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2008年01月13日

組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか

■ 書籍情報

組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか   【組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか】(#1088)

  樋口 晴彦
  価格: ¥777 (税込)
  祥伝社(2006/06)

 本書は、近年着実に普及しつつある「失敗学」の中で、「文科系の世界」、特に「マネジメントの分野に着目して、組織行動に関係する様々な失敗事例に分析を加え、リスク管理上の教訓事項を抽出したもの」です。
 第1章「人はなぜ、ミスを犯すのか」では、チェルノブイリ原発事故の例を挙げ、「もともと実験計画そのものが安全規則に違反していた上に、危険な捜査をするようにオペレータを追い込んだ周囲の状況が、この自己の重要な背景要因となっている」として、まさしく「職場環境によって引き起こされたヒューマン・エラー」であると述べています。
 そして、三菱重工の豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」火災事故について、「新市場開拓のために重ねた無理が現場レベルに蓄積され、最終的に爆発した」物であると述べ、「『組織の三菱』といわれる三菱グループの代表的企業でさえも、現場管理に失敗してしまったことを、他山の石として重く受け止めるべきだ」と述べています。
 また、西郷隆盛が、「茫洋」「至誠」というイメージで語られているが、実際には算術に明るく、幕末には幕府側を挑発するためのテロ行為をやらせていることを指摘し、「西郷を論じる方々のほとんどは、日本人が一般的に好んでいるリーダー像に西郷を無理やり当て嵌めようとしているだけだ」と述べています。
 第2章「危機意識の不在」では、「災害は忘れた頃にやってくる」という寺田寅彦の警句が、「災害」以外にも「自己」や「失敗」にも置き換えが可能であると述べ、「リスク・マネジャーにとっては、危機感を着実に麻痺させていく『忘却』と戦うことが、最初の、そして永遠の課題である」と述べています。」
 そして、平成11年のJOC臨界事故の例を挙げ、事故の起きた作業が、
(1)質量制限の劣化
(2)安全審査を受けていない製造工程の出現
(3)形状制限の劣化
(4)形状制限のさらなる劣化
(5)質量制限の崩壊
(6)形状制限の崩壊
の6回にわたる違法な工程変更によって、本来の作業手順から大きく逸脱したものであるが、「注目すべき点は、第2を除く他の工程変更は、すべて『作業の効率化』のために行なわれた業務改善活動であったこと」を指摘し、「安全の軽視は『原因』ではなく、あくまで業務改善を追及した『結果』にすぎない」と述べています。
 著者は、この他、関西電力美浜原発事故などの例を挙げ、「アウトソーシングしたからといって、そのリスクまで一緒に外注先に押し付けることはできない」という「当然の事実」が認識されているかどうかが問題であると述べています。
 第3章「行き過ぎた効率化」では、日本では、「縁の下の力持ち」的な業務が軽視されがちであることを、旧日本陸軍で「輜重輸卒(しちょうゆそつ)が兵隊ならば、蝶々蜻蛉(とんぼ)も鳥のうち」と補給部隊を嘲っていた例を挙げて解説し、「現代の日本企業において、非常に重要な職務であるにもかかわらず、この『輜重輸卒』なみに扱われているのが安全管理部門である」と述べています。
 また、日本企業の成果主義の導入について、「成果主義の導入が性急に進められた結果、組織内で深刻な適合不全が発生しているケースがあまりにも多い」として、「目標押し付け症」や「目標下方設定症」等の症状を紹介し、これに関連したエピソードとして、次々と世界記録を更新していた某国の英雄的重量挙げ選手が、「実力をわざと小出しにして、世界記録を少しずつ更新することにより、様々な表彰や恩典を長期にわたって獲得していた」というエピソードを紹介しています。
 さらに、平成6年4月の中華航空機墜落事故の例を挙げて、「自動化をどんどん進めていった場合でも、人間と機械との接点は必ず残る。このインターフェイスの部分が、システムという鎖の中で一番脆弱なリングになるのだ」と述べています。
