« 駅名の「謎」―駅名にまつわる不思議な話 | メイン | 公職追放―三大政治パージの研究 »

2007年12月07日

公図の研究

■ 書籍情報

公図の研究   【公図の研究】(#1051)

  藤原 勇喜
  価格: ¥2037 (税込)
  大蔵省印刷局三訂版版 (1997/06)

 本書は、「昭和35年の土地台帳法の廃止により、その法的根拠を失ったが、地図に準ずる図面として依然として重要な機能を営んでいる」、いわゆる「公図」と呼ばれる土地台帳附属地図について、「その基本的な機能、あるいはその限界につき、つぶさに考察を加え、その理解を深めると友に、公図の訂正等を初めとする種々の困難な事例の紹介、その整理、分析を通してその背景にある基本原理を習得することを目的とするものであり、いわば公図の正体とでもいうべきものを浮き彫りにしようとするもの」です。
 第1章「はじめに」では、「公図にまつわる争いは少なくない」理由として、「公図を無条件に信頼することによって思わぬ事態を招くという、いわば公図に対する過度の信頼に起因する場合も決して少なくない」と述べ、「公図というものの性格とか効力などといったものが必ずしもよく知られていないことが一つの原因になっている」と指摘しています。
 第2章「公図とは」では、公図が、「旧土地台帳法施行細則(昭和25年法務府令88号)第2条1項の『登記所には、土地台帳の外に、地図を備える』という規定により、登記所が保管している旧土地台帳法所定の土地台帳附属地図」のことであり、登記簿と台帳の一元化前の土地台帳制度の下において、「土地台帳のほかに土地の区画および地番を明らかにするため」に備えていた旧台帳附属地図を公図と言う、と述べ、さらに、「そのうちの大多数のものは、従来、税務署において租税徴収のための資料として保管していたもの」が、昭和25年の台帳事務の登記所への移管に伴ない、「土地台帳とともに登記所に移されてきたもの」であると述べています。
 この公図は、昭和35年の不動産登記法の一部改正により、旧土地台帳法が廃止されたことで、「その法的根拠を失った」ものの、「なお不動産登記法第17条所定の地図が整備されるまでの暫定的措置として登記所に保管され、土地の異動等に伴なう所要の修正などを加えて一般の閲覧に供されている。すなわち、不動産登記法第17条に規定する地図に準ずる図面として取り扱うこととされている」」ことを解説しています。
 第3章「公図の沿革」では、現在の公図が、「明治6年以降14年までの間になされた地租改正の際に作成された地租改正図(改租図、字切図(あざきりず)、字限図(あざかぎりず)、字図(あざず)などとも略称される)を基礎として作成された字押(じおし)調査図(更正図ともいう)が基本となっているといわれる」と述べ、地租改正図が政府の命により作成されたものであるが、
・短期間に成し遂げられた
・測量技術が未熟であった
・団子絵図(談合図)的なものが多い(一般の野取絵図とも称される)
・一筆の土地の形状が現地と適合せず、あるいは脱落地、重複地などがあり、位置が東西転倒しているものもあったといわれる
・地図作成後異動に係る土地があっても、その書入れをしていない
等の問題があったため、明治18年に「地押調査ノ件」、明治20年に「地図更正ノ件」が定められ、町村に再測させ、「おおむね明治20年から22年の間にかけて地押調査図が作成された」という経緯が解説されています。著者は、この地押調査図について、「当時としては比較的進歩した技術で作成されたもの」であり、「この方法が実行されて作成された地図であるとすれば、ある程度の信頼はおけるものと考えられる」と述べていますが、
・改租図がある程度正確なものである場合には地押調査図を作成しなかった地方もあった。
・山林、原野については補足、目測によることも認められ、見取り図的なものが大半である。
という問題点も指摘しています。
 この地押調査図は、明治22年の土地台帳規則の制定に伴ない、土地台帳附属地図として、正本は税務署に、副本は地元市町村役場に保管され、昭和25年以降は登記所に保管されることになった、という経緯を解説しています。
 著者は、公図の意義について、「境界画定の本質が明治初年に設定された地番と地番の境界を発見あるいは設定することにある(通説)とすれば、公図はその資料として重要な意義を有することになる」と述べています。
 第5章「公図の見方」では、公図が、「測量経験のない村民が、簡易な測量方法によって一筆ごとに地図を作成し、これを基礎として『字限図』すなわち公図を作成し、されに字限図を寄せ集めて『町村図』を作成する仕組みになっていた」ため、「まず大きいものをはかり、それを小さく分けていく」という測量の大原則に逆行するものであり、「現時点で考えれば、この面からも精度は低いものが多いといえる」と述べています。
 また、公図の多くが、「明治の初期又は中期において地租徴収のための資料として作成されたもの」であり、「村民は地租をできるだけ少なくしたいということから、縄のびが行なわれ、現況より小さく作図されているといわれる」と述べ、「そのほとんどのものが現況より小さく作図されているところに特色があるわけである」と述べています。
 第6章「公図の性質」では、土地台帳が、「税金の徴収のための基礎資料ということを中心として作られていたため、田とか畑とかの地目、そして収穫の上で何等級の土地であるか、すなわち上田であるか、中田であるか、下田であるかということ、またそれを金額で表すべき賃貸価格というものが一番の関心事であり、地租の計算の基礎となる地籍と納税者である所有者などの把握が重要視された」ものであり、「各筆の土地がどういう風に隣接しあっているのか、どういう形をしているのかといった点はあまり重要視されなかった」ことを指摘しています。
 第7章「公図の維持・管理」では、現実には、公図と現況が一致しない地域がある理由として、公図作成技術の未熟さのほか、
(1)公図を無視した宅地造成、私設区画整理が行なわれたことによるもの
(2)耕地整理、区画整理が途中で中止されたことによるもの
(3)自作農創設特別措置法による売渡図面に誤りがあったことによるもの
(4)国からの払下げ地図に誤りがあったことによるもの
(5)災害等により現地の境界が不明になったことによるもの
(6)昭和37年の法務省民事局長通達の「なお書」によりを処理を行ったもの
等の要因を挙げています。
 第8章「公図の機能」では、公図が、その沿革的理由から必ずしも精度は高くないが、「単なる私人が作成したものではなく、国が関与して作成したものであり、不動産に関する権利関係を公示する官署である登記所において閲覧の用に供されていることから、不動産登記法17条所定の地図が整備されていない地域においては、各筆の土地の位置、形状、境界線、面積などの概略を明らかにする一応権威ある資料として、現実の不動産取引に際して広く利用されているものということができる」「と述べています。
 第9章「公図と土地の分筆・合筆」では、地番について、「地押調査において、公共用地である道路、井溝、堤、河川のようなものは除き、その他は土地の状況ないし使用状態、すなわち地目が田畑であろうと宅地であろうと、また所有権の如何に関わらず、ある場所に一番とつければ、その隣接地に二番とつけ、また地番の地続きに三番とつけたといわれる」と述べています。
 第11章「公図と地積測量図」では、「地籍」について、「一筆の土地の広さ、すなわち面積のことであり、所在、地番、地目とともに当該土地を特定するための、土地の表示に関する登記事項の一つとされている」と述べ、「隣接所有権者間に境界争いがある場合などにおいては、当該土地の地籍を定めることが出来ない場合もある」と述べています。
 第13章「公図の訂正」では、公図の訂正の種類として、
(1)土地の筆界の誤認
(2)測量の誤り
(3)作図の誤り
の3点を挙げています。
 第14章「公図の役割と今後の課題」では、公図の役割として、
(1)公証力
(2)反証
(3)形成力
の3点を挙げた上で、(1)については、一旦法律上の根拠を喪失したにもかかわらず、「平成5年の不動産登記法の改正によって地図に準ずる図面としての法的位置付けが与えられた」理由として、
(1)公図のほかに資料となるものが少ない。
(2)地域によっては、土地の位置関係はもとより、その形状もほとんどが現地と一致するものも相当多くある。
(3)従来現実の取引において国民の一定の信頼を得、一定の役割を果たした背景として、土地の所有者や境界についての社会的承認関係があるため、ある程度の精度を有する公図で十分機能し得た。
(4)境界確定訴訟においても、一定の役割を果たしている。
の4点を挙げています。
 第15章「地図の整備」では、登記所に備え付けられている地図約550万枚の約半分が、不動産登記法第17条に規定する地図であり、その大部分が、地籍調査による地籍図であると述べ、「今後における地図の整備はこの地籍図を中心に行なわれることになろうが、問題は、この地籍調査事業の進捗率が地域によってかなりの差があり、しかも、都心部もしくはその周辺部の進捗率が低いということである」と述べています。そして、都心部で地籍調査が進まない理由として、
・地権者の協力を得ることが難しいこと
・建築物などの障害物が多く、測量に手間がかかる上、高い地価水準・強い権利意識に対応して高精度の測量が要求されること
などを挙げています。
 第16章「おわりに」では、公図を、「不動産に関する権利変動を公示するための単位を明確にするものであり、分筆・合筆等の場合を除き、それによって土地の位置・筆界が創設されるものではなく、また、それによって所有権の及ぶ範囲が定まるものではない」と述べた上で、「公図に表示された土地の位置関係や形状、広狭等が現地の実際と符合するや否やの判断は公図を利用するものの調査と検討に委ねられるべき性質のものであるということを認識した上で取引に挑むことが期待されるのである」と述べています。
 本書は、不動産取引や用地買収などに携わる人には必読の一冊です。


