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2008年01月14日

「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく

■ 書籍情報

「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく   【「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく】(#1089)

  樋口 晴彦
  価格: ¥777 (税込)
  祥伝社(2007/07)

 本書は、同じ著者の『組織行動の「まずい!!」学』の続編であり、前著出版後にも目立った、「重要な情報を隠蔽したり、意図的にミスリードしたりすることで、事件をことさらに矮小化し、自らの責任を回避しようとする悪質なケース」について、「この風潮に対して警鐘を鳴らすために、そのような事例をなるべく選んで取り上げ、タイトルにも『組織はこうしてウソをつく』という挑発的な文言を用いることにした」と述べています。
 第1章「リスクから目を背ける人々」では、パロマ湯沸器事故を取り上げ、パロマ社の対策の特徴として、
(1)修理業者向けの措置が多いこと
(2)LPガス事業者への対策は実施されているのに、都市ガス事業者に対する取組みが見当たらないこと
(3)事故が発覚するたびに泥縄式に対応した上に、それほど出費を必要としない要請活動が中心だったこと
の3点を挙げています。
 また、パロマ社の記者会見が、「頑なに自社の責任を否定」するなど、「拙劣」であった理由として、同社の「国際性」を挙げ、「売り上げの約8割が米国など海外で達成されている」ため、「訴訟社会の米国で商売を行なっていくためには、自社の誤りを簡単に認めてはならない」と、今回のケースも「米国流の発想で対応してしまった」ことと、連結売上高2400億円、社員数約1万人という大企業にもかかわらず、典型的な同族会社であるという「閉鎖性」を指摘しています。
 そして、パロマや不二家など、「高度成長期に勃興した同族会社において、危機管理の失敗が相次いでいる」ことについて、「その多くが三代目経営者の元で発生している」という「三代目の危機」の発生メカニズムを解説しています。
 さらに「発掘!あるある大辞典II」の番組捏造事件について、法律上の制作者である関西テレビが、東京所在の日本テレワークに対して「全面的に依存せざるを得なく」なっており、「完全パッケージ方式」をとり、「どの制作会社に再委託するか、予算をどのように配分するかといった番組管理の基本的な部分まで、日本テレワーク側が握ることになった」と述べています。
 そして、「あるあるII」の製作現場が、
・貴族階級:電波行政によって手厚く既得権益を保護されたテレビ局
・ブルジョワ階級:テレビ局と密接な関係を保持しつつ実務をコントロールする元請け制作会社
・貧民階級:厳しく搾取される孫受け制作会社
という三層ピラミッド型の「一種の階層社会を形成」していたと指摘しています。
 第2章「虚構の輪舞曲」では、著者が、「あれほどの数の失敗事例をどうやって研究したのですか」と質問されることについて、「各種記事や書籍、調査報告書など、公開されている情報をひたすら集めて分析した」と述べています。
 また、太平洋戦争末期の沖縄戦において、住民の集団自決事件が日本軍の「集団自決命令」によって行なわれたと広く紹介されていることについて、「この『集団自決命令』なるものは存在しなかった」と述べ、昭和27年の戦傷病者戦没者遺族等援護法が一般住民を対象外としており、「一般住民であっても群命令で行動していた者については、『戦闘参加者』として軍属に準ずる扱い」としていたため、関係者が、「困窮した住民たちを救うための方便として、『集団自決命令』など存在しないことを知りながら、それを利用した」と解説し、その裏づけとして、琉球政府で援護業務に従事していた関係者の証言を紹介し、沖縄県の資料編集所も、「昭和61年の時点で『集団自決命令』が虚構であったことを認めるに至った」と述べています。
 第3章「ジョーカーはそこにある」では、平成18年に社会保険庁で国民年金保険料に関する大規模な不祥事が発覚したことについて、「あんな役所はさっさと潰して、民間化したほうがいいですよ」と話しかけられることが多いことについて、「今回の不祥事が起きたのは、社会保険庁の『民間化』が進んだせいですよ」と答えていると述べ、「遅れず、休まず、働かず」が代名詞であるはずの公務員が違法行為を犯してまで実績向上に血道を上げた理由として、「社会保険庁に成果主義を導入したこと」が関係していると述べ、新しい人事評価制度の下で、「最も重視されていた指標が、国民年金保険料の納付率だった」と解説しています。
