア向けだった時代から、今ではすっかり社会のインフラになってしまったことを実感します。


■ どんな人にオススメ?

・ググればほしい情報が見つかるのがあたり前だと思っている人。


■ 関連しそうな本

 佐々木 俊尚 『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』 2007年11月20日
 嶋田 淑之, 中村 元一 『Google―なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか』 2005年08月18日
 ジョン・バッテル (著), 中谷 和男 (翻訳) 『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』 2006年06月20日
 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
 スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』 2006年04月10日
 ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 栗原 聡, 福田 健介, 佐藤 進也 (翻訳) 『スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス』 2006年03月22日


■ 百夜百マンガ

ペエスケ【ペエスケ 】

 当初設定した主人公よりも、途中から脇役だったはずのキャラに主役を奪われる、ということは、古くはバカボンからDr.スランプからとなりのやまだ君まで定番と言っていいほどまでです。

投稿者 tozaki : 2007年11月26日 22:00

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