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2008年01月10日
仕事とセックスのあいだ
■ 書籍情報
【仕事とセックスのあいだ】(#1085)
玄田 有史, 斎藤 珠里
価格: ¥735 (税込)
朝日新聞社出版局(2007/01)
本書は、日本社会のなかに、「セックスレスをもたらす要因を、仕事もしくは働き方の中に探し」たものです。著者は、「本気で少子化問題に取り組むなら、今よりもっと恋人やパートナーとのセックスに積極的になれるような環境が実現しない限り、子どもが増えることはまずないだろう」と述べています。
第1章「セックスレスの実態」では、「既婚就業者のうち、セックスレスの状態にある割合は、45.2%に達している」として、「まさに日本では、2組にほぼ1組がセックスレスになっている」と述べています。
また、確かな要因として、パートナーとの間の「子どもの数」を挙げ、「子どもを1人持ってセックスレスに突入するカップルと、子どもが増えるに連れてますますセックスを楽しむカップルへの二局化傾向が、まさに1人目を分岐点に起こっている」と指摘しています。
第2章「世界一セクシーな国の女性労働者」では、「出産期に当たる25~44歳のフランスの女性労働率」が、2000年時点で79.5%に達していることを挙げ、「今やフランス女性にとっては、仕事か出産か、等という選択はナンセンス。2つの要素は妨げあう関係ではなく、むしろ人生設計の要として手に手を取り合っている」と述べています。
また、「35時間をオーバーして働かせた場合には罰金が科せられる」という、2000年に施行された35時間労働のメリットについて、パリでは、男性の帰宅時間が、
・午後8時以降:26%強
・午後6時ごろ:17%
・午後7時ごろ:17%
・午後5時ごろ:12%程度
と、「7時前に帰宅できる男性を合わせると全体の5割を占めている」のに対し、東京では、「午後8時以降の帰宅」という男性が60%を超えていることを挙げ、「セックスは、男女のコミュニケーションの延長線上にあるもんと考えると、長時間労働で夫婦の会話はゼロに等しく、見るのは相手の寝顔だけなどという日本の夫婦のセックスレスはむしろ無理からぬこと」と指摘しています。
第3章「仕事とセックスレス」では、本書の仮説として、「個人の意思や力を超えて、社会の中にある何か強い力が、個人をセックスから遠ざけている。その何かは、就業者の日常時間の相当部分を占める『労働』そのものにあるのではないだろうか」と述べています。そして、「労働時間の長さだけでなく、働き方の中身そのものに注目しようと考え方を改めて検証を続けた結果、いくつかの思いがけない事実に出会うことになった」としています。
まず、「妻の就業形態別に見たセックスレスの割合」について、「女性が働くことをやめて家庭に専念するべきだという意見を持つ人もいる」が、「女性の働く形態によってセックスレスへのなりやすさに違いがあるといった傾向は、一切確認できなかった」だけではなく、「妻もほどほどに働いたほうが、セックスレスになりにくいことを示唆する、別の興味深い関係」として、「女性にたずねたパートナーとの収入者とセックスレスの関係」を挙げ、「夫婦で収入差がかなり大きいことも、セックスレスになりやすくする背景となっている」と述べ、「女性が専業主婦であるよりも、ほどほど働いて収入を得ているほうが、夫に収入を稼がなければといった過剰なプレッシャーをかけずにすむ。生活や時間に余裕が生まれる結果としてセックスレスになりにくいのかもしれない」と述べています。
また、「仕事上の挫折経験が、セックスレスになる確率に与える純粋な影響」として、「20代から50代の女性全般と、さらには20代、30台といった比較的若い年齢の男性について、仕事上での挫折経験を持っている人ほど、セックスレスになりやすくなっている」と指摘しています。
さらに、職場の雰囲気とセックスレスの関係について、「職場の雰囲気が悪く、働くのがつまらないと思えば、仕事以外の別の事柄に喜びを求めるのではないかと、考えたくもなる」が、「事実はそれとは正反対」で、「職場が辛い人は、セックスにも消極的になっている」ことを指摘し、「日常的な高揚感の有無は、仕事や職場のアリ様とも深く関わっているのかもしれない」と述べています。
配偶者以外とのセックス、つまり「不倫」については、最初の特徴として、「30代で不倫をしている場合が9.2%と最も高くなっている」という年齢との関係を挙げた上で、さらに顕著なものとして、「所得との関係」を挙げ、「既婚者のうち、年収の高い人ほど、パートナー以外とセックスをしていることが多い」ことを指摘し、「不倫は文化というよりは、むしろ経済状況によって左右されているというほうが正しいのかもしれない」と述べています。そして、「1週間の労働時間が長い人ほど、不倫をしている人は多い。特に週労働時間が60時間を越えると、不倫中の割合は急増している」ことを指摘し、「そんなに労働時間が長く多忙で、いつ不倫をするのだろうかという気がしないでもない」が、「働く時間が長く、帰宅時間が遅いのが隠れ蓑となって、不倫を続けているということもあるのではないだろうか」と述べています。
