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2008年01月02日
自立と協働によるまちづくり読本―自治「再」発見
■ 書籍情報
【自立と協働によるまちづくり読本―自治「再」発見】(#1077)
大森 弥, 北沢 猛, 辻 琢也, 卯月 盛夫, 小田切 徳美 (著), 地域活性化センター (編集)
価格: ¥2000 (税込)
ぎょうせい(2004/03)
本書は、財団法人地域活性化センターが平成元年に創設した「全国地域リーダー養成塾」の講師が、「地域づくりに関するさまざまな分野の理論及び実践について分かりやすく」解説したものです。
第1章「分権時代の首長像をさぐる」(大森彌)では、「当選した人がふさわしいかどうかは分からない」として、「およそ政治家を志そうとする人物は、一般に、『虚実が入り混じり、不確実と争いの尽きない政治の世界で、気力と体力にあふれ、資金力と演技力を元手にして、ときに恥じもなく外聞などかなぐり捨てて権力を追求する』といったタイプ」であり、「その自己顕示、再審査、厚顔ぶり、行動力において、とても並みの人間には及びがつかない」と述べ、そうした人が「権力の座」につくのであるから、「任期を設けて、不適任なら落選させるのもそのためである」と解説しています。
また、物にたとえるならば、公選首長は、いわば「消耗品」であるのに対し、職員はいわば「備品」といってよいと述べ、首長が、「選挙のときに約束した公約を実現していけば、その存在価値は減っていくから」であると解説しています。
さらに、わが国の市町村が、「医療・公共事業を含め、先進諸国には見られないほど広範囲で、多くの事務事業を処理している」ため、「首長は、その姿勢や意欲や力量によって、こうした事務事業の展開に対して、相当の影響を及ぼすことができることになる」ことを指摘しています。
第2章「少子高齢社会における地域づくりと市町村経営」(辻琢也・四方田亨二)では、21世紀前半において日本が、「『3人に1人が高齢者となる』人類未踏の超高齢社会となり、『2人に1人が高齢者となる』市町村が決して珍しくなくなることは必至である」として、「聴講社会の到来を前提に、そこにおける地域づくりと市町村経営を必要以上に悲観・楽観することなく、冷静に分析しなければならない段階となっていると述べています。
そして、事例研究の対象として、山口県東和町を取り上げ、その理由として、
(1)「高齢化率日本一のまち」でありながら、5千人を超える人口規模を維持していること
(2)インフラの改善に努めてきた条件不利地ということ
(3)伸び悩む一次産業を抱える条件不利地にあって、地域づくりの百貨店といえるほど、役場を中心に官民一体となってさまざまな地域づくりに懸命に尽力してきたこと
の3点を挙げています。
また、2000年度における東和町の住民1人あたりの地方交付税や補助金等の総移転額が約76万円であり、「日本におけるすべての町村が東和町と同じ高齢化水準となった場合、現在の財政優遇状況を維持するため必要な移転額は、『2,680万人×76万円=約20兆円」となり、2000年度の地方交付税総額(約17兆円)を大きく超える水準となる」と指摘しています。
第3章「住民参画で職員・住民を鍛える」(卯月盛夫)では、現在日本の「まちづくり」が、「ある限定した地域に暮らす住民のあらゆる生活を対象に、自治的コミュニティの形成と居住環境の改善を同時に実現しようとする住民と自治体の共同活動」と理解されていると述べています。
また、「市民と自治体の運動の継続的な発展を望みながらも、それをさらに飛躍させるための制度改革」として、
・原理原則の明確化と法的整備――国の課題
・住民参加と住民提案の受け皿整備と支援――市町村の課題
・市民への各種支援と世論形成――中間セクターの課題
の3つに分けて提言しています。
さらに、「従来、『公共』と『行政』は同一の概念であり、行政が提供するサービスの範囲を『公共』ととらえていた」が、「新しい公共」(ニュー・パブリック)として、「公共の概念を行政サービスの範囲に限定せず、市民セクターなどが提供する社会サービスを含めて広くとらえようとする考え方」が登場したと解説しています。
第4章「持続可能な地域をデザインする」(北沢猛)では、「目前に迫る『縮減の時代』を前向きにとらえ、地域の魅力を高め、豊かな生活を造り出していく道筋を明らかにする」ためには、「私たち一人一人が楽しく暮らせる環境」として、自分たちに合った、
(1)ゆたかな自然や町並みという空間
(2)ゆったり過ごせる時間
(3)気の合った仲間などの人と人との交流
のをどう自分達の手に取り戻すかが鍵となる、と述べています。
また、「欧米での持続可能な開発に関する議論」から、
(1)環境保全と成長管理
(2)社会的文脈と共同体再生
(3)高効率経済と地域資源
の3つの原則が見えてくる、と述べています。
