« 「へんな会社」のつくり方 | メイン | SEのフシギな職場―ダメ上司とダメ部下の陥りがちな罠28ヶ条 »

2007年12月15日

古民家再生ものがたり―これから百年暮らす

■ 書籍情報

古民家再生ものがたり―これから百年暮らす   【古民家再生ものがたり―これから百年暮らす】(#1059)

  降幡 広信
  価格: ¥1785 (税込)
  晶文社(2005/02)

 本書は、「長い時間と風土の中で育まれ」、「残るべくして残った究極のデザイン」である古民家の「再生」を長く手がけてきた著者が語った、クライアントと民家をめぐる物語です。著者は、「古い民家を残したいと、相談に来られる方には、不思議と女性が多い」と語っています。
 著者は、信州・安曇野の三郷村で家業である材木屋と土木建築業を継ぎ、老朽化した民家を取り壊して、新しい住宅を造る中で、「私が造ろうとしている家は、百年以上経ったときに、こんな風格や存在感を持つことができるだろうか」と疑問を持つことが多くなり、一方で、「古い家を残す模様替えや増築には、物を捨てるときの心の傷みは感じられず、むしろ気持ちよく仕事に入れた」と語っています。そして、「初めから民家に対する将来の展望があり、計画があってしたことでは」なく、「生活の近道」として地域とともに生きていった結果、本格的な「古民家再生」に取り組むことになったと語っています。
 第1章「病んだ民家の医者になる」では、松本地方の大庄屋である草間家の「290歳の家」を手がけた著者が、「民家」と「再生」という言葉に出会ったこと、そして、
<再生工事の五ヵ条>
として、
一、民家の持っている特徴を尊重すること。
二、再生する民家に相応しい本格的な工事であること。
三、無駄を省き、費用のかからない方法をとること。
四、新築同様に便利なものになること。
五、長持ちして、いつになっても飽きないものにすること。
の5点を掲げ、これらを、「民家を造る時の基本姿勢であり、最小の経費で最大の効果を狙う民家の精神に一致するものである」と語っています。
 第2章「民家再生が町づくりに」では、大分県臼杵市の味噌・醤油製造の家業を継ぐ若いカップルが、創業の地「浜町通り」にあった、誰も住んでいない白壁土蔵造り総二階の味噌屋の再生の相談に信州まで訪れ、工事の間、多くの方に民家再生を知ってもらうため、「民家再生の集い」を催し、この再生をきっかけに、浜町通りが、「歴史を伝える町」として生き返り、「今や臼杵の観光の中心にもなっている」と語っています。著者は、その後20年の間に、臼杵でさまざまな再生に携わり、述べ150回は通ったと語っています。
 第3章「蔵造りの家は西洋の香り」では、臼杵の「民家再生の集い」を通じて出会った、明治20年ごろに建てられた総二階造りで、「外観は、『社寺風』のところがあったり、『擬洋風』の不思議な雰囲気」を持ち、「日本の伝統技術を持った職人が、見よう見まねで洋館の形を造った」と想像される商家の住宅を取り上げ、「社寺風の入母屋、土蔵風のなまこ壁、洋風の開き窓――。伝統的な蔵造りでありながら、西洋の雰囲気を漂わせ、堂々と自己主張をしている。まさに、時代の生き証人である」と語っています。
 そして、著者が民家再生にあたって必ず行なっていること、として、「最初にその家の仏前にお線香を上げさせていただく」ことについて、「古い家には、現在暮らす人だけでなく、先祖からのつながりがある」、「あいさつするにはお線香を上げるくらいしか方法がないのだが、そうすることで、私の中にも家のイメージが膨らみ、ご家族と親しくなることができる気がしている」と語っています。
 この民家再生では、商売上の取引企業からも、「古いものを大切にするところだから、当然古いお付き合いを大切にするところだろう」という評価を得ることができたと述べています。
 第4章「建築家・清家清さんの導き」では、クライアントが、「新しいものを造る建築家」であったからこそ、「古い建物には畏敬の念を持っておられたのだろう」と語っています。
 そして、民家再生の記事が朝日新聞に紹介された反響から、近所で何軒も再生工事を手がけることになったことを、「爆弾」が落ちて「各所に飛び散った」と言われたと語っています。
 第7章「十年後の民家」では、古い家を新しく造り替えようという話が出たときに、「長い間その家を守ってきた父親は母親は、強く反対することが多いようだ。暮らし慣れた家への愛着、信頼や安心感もあって、そこから離れる淋しさは若い者の想像を超えたものかもしれない」と述べ、「自分の目の黒いうちは、絶対にこの家には手をつけさせぬ……」という話をよく耳にすると語っています。
 第9章「農家の主婦の行動力」では、並々ならぬ家に対する愛情を持つお母さんの気持を考え、「自分には、あの家を壊すことは考えていません。私に遺された大切なものです。しかしこのままでは困るんです。何か良い考えはありませんか」と息子さんから相談されたことを語っています。
 そして、「日本の民家は、明治時代が最高だといわれる。江戸の高度な技を引き継ぎ、家として結実した頃だ。しかも、明治の後半は運輸事情が発達したため、大きな部材を使って豪壮な家を建てる人が多かった」と述べています。
 本書は、古民家に対する愛着やこだわりを通じて、そこに住むさまざまな家族の物語を語った一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者にしても、著者のクライアントにしても、共通するのは、先祖からの大きな遺産を持て余してしまう悩みではないかと思います。そのような遺産など持ち合わせていない身にとっては御苦労様なことですが、本人達にとっては深刻この上ない悩みのようです。


■ どんな人にオススメ?

・古い民家の魅力に惹かれ始めた人。


■ 関連しそうな本

 降幡 広信 『現代の民家再考』
 日本民家再生リサイクル協会 『民家再生の魅力―全国・事例選集』
 アレックス カー 『犬と鬼―知られざる日本の肖像』 2007年10月04日
 アレックス・カー 『美しき日本の残像』
 宇井 洋 (著), 石川 純夫 『古民家再生住宅のすすめ』 2007年10月21日
 降幡 広信 『民家再生の設計手法』


■ 百夜百音

「勝手にシンドバッド」25周年記念BOX【「勝手にシンドバッド」25周年記念BOX】 サザンオールスターズ オリジナル盤発売: 2003

 「いま何時?」って流行ったころに、「いま何時?」「肥満児」、「いま何時過ぎ?」「太りすぎ」というギャグがありました。

投稿者 tozaki : 2007年12月15日 22:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1583

コメント

コメントしてください




保存しますか?