■ 個人的な視点から

 公図が作られたときには、地租を少なくしたいために「縄のび」を行なって現況よりも小さく作図していたのに、時が下って土地の値段が上がり、特に都市化によって農地が宅地に変わったような地域については、今度はできるだけ大きく書かれていて欲しいように土地所有者の欲求が変わったので公図にまつわる紛争が頻発しているのかもしれません。
 そういえば、学生時代に市街地の土地の境界の基準点の上に棒を立てて測量するバイトをしてました。塀に登ったりしながら、垂直を維持(空気の泡が丸の中に納まるように)しなければならないのが結構大変でした。


■ どんな人にオススメ?

・土地を持っている人。


■ 関連しそうな本

 佐藤 甚次郎 『公図 読図の基礎』 2007年06月18日
 ジョン・ノーブル ウィルフォード (著), 鈴木 主税 (翻訳) 『地図を作った人びと―古代から観測衛星最前線にいたる地図製作の歴史』 『住所と地名の大研究』 2006年07月06日
 今尾 恵介 『地図を楽しむなるほど事典』 2007年02月25日
 マーク モンモニア (著), 渡辺 潤 (翻訳) 『地図は嘘つきである』 2007年01月07日
 高久 嶺之介 『近代日本の地域社会と名望家』 2007年06月15日


■ 百夜百マンガ

東京大学物語【東京大学物語 】

 妄想のスピードはどんなコンピュータもかなわないわけですが、ストーリーの展開は無茶苦茶遅かったので途中で読まなくなってしまいました。

投稿者 tozaki : 2007年12月07日 00:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1575

コメント

コメントしてください




保存しますか?