 第4章「緊急時への備え」では、シミュレーションについて、「緊急事態への対応能力を向上させ、危機管理マニュアルの細部を検討する絶好の機会である」ので、「具体性を欠いたシミュレーションなどは、関係者の単なる自己満足にすぎない」と述べています。そして、セレモニーに堕してしまいがちな形式的なシミュレーション観を改め、「シミュレーションの中での失敗、すれ違い、誤謬などなどのトラブルは、危機管理体制を充実するための契機であり、教訓」であり、「失敗が起きないシミュレーションは悪いシミュレーション」と考えるべきだと述べています。
 また、戦前の日本陸軍や海軍の情報の扱いの失敗の例を挙げ、「情報の不足はあくまでも『結果』に過ぎず、その『原因』のうちの相当な部分は、情報を求める側に在る」と述べています。
 第5章「リスク管理の要諦」では、コンコルド計画が、開発の中途段階の試算で、「今すぐ開発を中止して違約金を支払う方が、このまま開発を続けた場合よりも損失額が軽微で済むという結論が出た」にもかかわらずストップがかけられなかった理由として、「もったいない」の心理が根底に見え隠れすると述べ、この問題こそ、「すでに費消されてしまって今さら回収する方途がない資金」である「サンク・コスト」の問題であると指摘し、「元々人間には、自分の行なったことに『意味』を付与したがるという特性がある」と述べています。
 また、60年前の開発以来、いまだに100カ国以上の軍隊や警察で使用され、累計製造数は約1億挺と推定されるAK47突撃銃(カラシニコフ銃)が重宝される理由として、「構造が単純である上に、銃のいたるところに余分な隙間があること」、つまり、「シンプルでアバウトな造りだからこそ、信頼性が高い」と述べ、組織やシステムについても、「組織が大きくなればなるほど、そしてシステムが複雑になればなるほど、瑣末な障害が全体に対して重大な悪影響を及ぼす可能性が高くなる」と述べています。
 さらに、「組織内で共有されている価値観・信念・慣習など、構成員の行動に影響を与える様々な様相を総括」した「組織文化」について、「オフィシャル名規則やマニュアルと同様に、あるいはそれ以上に、組織の構成員の活動を事実上規律する働きがある」と述べ、一方で、「自然発生的な組織文化はどうしてもルーズなものになりがち」であり、「そのような組織文化は、本来の組織目的と無縁であるだけでなく、組織さらには社会のルールにも背反し、むしろ組織にとって有害となる可能性もある」として、雪印事件や東京女子医大病院手術ミス隠蔽事件等の例を解説しています。
 本書は、ベストセラーになっただけに、読みやすく、うなずける内容が詰まった一冊です。


■ 個人的な視点から

 「失敗学」も面白いですが、技術的な失敗の話よりも、本書のような組織の失敗の話のほうが自分の身にぐっと来ます。


■ どんな人にオススメ?

・組織の中で「まずい!」と思った経験のある人。


■ 関連しそうな本

 樋口 晴彦 『「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく』
 堀井 秀之 『安全安心のための社会技術』 2007年07月29日
 岡本 浩一, 今野 裕之 『組織健全化のための社会心理学―違反・事故・不祥事を防ぐ社会技術』 2007年01月24日
 ジェームズ R・チャイルズ (著), 高橋 健次 (翻訳) 『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』
 畑村 洋太郎 『失敗学のすすめ』
 畑村 洋太郎 『失敗学実践講義 だから失敗は繰り返される』


■ 百夜百音

ポテン・ヒッツ~シングル・コレクション【ポテン・ヒッツ~シングル・コレクション】 スチャダラパー オリジナル盤発売: 1994

 「ゲームボーイ」というのも商品名でしたが、この当時は、まだスチャダラのメンバーも「ボーイズ」を名乗ってしまうことが社会的に許されていたのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2008年01月13日 21:00

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