 また、「外国人留学生は犯罪にはしりやすい」というイメージが流布していることについて、「外国人留学生よりも、もっと恐ろしい連中が街灯を闊歩している」として、千人当たりの検挙人員で、留学生の倍にあたる16.85人に達し、「罪種別に見ても、少年は、ほとんどのカテゴリーで留学生と同レベル、あるいは大きく上回っている」と述べ、「数字だけを見れば、少年のほうが外国人留学生よりもよほど質が悪い。これを逆に言えば、一般にイメージされているほど、留学生の犯罪がひどいわけではない」と解説しています。
 さらに、不法滞在の留学生が急増した理由として、「留学生受入れ10万人計画」の政府目標をクリアするために、入国管理局が在留資格を簡単に与えてしまい、大学の側も、「経営困難に陥った一部の地方大学が、欠員を穴埋めする目的で留学生を大量に受け入れた」として、酒田短期大学のケースを紹介しています。
 第4章「リスクと共生するために」では、みずほ銀行のシステム障害のケースを取り上げ、首脳陣にはCIO(Chief Information Officer)の必要性すら認識されておらず、マスコミの指摘で急遽任命した役員にはシステム開発の経験もなく、開業直前の時点で一部のプログラムの完成度が低いことが明白であり、この時点では、システム切り替えを延期するという「最後の手段」が残されていたにもかかわらず、第一勧業銀行出身のCIOが「最後の追い込みで何とかなるという希望的観測にすがり、そのままゴーサインを出してしまった」ため、1ヶ月以上もシステム障害の影響が続き、金銭換算だけでも18億円、それ以上に「信用」というグループ全体の財産を失ったと述べています。
 そして、システム開発において、失敗する担当者の典型例として、
(1)値切り屋型:開発費をとにかく安くしろと圧力をかける。
(2)お任せ型:上流工程での打ち合わせの際に、ITのことは分からないからと相手の言いなりになる。
(3)殿様型:開発業者に高圧的な態度を取る。
(4)優柔不断型:方針を明確に決めることができない
の4つのタイプを挙げています。
 また、バブル期以降、「若い人にやかましく指導する人が少なくなった」と述べ、このような「やかまし屋」を、「十分な技能や経験を蓄積したベテランであり、その職人気質な性格から不適切な仕事ぶりを看過することができず、自分の部下は勿論のこと、同僚、さらに上司に対しても、その問題点を厳しく指摘し、解決策を教示せずにはいられない人物」と定義し、トヨタ方式の本質を、「単に現場の問題点を解決するだけでなく、その過程を通じて問題点の発見を常に念頭に置く人材を育てることにある」として、「まさに、組織全体が『やかまし屋』となった」と述べています。
 本書は、多かれ少なかれ、誰しも思い当たる組織の失敗について、豊富な事例を元に解説してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の中で、三代目危機説として、「売家と唐様で書く三代目」を地で行っているような企業の例が紹介されていますが、単なる同族経営の問題だけではなく、その企業の主力製品なりビジネスの寿命という面も大きいのではないかと思いました。それを克服できないところに三代目の問題があるといえばそれまでですが。


■ どんな人にオススメ?

・組織が腐る実例を目にしたい人。


■ 関連しそうな本

 樋口 晴彦 『組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか』 2008年01月13日
 畑村 洋太郎 『失敗学のすすめ』
 中尾 政之 『失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する』
 畑村 洋太郎 『組織を強くする技術の伝え方』
 畑村 洋太郎 『失敗を生かす仕事術』
 岡本 浩一, 今野 裕之 『組織健全化のための社会心理学―違反・事故・不祥事を防ぐ社会技術』 2007年01月24日


■ 百夜百音

ジンギスカン【ジンギスカン】 ジンギスカン オリジナル盤発売: 1979

 モスクワオリンピックといえば、当時の子どもたちにとっては「こぐまのミーシャ」の印象が残っていますが、そういえば日本は参加しなかったんですよね。

『もすかう』もすかう

投稿者 tozaki : 2008年01月14日 06:00

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