佐和に、「コミュニティ・デザインの伝統的な概念を再評価した」、アメリカで提唱された新しい都市・地域づくりの概念であり、実践的な手法である「ニューアーバニズム」(New Urbanism)に関して、その基本原則である「コンパクトシティ」という理念について、
(1)歩いていける範囲内に生活に必要な多様な活動拠点がある。
(2)公共輸送システムを中心に考えられた空間計画である。
(3)多様な用途の複合がコミュニティ空間をつくっている。
の3つの理念と、計画の主要な課題として、
(1)人間的尺度
(2)交通負荷
(3)開発制御
(4)地域特性
(5)市場原理
の5つの分野を挙げています。
第5章「自立した農山漁村地域をつくる」(小田切徳美)では、合えて農山漁村地域を取り上げ、「そこにおける地域づくりを推進する際のポイントとその条件、そして政策課題等」を論じる理由として、
(1)農山漁村地域が、日本の国土に占める割合はもちろん、そこに住む人口のシェアもいまだに少なくない→日本の国土構造は、これだけ都市化が進んでいても、農山村に比較的多くの人口を抱え込んでいることを特徴としている。
(2)こうした地域における活動が、大都市や中小都市を含めた地域づくり一般に対して先発的ないしは典型的に提起する課題も見られる。
の2点を挙げています。
そして、現代の山村の問題状況を、「『人』『土地』『ムラ』の3つの空洞化」と表現し、それぞれについて、
・人の空洞化:人の流出はやや沈静化したものの、人口構成の高齢化が進んだために、新しく生まれる子供の数が少なく、そして高齢者の死亡により地域内人口が、徐々に、しかし確実に縮小していく。
・土地の空洞化:高度経済成長期の激しい社会現象以降も地元に残って、農林地を管理し続けてきた親世代がリタイヤ期に入り、いよいよ農林地の管理主体不足が顕在化した。
・ムラの空洞化:特に壮年人口が小さな集落では高齢化の進行が著しく、これらが「人の空洞化」によるものであることが確認でき、集落の寄合回数が著しく少なくなっている。
と解説しています。
著者は、「農山漁村地域への政策的対応は、『3つの空洞化』への対処療法のみでは完結しない」と述べ、そのような「外来型開発路線」がもたらす問題が各地で顕在化したことで、さまざまな立場からの批判が提起されると指摘しています。
そして、「内発的発展原則の農山漁村地域における具体化のチャレンジ」の例として、鳥取県智頭町における「ゼロ分のイチ運動」を取り上げ、この運動において、それに乗り出す集落(進行協議会)は、
(1)住民自治の柱
(2)地域経営の柱
(3)交流・情報の柱
の「3つの柱」を建てることが求められていると述べています。
本書は、日本の地域づくりの第一人者の講義を(数年遅れとは言え)まとめて体験できるという点で、入り口としては非常にお得な一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の性質は、一連のシリーズものの講座を開催した成果物として、講師陣に講義をベースにしたテキストを書いてもらった、という位置づけのようですが、講師によって、紙になって出版されるものに対する取り組みの仕方に違いがみられて面白く感じます。
パターンとしては、
(1)講義録をベースにして、修正を加えたもの。
(2)講義資料をベースにして、話したこと(話したいこと)を加えて講義(意図)を再現したもの
(3)論文的構成に組みなおしたもの。
の3パターンあるのではないかと思います。下に行くほど著者の手間が増えますが、が、読む人にとって、どれが価値を持つかは人それぞれで、論文や著書がたくさんある講師は生の講義に近いものを読んでみたいという人が多いと思いますし、普段は学術論文がメインで一般書をあまり出していない人であれば、こういう形でエッセンスをまとめてくれるのはありがたいものです。書く側も、自ずとそういったことを意識しているのではないかと思いますが。
■ どんな人にオススメ?
・いろいろな人のまちづくり観をまとめて読んでみたい人。
■ 関連しそうな本
田村 明 『まちづくりの実践』 2005年7月29日
田村 明 『都市ヨコハマをつくる―実践的まちづくり手法』 2005年07月27日
埼玉新聞社 (編集) 『生き生きまちづくり 埼玉県志木市の挑戦』 2005年04月17日
大森 弥 『分権時代の首長と議会―優勝劣敗の代表機関』
北沢 猛, アメリカンアーバンデザイン研究会 『都市のデザインマネジメント―アメリカの都市を再編する新しい公共体』
小田切 徳美 『日本農業の中山間地帯問題』
■ 百夜百マンガ
元アシスタントが独立後大ヒット作を書き、TVアニメ化や映画化をするのに、本人の作品はアニメ化されないというジンクスを持つ作者ですが、さらに師匠も通好みはしますが、TVでアニメ化されそうにありません。
投稿者 tozaki : 2008年01月02日 07:00
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