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2007年11月28日
水道サービスが止まらないために―水道事業の再構築と官民連携
■ 書籍情報
【水道サービスが止まらないために―水道事業の再構築と官民連携】(#1042)
宮脇 淳 , 眞柄 泰基
価格: ¥3360 (税込)
時事通信社(2007/08)
本書は、重要なインフラである水道事業について、
(1)社会基盤としての施設の老朽化
(2)事業体たる地方自治体、地方公営企業の人的資源の減少
(3)事業主体たる地方自治体、地方公営企業の財政状況の悪化
などの課題を挙げ、「国民の生活や社会活動に不可欠な水道水を供給する水道事業の持続性を確保することを目指して、水道事業の仕組みについて水道法、地方公営企業法、地方財政と官民連携と地方公営企業における政策決定から考え、その上で水道事業の現状を水道事業ガイドライン(社団法人 二本水道協会規格)の業務指標を活用しつつ水道施設や水道経営について明らかにする」ものです。
第1章「水道事業の仕組み」では、平成17年度末時点の水道事業等の数は
・水道法に基づく認可を受けている水道事業・・・9,396(うち簡易水道事業7,794)
であり、「市町村合併や事業の統合により簡易水道事業の数は減少し続けている」と述べています。
また、水道事業が抱える経営課題として、
(1)今後集中的に到来する施設の更新への対応
(2)水需要の減少傾向
(3)事業執行体制のあり方(PFI、アウトソーシングなどの民間的な経営手法の導入)
の3点を挙げた上で、今後の方向性として、
(1)地方公営企業法を最大限に活かし、給与や任用などについて首長の部局との横並びを廃し、民間企業に準拠し効率性を最大限に発揮するなど独立性を高める方向。
(2)長の執行機関の一つとして行政サービス面を重視し、首長の部局との均衡を図りながら、業務の実施については包括的な民間委託を取り入れるなど官民のパートナーシップを強化し民間的経営を取り入れていく方向。
の2点を挙げています。
さらに、水道事業改革の国際的文脈を見ても、「金融のグローバル化の地方財政への影響が水道事業改革の背景として大きなウェートを占めていることがわかる」として、「現在進みつつある地方財政改革のスピードと併せて改革を行っていく必要がある」と述べています。
第2章「水道事業の現状」では、水道資産の特徴として、
・約37兆円に上る巨大な社会資本であること
・資産額の約3分の2が水輸送系の管路施設であり地下に埋設されていて「見えない資産」であること
の2点を挙げ、これらの資産が、「高度経済成長期に集中的に投資されており、施設の寿命に比べて比較的短期間に整備されたものである」と述べています。
また、課題として、
・人口減少、使用量の減少は水道事業の運営財源である水道料金収入の減少に直結する問題であり、今後、水道事業体はますます厳しい経営環境の下で事業運営を担っていく状況にあること。
・水道事業体職員の年齢構成は、45歳以上の職員が過半を占め、次代を担う若年層が薄く、今後経験豊かな職員が短期間に大量退職していくことで技術の継承問題や事業実施能力補填の対応策が喫緊の課題となること。
等の点を挙げた上で、保有資産の長寿命化のための水道施設の資産運用管理手法(アセットマネジメントシステム)の確立が急務であると述べています。
第3章「水道事業における官民連携」では、「PPP(Public Private Partnership)」における「パートナーシップ」は、「官と民とがともに考えともに行動すること」を本質とし、「ともに考え、ともに行動するためには、『官』と『民』が共通の言葉で語り合い、水平的な信頼関係を形成し、ともに役割と責任分担を明確にする枠組みづくりが不可欠となる」と述べています。
そして、公共サービスにおけるPPP事業について重要となる要素として、
(1)目的の明確化
(2)リスクの分散化
(3)構成要素の選択
(4)斬新性と質的向上
の4点を挙げています。
また、水道事業に対しての民間関与・民間化の意義として、「国民の日常生活に支障が生じないように、健全な社会活動を支える水道事業の持続性を確保するため」に、事業体の広域化による規模の拡大だけではなく、「民間との連携により、水道事業のビジネスモデルを転換する手法も考慮されるべきである」と述べています。
第4章「水道事業における監査制度」では、「公営企業たる水道事業においても事務技術を横断する知識が求められている」として、外部監査人に就任する割合の高い公認会計士は、財務会計・監査の専門家であるため、「事務事業の有効性、経済性、効率性までを評価するためには、水道事業の専門的知識を必要とする場合も多い」と指摘し、「補助人制度の活用や関係専門家の意見を聴取する制度の活用が期待される一方、水道事業タイ側でも外部監査人に業務指標(PI)などの情報提供を積極的に行なうなど外部監査人及び地方公共団体双方の努力が求められる」と述べています。
第5章「水道事業の再構築」では、1990年代から急速に広まった途上国向け上下水道の民営化の動きによって世界の水ビジネスは活発になったと述べ、その理由として、世界銀行やIMFが採った「公営の水道事業は非効率であるとして、融資の条件とし民営化を強く要求」下政策があることを挙げています。
また、水道事業の再構築例として、
・東京都多摩地区水道の一元化
・松山市・DBOによる浄水場整備等事業
・福島県三春町における包括委託
・八戸圏域における水道事業の広域化
等の事例を紹介しています。
本書は、今後、下水道事業との統合や民間企業の参入など、激変を迎える水道事業について、現状を伝えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
日本の水道事業は、日本の近代化施策の中では珍しく、自治体がイニシアティブをとって展開されてきました。もともと井戸などの水に恵まれていたために、富裕な都市を中心に事業が展開されてきたからかもしれません。
そのためか、今後必要となる膨大な設備の更新の需要もあまり意識されていないような気がします。いざ更新となると、外資が大幅にシェアを伸ばす可能性も高いのではないでしょうか。
■ どんな人にオススメ?
・蛇口をひねれば水が手に入るのがあたり前だと思う人。
■ 関連しそうな本
高寄 昇三 『近代日本公営水道成立史』 2007年05月15日
赤井 伸郎 『行政組織とガバナンスの経済学―官民分担と統合システムを考える』 2006年11月24日
白川 一郎 『自治体破産―再生の鍵は何か』 2006年10月30日
吉富 有治 『大阪破産』 2006年10月20日
野田 由美子 『民営化の戦略と手法―PFIからPPPへ』 2006年01月30日
大住莊四郎 『ニュ-・パブリック・マネジメント 理念・ビジョン・戦略』 2005年01月23日
■ 百夜百マンガ
すっかりテレビタレントとして顔の売れている人ですが、一般人の1.5倍の速さで年を経た老境の現在にあってもその筆は休まることがありません。
投稿者 tozaki : 2007年11月28日 22:00
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