第4章「ヒト・フェロモンと職場の関係」では、「職場に気になる異性がいれば、仕事にやる気がでますか」という項目について、「やる気がでる」と答えた割合が高かったのは女性、なかでも20代と40代が突出していたことを挙げ、「女性の場合は、職場で異性を意識すると『認められたい』『役に立ちたい』という感情が働くこと」が多く、「『認めて欲しい』と思う男性の年齢は自分より年上であることが重要」であるため、「社会に入ったばかりの20代女性は、まわりがすべて対象者」であるが、30代は出産や子育てと重なり、「育児と仕事の両立で手一杯。異性どころではない」こと、そして、40代になると子育てが一段落するが、50代の女性の場合は、「認められたい」と思える対象者である年上男性そのものが激減していることなどを解説しています。
一方、男性30代と男性20代では、「気になる異性がいると集中力を欠く」という割合が多いことについて、「若い男性にとっては、気になる異性は平常心を脅かす危険な存在ともいえる」と述べています。
第5章「セックスレスの再検証」では、「同じ事実が複数のデータによって再現できること」が「研究の掟」であるとして、本書が主に用いている『アエラ』のインターネットを通じて行われたモニター調査のほかに、「日本版General Social Surveys (JGSS)」による検証の再現を行なっています。
第6章「負け犬とワーク・ライフ・バランス」では、エッセイ『負け犬の遠吠え』で「負け犬」と定義された「未婚、子ナシ、30代以上の女性」について取り上げています。
そして、『一般に男性の方が仕事人間になりやすいので、失業や左遷といった仕事上の精神的ショックが男性の性機能を低下させるのではないかと想像できるが、『アエラ』の調査結果ではむしろ女性の方が心理的な影響を受けやすく、セックスに対しても消極的になる傾向が強い」ことを指摘しています。
第7章「変わりゆく職場で」では、本書の分析からわかったこととして、「セックスレスの問題は、すべてが個人の自由な選択の結果だとは言い切れないということ」を挙げ、「どうやら私たちの働き方、そして職場や仕事のあり方というものが、私たちの根っこの深い部分で、個人の性生活に無意識のうちに大きな影響を及ぼしている。失業など仕事をする上での過去の苦しかった体験があったり、日常的な職場の雰囲気に不満を感じていたり、経済的に苦しかったりする個人ほど、セックスレスになる可能性が高くなっていることが、複数の統計調査から明らかになった」と述べています。
本書は、仕事という社会生活と、セックスという私生活とが、完全に分けられるものではなく、個人の深いところで強く結びついたものであることを示してくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
少子化対策というと、いかにして育児をしやすい環境を創るか、というところに力点が置かれますが、その前段である、いかに子どもを作りやすい環境を創るか、というところも重要であることを本書は示唆しています。
一方で、そういうプライベートなところに政府が踏み込んでくることに抵抗のある人が多いのも確かではないかと思います。
■ どんな人にオススメ?
・仕事とプライベートはまったく別だ、と思っている人。
■ 関連しそうな本
玄田 有史 『働く過剰 大人のための若者読本』 2006年06月26日
小室 淑恵 『新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―』 2007年08月22日
大沢 真知子 『ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方』 2006年07月24日
佐藤 博樹, 佐藤 厚 (編集) 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
橘木 俊詔 『現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策』 2006年08月18日
パク ジョアン・スックチャ 『会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案』 2006年10月13日
■ 百夜百マンガ
自分の世代では「海賊」といえば「宇宙海賊」だったり「宝島」だったりとしたのですが、今の子どもたちにとっては海賊といえばこの作品なんでしょうか。
投稿者 tozaki : 2008年01月10日 20:00
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